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瞳の奥にある悲しさ
気づかない僕
そっと心に迷い込んで
名をば榊ミヤツコと!&clarity loveコラボ
「おいでやす~!」
新幹線で2時間半、目的地である京都についた。
さっそく七海と琴乃はバス停を探し最初の目的地清水寺へと向かった。
「お店がいっぱい並んでいるのね。」
「そうだね。あっアイスクリームがある!どうしよっかな~」
「今からお寺に入るのに?」
苦笑しながら七海がツッコミを入れる。
清水寺へ来た目的は舞台を見るのももちろんであるが、もう一つ、大切な用事があった。
「やっぱここでしょ!」
清水寺の中に入っている地主神社。ここは恋の神様がいるとされている。
狭いが石が二つ向かいにして置いてある。
その間を目を瞑ってどう渡れるかによって恋が実り方が変わるというのだ。
七海はすでに実っているが琴乃がこれからのためにと頼んだのだった。
「流石に人が沢山だから石の挑戦はできないね。」
「けどお守りがたくさんあるし、いろいろ見てみたら?」
「うん!」
今日は修学旅行生が多いのか人がとても多かった。
しかし負けてはいられないといつものライブのグッズ販売の時のように張り切って並び始めた。
ようやく修学旅行生の一団体がいなくなったからか少し人が減ってきた。
そして七海と琴乃に順番が回ってきた。
「よーし早く買っちゃおう!そんで今のうちに石のに挑戦しよう」
「琴乃まだやるつもりだったんだ。」
七海が苦笑していると後ろから声が聞こえてきた。
どうやらその石渡に挑戦する人たちが現れたようだ。
「ぼっ僕!?」
「そなたがやらずして誰がやるというのだ?」
「そうよ~ミヤ君頑張って!」
「やっやだよっ!こんな人が多いのに…」
「ミヤ。男だったら潔くやれよ。」
「うっ…」
どうやら男の子がやることになったようだった。
いろんな人が挑戦するんだなと感心していると後ろがさらに騒ぎ始めた。
「ミヤっ!どこへ行く!!」
それに気付いたのか琴乃が後ろを振り向く。
「七海っ!!危ない!!!」
「え?」
何だと自分も振り向くと男の子が目を瞑って自分のほうへ向かってきた。
とっさに動くことなどできるはずもなく七海はその男の子に押し倒される形で倒れてしまった。
「ミヤ!何をやっておるのじゃ!」
「ミヤ君大丈夫?」
先程のグループがこちらへ向かってきたのだろう。女の子が聞こえてきてようやく男の子は七海の上から起きあがってくれた。
「僕は大丈夫だけど…すっすいません!大丈夫ですか?」
「七海大丈夫!?」
「はっはい…」
男の子が七海に手を差し伸べるが女の子がそれを遮る。
「おい、カグヤ!」
「大丈夫ですよ。」
そして七海は琴乃に支えられながらゆっくり立ち上がる。
足を動かしたり手を動かしてみるが特に支障はなさそうだった。
しかし擦りむいたりしていたため場所を少し移動し手当をすることとなった。
「本当にすいませんでした!」
「ほんとよ!大怪我したかもしれないんだから!!」
男の子が謝るのに対し琴乃が怒りをあらわにする。
もしかしたら自分が他人にそうしていた可能性があるというのに。
七海は苦笑していると明るいほうの女の子が男の子に向かって話しかける。
「ミヤ君ちゃんと人の声聞かないからだよ。」
「おっお前らのせいだろ!!!あんな人がたくさんいるところで聞こえるわけないだろ!」
半泣き状態で女の子二人に怒っているともう一人の男の子がハンカチを濡らして帰ってきた。
「濡らしてきたぞ。」
「あっありがとう!」
ハンカチを渡してもらい男の子は七海の手当をしようとするが小さな女の子にハンカチを奪われ七海の手当をする。
「カグヤ、」
「わらわがする。」
それから沈黙が続いたが、ぶつかった男の子が居たたまれない様子だったので七海は話しかけることにした。
「えっと、修学旅行ですか?」
「いいえ、ただちょっと癒しの旅をしようと思ってきました!ね、ミヤ君!」
「あ、うん…」
「えっその小さな子も?」
琴乃が驚くと小さな子は琴乃をギロッとにらむ。
「わらわは『こうこうせい』じゃ!」
七海と琴乃2人で呆然としているともう一人の女の子が話しかけてくれた。
「お姉さんたちは京都に何しに?」
「私たちは高校卒業してなかなか会えなくなるから思い出作り旅行よ。」
代わりに琴乃が答える。
「へえ。」
「いいですね!楽しんできてください。」
ニコニコと女の子が言うと手当をしてくれた小さな女の子が立ち上がる。
「できたぞ。」
「ありがとう。…えっと、」
何て言えばいいかわからず戸惑っていると眉をきりっとひそめ仁王立ちをする。
「わらわは月影カグヤじゃ!」
「はっはいっ!」
年下なのにあまりの勢いに思わず七海は姿勢を正しながら答える。
「こらっお姉さんは年上なんだぞ!」
ぶつかった男の子がカグヤを怒ると七海のほうへ腰を折る。
「すいません。こいつ、ぜんぜん礼儀がなってなくて…あの、俺、榊ミヤツコって言います。○×高校です。もし、傷の具合がおかしくなったりしたら問い合わせて言ってください。」
「いいんです!私丈夫ですし。えっと、私は日向七海と言います。こっちは友達の柳田琴乃です。今日はせっかくの楽しい時間を台無しにしちゃってごめんなさいね。」
「気をつけなさいよっ」
琴乃も一言添えると他の二人も挨拶をしてきた。
「私、大名アオって言います!こちらこそすいませんでした!」
「斎藤リュウっす。これから気をつけまっす」
「うんわかればよろしい!」
琴乃がそう言うと七海は立ち上がる。
「じゃあ、カグヤちゃんありがとう。旅行楽しんでね。」
手を振るがカグヤちゃんだけ手を振り返してくれなかった。
結局嫌われちゃったかなと少し七海は残念だった。
これでこの件は終わりかと思っていたがまだ終わりではなかった。
次向かったのは鹿苑寺金閣。
写真で見たことのない黄金に輝く建物。
どんなものなのだろう。とてもわくわくしていた。
ついてみると意外にも目立つけれども情緒ある趣で二人を感動させた。
「よし!じゃあ写真を撮ろう!七海金閣の前に立ちな!カナンに送ってあげる」
「ええっ…」
七海は顔を真っ赤に照れたがいいからいいからと琴乃に促される。
「うーんこれ以上下がれないなあ…七海もうちょっと下がって」
「うん」
少しずつ後ろへ下がる。すると人とぶつかってしまった。
「すっすいません!!」
とっさに後ろを向いて謝る。
そして腰を上げると先程の榊ミヤツコが目の前に立っていた。