契約
やってきましたっ、山犬の山!!
はい、こんにちは~、奏です。今、私はある村の山に来ています。理由は前話を参照です。
そして、今私の目の前に問題の山犬が居ます。
凄く、……大きいです。
何ですかあれ!?大きすぎです!!普通に私より大きいですよ!!物凄くこっち見てるんですけど!?どうしましょうか……。
「あの~」
「………」
よくよく考えてみたらどうやって解決したらいいんでしょう!?相手は動物ですし言葉は通じませんし。………魂で話せば通じますかね?
「………何をしにきた、人の子よ」
「話せるんですか!?」
「当然、我は土地神ぞ」
「土地神?土地神ってあの…この土地の神様ですか?」
「いや、我はこの地より更に東方より来た」
「其れじゃあこの土地の神様じゃないんですか?」
「然り」
「……土地神って長い年月を掛けて大地を守護するものですよね?何故他の土地神様が?」
「……我が守護していた地は人間によって滅ぼされたからだ」
「!!」
「我が守護していた地に人間が攻め入り、そして死んだ」
「……でもおかしくないですか?生まれた土地が死滅したらその土地神も一緒に消滅するんじゃ……」
「我もおかしいとは感じていた。だが実際に我は顕現し続けている」
「そうだったのですか……。ならば何故この地にいるのですか?」
―……この地の土地神も死にかけているからだ―
「なっ!?」
「同じ土地神として解る。既にかなり弱っている。故に我が手を貸しているのだ」
「何故ですか!?何故死にかけているんですか!?」
「其れもまた人の責、だ」
「……あの村の人達のですか?」
「然り」
「でも何故ですか?村の人は山菜や果実を採っているだけじゃないのですか?」
「其れだけに留まらず、森を切裂き、山を砕き続けている」
「そんな事を……」
「通常それなら直ぐには弱りはしない、長い年月に渡りこの地を破壊し続けた結果だ」
「………」
「我もそろそろ時間だな」
「時間?……!?、透けて」
「一月、よく持ったものだ」
「そんな!!」
「最後にこの土地の同胞を救えなかったのが心残りであるがな」
「………、何か方法は無いのですか?」
「無いな。我は既に頼代を失っている、消え去るより他無い」
「そんなのって……」
―カ……さん―
―カ…デさん―
―カナデさん―
―奏さん!!!―
「!?」
―奏さん!!聞こえますか!?―
「アリアちゃん!?」
「?」
「アリアちゃん、なんで!?」
―奏さんが困っているのに、私が何もしないわけ無いじゃないですか!!今奏さんの魂に直接話しかけているんです!!それでは話を戻します。奏さんはその土地神を助けたいですか?―
「勿論!!って、助ける方法があるの!?」
―はい、その土地神はかなり高位に位置しているんです。その土地神を救うには主従の契約を交わすしかないんです―
「主従の…契約」
―はいです。その契約を交わす為に対価が必要なんです―
「その対価って?」
―血です―
「血…ですか?」
―血は魂の源。ですから魂の契約でもあります―
「よし!しましょう、契約!!」
―ちょっ、早い!!最後まで話を聞いてください!!―
「だって私の血で助けられるんでしょ?ならしましょう!!」
―其れはそうなんですけど、まだ問題があるんですよ―
「問題?」
―さっきも言いましたが、この土地神は高位に位置しているんです、その神を従僕にしようとしているんですよ?―
「土地神さん!!私と従僕の契約を交わしてください!!」
―ちょ――っ!!、何してるんですか!?―
「御願い?」
「断る」
「何でですか!?」
―食い下がらないでください!!―
「だって!!」
「何故、人の子が従僕の契約の事を知っているかは知らんが我が契約せねばならぬのだ」
「そうしないと消えちゃうんですよ!?」
「我はその事を受け入れている。今更助かろうとも思わん」
「そんなの駄目です!!!!」
―奏さん……―
「………」
「そんなの……駄目ですよ……、死を受け入れるなんて」
「……何故だ?何故、人でもなく、ましてや今日出会ったばかりの我にそんなにも拘る?何故涙を流す?」
「だって……貴方がそんな事に成ってしまったのは私達……人間のせいじゃないですか」
―………―
「………」
「それなのに貴方が死ななければならないなんてそんなのおかしいです!!そんな事、私は認めません!!もう一度言います、私と従僕の契約を交わしてください!!これは只の私の我が儘です!!貴方が求めている結果ではないでしょう、人間の自分勝手な理由で故郷を失い、死にかけて、人間の我が儘で望んでもいない契約を取り付けられているんですから、其れでもっ!!私は貴方を助けます!!!!」
「……面白い」
「?」
「土地神である我にそんな事をぬかせるとはの……、良かろう、我が命!!貴様にくれてやる、好きにするといい」
「!、…ありがとう御座います!!アリアちゃん!!」
―はっ、はいです!!―
「どうすればいいのか教えて!!」
「先程から何と話しているか知らぬが、契約なら我が順序を教えてやる」
―……これなら大丈夫そうですね、私もそろそろ限界みたいです―
「ありがとうね、アリアちゃん」
―それと奏さん―
「なに?アリアちゃん」
―すいません、此からは奏さんがピンチでも手助けしてあげられそうに無いのです―
「アリアちゃんが謝る事無いわ、本当に感謝してる、ありがとう、アリアちゃん」
―はいです!!―
「済んだか?」
「うん、其れじゃあ始めてください!!」
「今から言う祝詞を復唱しろ、その後に貴様の血を我に飲ませろ」
「分かりました」
―我は神を司る者なり―
―我は神を従えるものなり―
―我に永久の服従の誓いを立てよ―
―我名、春風 奏の名の下に!!―
契約を交わした次の瞬間、眩い光が周りを包み込み私は意識を手放した。次に意識を取り戻し目に映ったものはあの土地神である山犬の顔だった。
「ようやく気がついたか」
「あれ?私どうして……!土地神さん!!契約はどうなりましたか!?」
「案ずるな、成功した」
「本当ですか、良かった……、あれ?土地神さん、その顔の紋様どうしたんですか?」
「契約の証だ、お前の胸の中心、心の臓の上にもでているはずだぞ?」
「本当だ……、何だか格好いいかも」
「……本当に貴様は変わっているな此処まで変わった人の子は初めて見る」
「悪かったですねっ、変わってて!!後、私は奏です!!」
「どうでも佳かろう、その様なこと」
「どうでも佳くないです、か・な・で!!」
「分かった分かった、奏、此でよいか?」
「はい!後、土地神さんのことはなんて呼べばいいんでしょう?よくよく考えたら土地神さんのお名前聞きそびれていました」
「我に名など無い、好きに呼べ」
「私が名前つけて良いですか?」
「好きにしろ」
「うーん……、其れじゃあ、……白風、白風ってどうかな?白風のシロちゃん!!」
「……白風か」
「うん、駄目…かな」
「其れで構わん」
「やった!!此から宜しくね、シロちゃん」
「ああ」
こうして、この世界で従撲ができました。