遭遇
「へへへ、ねーちゃん、死にたくなかったら、身包み全部置いてきな」
「…何でこうなるんでしょうね?」
手っ取り早く状況を説明しますと、かつあげみたいなことをされています。
強盗かな。
転生していきなりこの状況。
…私、何かしましたかね?
――――――
――――
――
遡ること一時間前
さて、アリアちゃんに転生させてもらって、此から私が二度目の人生を歩む世界に到着しました。
「ん〜、ここ何処ですかね?地平線が見えますから日本ではないみたいですけど」
辺りを見回していると突然頭に聞き覚えのある、と言うかさっきまで話していた声でした。
―奏さん、聞こえますか?―
「あら、アリアちゃん、さっきぶり」
―はいっ、さっきぶりです!…じゃなくて、大変なんです!―
「どうしたの、そんなに慌てて。何か良いことでもありました?」
―逆です!実は、奏さんが転生したのは三国志の世界なんです―
「三国志って、劉備や曹操や孫権の?」
―そうなんです。でも奏さんが知っている三国志ではなくゲームの世界なんです―
「また凄いところに転生しましたね〜」
―呑気なこと云ってる場合じゃないんですってば!この世界では主要人物が女性になっているんです―
「女性だらけの三国志ですか〜」
―か〜な〜で〜さ〜ん〜(泣―
「其れで、アリアちゃんは、其れを知らせに来てくれたんですか?」
―はいです、この三国志の世界に転生してしまった以上、この世界で生きていくしかありません。でも、奏さんは一般人、生きていくには絶望的です―
「まぁ、確かに厳しいでしょうね」
此方の常識も金銭もありませんからね。普通なら野垂れ死にですよね。
―其処で、わたしの独断で奏さんに道具と能力を付与します―
「道具と能力?」
―はいです!まず、私が織った糸で創りました。バトルドレスです―
そうアリアちゃんの声が聞こえた後私が着ていた服が一瞬で白いドレス(なの…かな、これ)にかわった。
「これがバトルドレス?」
純白の布に胸や脇腹の部分に金属が鎧っぽく付いている。
鎖骨から胸まで開いていて、着物みたいに前で重ねている。しかし帯はなくゆったりと着れている。袖は長くゆらゆら揺れている。回ると袖もヒラヒリ回り舞のように見える。
肩の部分と前の裾が少し露出していてスースーする。
そんな服に足は太腿まであるブーツ。
全体的に凄いことになっているがとても動きやすい。
―今、奏さんが着ている服は其れだけで重装甲鎧並みの性能があります!―
「いきなり反則ですね、でも綺麗ですね〜この服。」
―当然です。神力がこもっていますから―
何だかとても凄い物を貰ってしまいましたね。
神の加護と言ったところでしょうか
―更に宝物庫からパクって………コホン、拝借してきた武器です―
「今、パクったって言ってなかった?」
―実際にだしてみましょう。まず、想像してみて下さい。もう、武器の情報は奏さんの魂のなかにインプットされてるですよ―
私の質問を華麗にスルーして話を進めるアリアちゃん。
取り敢えず集中して自分の中のモノを意識してみる。
「……」
―どうですか?―
「ぼんやりとだけど、何となくわかりました」
「其れじゃあ、その子の名前を呼んでみて下さい」
「名前?」
―そうです、奏さんが感じた通りに呼んでみて下さい。せれで完全に奏さんのモノとなります―
「……」
−アナタが私の中にいる子ですか?−
−コクッ−
−アナタの名前、教えて貰えますか?−
−………−
−え?−
−………−
−其れがアナタの名前?−
−コクッ−
−私は奏です、よろしくね−
−コクッ−
―奏さん?―
「……おいで、『夢幻!!』」
カッ!
一瞬光った右手には、私の身の丈を越える大鎌が握られていた。
目測2m弱。
全体的に漆黒。
刃の部分だけどす黒い、其れでいて美しい紅。
禍々しく、神々しいこの大鎌に触れているだけで解る。コレが何なのか、どう扱えばいいのか、直接頭に伝わって来る。
―やりました!凄いです奏さん、一発で成功させるなんて…―
「この子が…」
―はいです。今日から奏さんの武器、大鎌・夢幻です―
「大鎌・夢幻……」
―普通、このレベルの神具の所有者になるには相当時間がかかる筈なんですが―
「そうなの?」
―はいです!其れと、これらの武器は奏さんが喚べば何時でも何処でも出て来るですよ―
「凄いですね〜」
「更に更に、奏さんの身体能力も強化しといたのですよ」
「身体能力ですか。具体的に云うと?」
―筋力から動体視力までありとあらゆる身体能力をパワーアップしてあるのです!ぶっちゃけ、今の奏さんなら呂布に楽勝出来るのですよ―
「…絶対反則じゃあ?」
「問題無です!…おっと、そろそろ時間なのです」
「そうなの…、いろいろありがとうね、アリアちゃん」
―とんでも無いのですよ!!私に出来るのはこのぐらいしか無いのです…―
「そんなこと無いわ、私の為にしてくれたんでしょ?…ありがとう、アリアちゃん」
―はいです!―
――――――
――――
――
という事があり、いろいろな能力を貰ったんだけど…
「さっさと渡せ!!」
「アニキ〜、さっさとヤっちまってゆっくり頂きましょうや、其れかなりの上玉ですぜ?うっぱらえばかなりの金になりまさー」
「チビに賛成なんだな〜」
「其れもそうだな…、悪く思わないでくれよ?こうしないと生きてはいけないんでな」
好き勝手いわれてますね。
でもどうしましょうか、多分今の私なら、楽に勝てるんでしょうけど…
「あいや待たれい!」
『!?』
「女子を三人掛かりとは、男の風上にも置けんな」
「なんだテメェーは!?」
「外道に名乗る名など無いわ!」
「コノヤロ〜、下手に出てりゃいい気に成りやがって〜!!」
「生意気なんだな〜」
「チビッ、デクッ、殺っちまえ!」
「ふんっ、部下に命令しか出来ん腰抜けとは…、いいだろう、我が槍の錆となれ!!」
えぇー、完全に置いてけぼりに成っちゃいましたね〜。
水色の髪に赤い槍、ナース服みたいな格好をした女の子が槍を振り回しながらあね三人組に突撃して行っちゃいました。
「大丈夫ですか?」
「?」
「無事のようですね〜」
あのナース服(仮)の女の子と入れ替わるように眼鏡を掛けた女の子と頭に人形をのせたフワフワ髪の女の子が駆け寄ってきた。
「えっと、あなた達は…」
「申し遅れました、私は戯志歳、こっちは…」
「程立と言うのですよ〜」
眼鏡の女の子が戯志歳ちゃん、お人形をのせた女の子が程立ちゃんと言うらしい。
「ご丁寧にどうも。私は春風 奏と言います」
「性が春、名が風、字が奏ですか?」
「あ、いえいえ、性が春風、名が奏です」
「変わったお名前ですね〜」
「風、失礼でしょう!?」
「大丈夫、気にしてませんよ?」
程立ちゃんがボケで、戯志歳ちゃんがツッコミ何でしょうか。仲がいいんですね〜
「済みません」
「其れよりも、さっきの人は大丈夫何ですか?一人で三人も…」
「心配ご無用」
おぉ、ナース服(仮)ちゃんも帰ってきました。三人相手に無傷ですか。お強いんですね〜。
「星、無事でしたか」
「うむ、其れにしても、全く逃げ足の早い奴らだ、其方の御人も無事か?」
「はい、危ないところを助けていただきありがとう御座いました。えっと」
「申し遅れた、趙雲と申す。なに、大したことはない」
趙雲!?、スッゴい大物が登場しましたね〜。なら強いはずですね。
「其れにしても、最近は賊が多いですね〜」
「確かに、今の漢王朝にこの大陸を治めておくには限界がありますからね」
「最近では、黄色い布を身に着けた賊が多いらしい。先程の三人組も黄色い布を着けていた」
今はやっぱり三国志の時代なんですね〜。そして黄巾の乱の入り口くらいですか
「其れはともかく、奏殿はこんな所で何をしていたのですかな?」
「あれ、私自己紹介しましたっけ?」
「いや、風達の話が聞こえただけだ」
「そうでしたか。えっと、私が此処にいた理由でしたか?」
「うむ、女性が一人でこんな所に居るなど危険過ぎるからな」
「えぇーっと、私も気がついたら此処に居たと云う状態で…」
「ふむ、もしかすると、奏殿は天の御遣いなのではないか?」
「云われてみれば美しい服を身に纏っていますね」
「天の御遣い?」
「数日前からカンロと名乗る自称大陸一の占い師が予言したのです」
「『世が乱れる時、二つの流星が大陸に飛来する、其は大陸を安寧へと導く』でしたっけ?」
「概ねその通りだ、其れで奏殿、どうなのですか?」
「どうなのですかと言われても…、まぁ、確かに私はこの世界の人間ではありませんね」
転生したものですしね。見方を変えれば天の御遣いなんですかね〜
「やはりそうか。所で奏殿、此からどうするお積もりですかな?」
「…特に考えていませんでした。…どうしましょうね?」
『ガクッ!』
「だってしょうがないじゃないですか!いきなりこの世界に飛ばされたんですから!」
(す゛〜み゛〜ま゛〜せ゛〜ん゛〜)
あっ、ご免なさい!!別にアリアちゃんを責めてるんじゃないのよ?と言うかまだ繋がってたの!?
「其れでは奏殿、私共とご一緒しませぬか?」
「へ?」
「天の国の話を肴に酒を飲むのも、一興と思いましてな」
「私としては渡りに船なんですが、皆さんは宜しいのですか」
「風は全然良いのですよ〜、風も奏お姉さんの話、聞いてみたいのですし」
「私も構いません」
「其れじゃあ、御厄介に成っても良いですかね?」
「勿論ですよ〜」
「………」
「どうしたんですか、星?」
「うむ、奏殿、あなたに真名を預けたい」
「星!?」
「真名?」
「奏殿の居た天の世界には真名はないのですかな?」
「初耳です」
「真名とは…以下略…と云うものです」
許可なく呼んだら首をはねられても文句を言えない大切なもの、ですか〜……
「そんな大切なものを預けて良いんですか?」
「うむ、此から一緒に旅をするのだからな、それに此は私の勘なのだが、奏殿信用に足りる、そう思ったのだ」
「…そんな理由でいいんですかね?」
「構わぬ。我が真名は星」
「風は風なのですよ〜」
「風!?」
「風も、奏お姉さんは信用できると思うのですよ〜」
「はぁー、奏殿、申し訳ない、私の名、戯志歳とは偽名なのです。改めて、我が名はカクカ、真名を稟と申します、訳あって偽名を名乗っていました。誠に申し訳在りません。我が真名をあなたに預けます」
みんなそんな簡単に預けちゃっていいんでしょうかね?
「星ちゃん、風ちゃん、稟ちゃんね、其れじゃあ改めまして、私は、性は春風、名は奏、此からよろしくね」
ニコッ
『ッッッ///!?!?』
「どうしたの、三人共?顔が真っ赤…」
「なっ、何でもありませんぞ!」
「そう?」
なんだかデジャヴみたいですね。
あれ、稟ちゃんが震えて……。
「ブハッーーー!」
「稟ちゃーーーん!?」
「またか…」
またかって!
「致死量ですよ!?」
「はーい、稟ちゃーん、トントンしますよ〜」
何で二人とも落ち着いてるんですか!?
「慣れですな」
慣れ!?
「奏殿もその内慣れますよ」
慣れたくないです……
「ブハッーーーー!」
「あ」
「稟ちゃーーーん!」
「稟よ、さすがに死ぬぞ」
この三人とで大丈夫でしょうか……
アリアちゃん、私はもう挫けそうです