プロローグ clarity love
微笑むあなたは
時を揺らめく
小悪魔
名をば榊ミヤツコと!&clarity loveコラボ 奇なる縁は京都に舞い降りて
高校最後の春、七海は琴乃と京都旅行へ行くことにしていた。
七海は前日から楽しみで眠れなかった。
双子もそれがわかるのかとても嬉しそうにしている。
「ななちゃ、きょうとだね!」
「楽しみ、だね!」
「うん。けど、2人とも、ごめんね。」
「「ふえ?」」
二人に謝るが二人は何のことかわかっていない。
この旅行は七海と琴乃の二人で行く。
つまり双子は置いて行くことになっているのである。
本当はしたくなかったけれども琴乃とずっと一緒にいられるのも今月で最後だ。
だからこそ今まで以上の何か思い出を作りたかったのだ。
琴乃と二人で考えた末琴乃のお母さんに相談をする。
すると琴乃のお母さんは快く受け入れてくれた。
そして琴乃の家で預かってもらえることになったのである。
七海は二人を抱きしめる。
「いっぱいいっぱいお土産買ってくるね。」
「Xマンのおかし!」
「ねずみーの、ぐっず!」
双子はニコニコしながらお土産を言っていく。
それに七海は笑顔で了承していく。
「風呂、入ったぞ。」
「は、はいっ!」
3人で抱きしめ合っていたところを香南に見られ突発的に双子を離してしまう。
香南は香南で関西でのミニアルバムイベントのために明日から関西へ向かう。
もちろんイベントは忙しく行われるため二人とも行き帰り別々である。
「にーちゃはどこいくの?」
「きょうと?」
「大阪と神戸。」
「おおさか!」
「なんでやねん!なんでやねん!」
お決まりの大阪弁を披露し香南に撫でられる美羽に対抗し瑠唯が続ける。
「あかんで~!」
「二人ともうまいな。どこで習ったんだ?」
香南も双子に会えない寂しさからか双子に一生懸命構う。
その間に七海は風呂に入ってくる。
七海が風呂からあがるとリビングには香南だけだった。
「あいつら興奮して元気なのはいいが、あっという間に電池切れで寝ちゃったぞ」
微笑みながら話す香南は少しさみしそうだった。
香南のお泊りバックからメモ帳を出す。
「なな、泊る場所の電話番号はここでいいんだな?」
「はい!香南さんもここですね。」
「ああ。それで、なるべく夜は出歩くなよ。知らない場所だし何かあった後じゃ遅いからな。」
「はい!」
「あと、知らない人に声を掛けられても無視だぞ。」
「はい!」
「それから、旅館に着いたら電話をくれ。」
「はい!」
「それから…」
まだ話そうとする香南に七海はそっと手を握る。
「大丈夫です!何かあったらすぐ電話をかけます。香南さんもすぐに電話をかけてくださいね?待ってます。」
「…ああ。」
二人は抱きしめ合った。
朝、少し早く七海と香南は琴乃の家へ行った。
すると琴乃の母親が出てきた。
「七海ちゃんいらっしゃ~い!あら?そちらはもしかして…」
「はじめまして、七海とお付き合いをさせてもらっています、鵯香南と申します。本日は双子を預かっていただけるということでありがとうございます。」
「はじめまして!本当にきれいな方ね。こちらこそ元気な双子ちゃんと過ごさせていただけるのを楽しみにしてましたわ。」
「あ、もうきたの?ってぎゃっカナン!!!」
まさかくるとは思っていなかったのか琴乃は驚いていた。
「どうしても双子を頼むのには自分も付いていきたいと香南さんが…。」
七海が頬を染めながら話す。
香南が琴乃のほうを向いた。
「柳田琴乃にも頼みがあった。」
「えっ?」
香南が自分へどんな頼みがあるのだろう。
綺麗な顔が自分のほうを向き少しだけどきっとする。
「ななを、よろしく頼む。」
「香南さん…」
腰を折り頼む香南に琴乃は息をのむ。
最近の香南の代わりぶりに未だついて行けていないのだ。
しかし、思っていることはわかっている。
そしてそれは琴乃も同じなのだ。
「あったり前です!任せて心おきなくファンサービスしてきて!」
ドンと胸を叩き安心させるような笑顔を送る。
それを見て香南は苦笑するとちょうど携帯に電話がかかってきた。
「雅さんからだ。」
「あっではそろそろ…」
「「にーちゃんいってらっしゃーい!」」
「ああ、行ってくる。」
「いってらっしゃい」
香南は3人のほうへ笑顔を向けると再び琴乃のお母さんのほうを向き一礼をして車の迎えのほうへ行った。
それから琴乃の長い長い準備を待ちようやく東京駅から出発する。
この時にはまさかあんな出会いをするとは思いもしていなかった七海だった。