覚悟の代償
「聞けい賊共よ!我が名は趙子龍!これより先へ生きたければ我が屍を越えて行くがいい!!」
150もの賊に向かって声を張り上げる1人の少女が居た。
赤い槍を片手に堂々と仁王立ちしている姿には全く恐れがなかった。
「なんだあいつは、たった一人で俺達とやり合う気か?」
「お主等など私一人で充分!」
「言ってくれるじゃねーか。おい、野郎共、あのシケた村潰す前に遊んでやろーぜ!!」
『オォォォ―――!!』
「……頼むぞ、稟、風」
―1時間前―
「本当に一人で行くのですか、星?」
「無論、そもそも私が行かなければ稟達が考えた策が成り立たんでは無いか」
「それはそうなのですが……」
「心配するな、私はそう簡単には死なんよ。そんな事よりも整っているか?」
「ええ、万事抜かりはありません。それより風と奏殿が見あたらないんですが」
「あの二人なら問題ないだろうよ」
「呼びましたか~?」
『!?』
「風っ、何時の間に!?」
「今ついさっきですよ~」
「風、奏殿はどうだった?」
「問題ないですよ、奏お姉さんは強いですから」
「?」
「なら大丈夫か……」
「何の話をしてるんですか?そろそろ行きますよ」
(奏殿、この戦いが終わったら、宴会です。天の話を肴に飲み明かして貰いますからな)
―現在―
星視点
「はぁ…はぁ…」
どれだけの時間が過ぎただろう。村を守るために賊と戦い続けていた。
「はぁぁぁ―――!!」
ザシュ
「ぐぁっ!!」
槍を突き刺し、引き抜き、また新たな賊に突き刺しの繰り返し。
一体何人我が槍で殺したのかもう覚えていない。気を抜いたら槍が私の手から滑り落ちそうだ。
手には力が入らなくなり、足は震える。
後少し、後少しで稟達が考えた策を使うことが出来る。後少しばかりもってくれ、私の体よ!!
ザクッ
「ぐっ!」
突然足に焼けるような、鋭い痛みが走る。
足下に目をやると
「へへ、ざまあ…見やが…れ」
まだ息のあった賊が短剣で私の右足に突き刺していた。
執念だけでやったのか、その後直ぐに賊は息絶えた。
まずい、この状況で右足が使え無いとは……!
――――――
――――
――
「はぁ…はぁ…はぁ…」
「なんつー女だよ、俺達相手によもまあ此処までく持った、と言うところか」
(私も此処までなのか…)
ついに膝を着いてしまった。
槍を杖代わりにしても立ち上がることが出来ない。
甘く見ていたつもりはない。
稟や風が考えた策を使えば勝てると思ったが、力及ばずか…。済みません、奏殿。偉そうなことを言っておきながら…
「じゃあな、姉―ちゃん」
私は次くるだろう衝撃に備えて目を閉じた。
ザシュッ
「ぐがっ!!」
バタッ
何が起きたのだろう、いつまでたっても衝撃が来ない。
私は恐る恐るを開けてみ
た。
初に見えたのは日の光に美しく映える白銀の長い髪だった。
「奏殿!?」
私の前にいたのは身の丈を軽く超える大鎌を抱えた奏殿の姿だった。
「………」
「なんで……こんな所に…」
「星ちゃんを護るため」
「は?」
「私…決めたんだ……、私は私の護りたいものを護れるだけ護る」
「………」
「私にはまだ星ちゃんみたいな覚悟なんて無いけど、それでも『友達』を見殺しになんてしたくない!!」
「!!」
「私の闘いは護る闘い、だから私は星ちゃんを護る!!」
なんとも、やはり奏殿は面白い。先程まで疲労が溜まっていた身体が今は嘘のように軽い。これも天の御遣いの力ということか……
「フフッ、……奏殿だけに美味しいところを持って行かれるのは、私としても面白くない、……一緒に行きましょうぞ、我が主、春風 奏様!!」
「うん!!、……って、主!?なんで!?」
「行きますよ!!」
「話を聞いて――!!」
奏殿が何か叫んでいるが今は無視だ!!必ずや奏殿も主従の誓いをしてもらわねば!!
星視点終
私は気がついたら走り出していた。
星ちゃんが一人で人の黄巾党と戦っていると風ちゃんと稟ちゃんから聞いて一目散に走り出した。
「星ちゃん!!」
ようやく辿り着いて星ちゃんを探していると、黄巾党の人が星ちゃんにとどめを刺そうとしているのが見えた。
「させない!!『夢幻!!!!』」
咄嗟にアリアちゃんから貰った力を使い、私の武器『夢幻』を取り出し星ちゃんにとどめを刺そうとしている黄巾党の人を横薙ぎに切り裂いた。
思いの外、簡単に切れた。
―キモチワルイ―
切り裂いた黄巾党の人は即絶命したようで、ゆっくりと倒れていく。
人の肉を切り裂くあの感触、吹き出た血の臭い、その場で胃の中のものを吐き出したい衝動に駆られる。
―ダメ!!―
ここで負けるわけには行かない!!
私は星ちゃんを護る為に来たんだから。
絶対に護ってみせる!!
奏視点終
奏殿は強かった。私の予想した通り、強かった。次々と黄巾党の兵を薙ぎ倒していく。
―天下無双―
自然とその言葉が浮かんできた。正しく天下無双。
そしてなにより美しかった。
星視点
奏殿が乱入し黄巾党を倒していき暫くして稟達が率いる弓隊が奇襲を掛け150にも昇る黄巾党に勝利た。
稟達の策は、私が黄巾党へ特攻し、軍列が乱れた所へ弓隊が奇襲攻撃するというものだった。策は見事に成功、しかし私や稟達本人も、
「この策要らないんじゃね?」
と、思っていた。
殆どの敵をたった一人で奏殿は倒されてしまった。なんともまぁ笑えてくる話だがな。
その後、村に戻り祝勝会をしていた。
「おや?」
「どうしたのですか?」
「奏殿はどちらに」
「奏お姉さんなら川辺に向かうのをみかけましたよ~」
「川辺?」
星視点終
私達三人は風が言っていた川辺に向かっていた。
「声?」
最初に私が気付き、直ぐに二人にも聞こえたらしい。
「こっちからみたいだ」
「この声、奏お姉さんみたいですね」
声の元に近付くにつれて何の声か分かってきた。
声が聞こえる場所につくとやはり奏殿がいた
月光が奏殿を照らし、光が奏殿の髪に反射し、幻想的だった
「―――――――!!」
誰一人として言葉を発せ無かった。
―悲しむように―
―嘆くように―
―何かを決意するように―
哭いていたていた。
幼子のように、恥も外聞も気にせずただ哭いていた。
―――――――――――
――――――――
――――
「本当に行ってしまうのですかな?」
「……うん」
「残念なのです」
「ごめんね、風ちゃん」
「こらこら、二人とも、奏殿を困らせるんじゃない」
「稟は嫌じゃないのか?」
「確かに嫌だが、仕方ないだろ、奏殿が決めたことなのだ」
戦からはや一週間。
村の復興の手伝いをしたり、怪我人の手当てをしたりとあっという間に過ぎてしまった。
村を出る日に私は三人に別れを告げていた。
あの戦いて私はこの世界の事が少しわかった。
でもそれはほんの一部にすぎない。
私はこの世界を見て回りたい。私が天の御遣いなのだとしたら出来る事が少しでも有るんじゃないか。
三人には本当に感謝している。
だけど、甘えてばかりもいられない。
「ありがとう、稟ちゃん」
「ならば私も奏殿について行く!!」
「えぇ~~!?」
「私の主は奏殿だけだ!!それ以外は考えられん!!」
「………ごめんね、星ちゃん。それは駄目なんだ」
「何故ですか!?」
「私はまだ未熟だし、それに私よりも優秀な人なんてたくさんいる。だから星ちゃんには色んな人を、いろんなことを見たり経験したりするべきだよ。だからごめんね」
「………」
「分かってくれるかな?」
「………分かりました、しかし!!、各地を見て回り私の目に止まらなければあなた様に仕えさせて貰います!!」
「!!、……その時は宜しくね、星ちゃん」
ニコッ
「!?!?」
「三人ともどうしたの?顔真っ赤だけど……」
「何でもありません!!」
(油断した~~~っ!!///)
(相変わらず綺麗な笑顔ですね~///)
(出しちゃ駄目だ!!出しちゃ駄目だ!!出しちゃ駄目だ!!///)
「それじゃあね」
「行っちゃいましたね~」
「ああ、……?、稟、どうした?」
「……ぶはぁ――――!!!!」
「またか…」
「稟ちゃ―ん、トントンしますよ~」
「相変わらずだな」
「奏殿、必ずあなた様の元にいきますゆえ、まっていてくだされ!!」
「ぶはぁ―――!!!!」
「稟よ、さすがに死ぬぞ」