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魔界闘神伝  作者: 和和和和
天界訪問編
80/305

簒奪の刃





 ――それは遠い日の記憶。忘れ得ない離別の記憶。

《紫怨っ》

《悪い、茉莉……俺は今以上に強くなりたいんだ。けど、このままここにいたら、俺はお前の強さに頼り切っちまう。だから……》

 互いに愛し合い、お互いを慈しみ合いながら、魔界を気ままに旅していた紫怨と茉莉。二人の愛情は確かなものだったが、紫怨と茉莉の間には決定的な力の差があった

 そんな中、紫怨をかばった茉莉が致命傷を負ってしまった事で、二人は長年連れ添った生活に一時の区切りをつけようとしていた


 一歩間違えれば、命を落としてしまっていたかもしれない傷を自分に負わせてしまった事を責め続けている紫怨の悲痛な表情に、茉莉は自分から離れていく最愛の人を引きとめる事が出来なかった


 自分と紫怨の間には決定的なまでの力の差がある事は茉莉も分かっている。常に紫怨が自分と肩を並べられるくらいに強くなろうとしてくれている事も知っている。しかし茉莉にとって大事なのは、紫怨と――心から愛する人と共に、平穏な毎日を送る事だけだった

 もしこれが逆だったらこうはならなかったかもしれない。強いのが自分ではなく紫怨の方だったらきっと自分達はこんな事があっても一緒にいられたのかもしれない


 紫怨は優しいが故に、自分を瀕死に追いやってしまった紫怨(自分)自身の弱さが許せず、また同じ事が起こらないように自分と距離を置く選択をした事も茉莉には分かっていた

《少しでも早く帰ってきてね。待ってるから……》


 「強さなんていらない」「ただ一緒にいてほしい」――そんな想いを言葉にする事が出来ず、茉莉はただ己自身の強さのせいで紫怨を苦しめ、己自身の弱さのせいで紫怨を追い詰めてしまった事を苛みながら、ただ張り裂けそうな心を押し殺して紫怨を見送る事を選んだ

 ――否、茉莉には紫怨の気持ちが痛いほど分かるが故に、去っていくその背を引き止める事が出来なかった


 自分との力の差に苦しみ、いつも強くなろうとしてくれていた紫怨、自分に瀕死の重傷を負わせてしまい、今にも崩れそうな弱々しい表情を浮かべていた最愛の人を思い返し、茉莉は己の心を蝕む言いようのない感情に強く唇を噛み締める

(私がもっと弱かったら……せめてもっと強かったら、こんなことにはならなかったのに……)

 「自分と紫怨の強さが同じくらいだったなら」と何度願ったかしれない。紫怨にこんな決断をさせてしまう程度の強さなら、せめて誰にも負けない強さがあればよかったと心の中で己を苛みながら、茉莉は去っていく紫怨の背を見つめる


《ああ、お前を守れるくらい強くなって帰ってくる。そうしたら、また二人で暮らそう》

 だからこそ、紫怨が別れ際に残したその言葉は茉莉にとって、生きていく支えそのものだった



 身体を重ねて愛し合った全霊命(ファースト)は、互いの根幹である魂――存在の力を分け合っているために、どれほど遠く離れていても茉莉の存在は紫怨の生死を認識することができる

 世界のどこかで紫怨が生きていてくれる事を喜びながら、今すぐにでも会いに生きたい衝動を抑える茉莉は、ただ一途に愛する人を待ち続けていた

《はぁ、はぁ……・》

 しかし、そんな茉莉に待っていたのは予想を裏切る事態だった

(強い……)

 存在そのものが霊の力である神能(ゴットクロア)で構成されているために、身体の外に出た血が昇華される事でさながら炎が立ち昇っているように見える血炎を身体の到るところに纏った茉莉は地面に膝をついて悠然と佇む一人の悪魔を見上げていた


 腰まで届く漆黒の髪に、頭の側面から生えた二本の角。白銀の縁取りがされた黒と赤の鎧と羽織り。背中から二枚の布を翼のようになびかせたその悪魔は、茉莉がかつて出会った事がないほどに強かった。

 身の丈にも及ぶ巨大な刀身を持つ大剣と見紛うばかりの大矛を携えたその姿は、さながらあらゆる敵を駆逐する殺戮の魔人の権化の様だった


《……殺される》

 金色の瞳を煌めかせ、漆黒の髪を風にたなびかせた悪魔を前に力及ばず膝をついた茉莉は、恐怖と共に自らの死を自覚した。

 これまで出会った事のない――かつて紫怨と離れる原因となった自分に大けがを負わせた悪魔すら遥かに凌駕する、まさに悪魔として、全霊命(ファースト)として最高峰に位置する猛者の力を前に茉莉はただ恐怖した

(私は、紫怨を待っていないといけないのに……)

 死ぬ事はもちろん怖い。しかしそれ以上に、紫怨を待っていられなくなる事が――もう一度紫怨と会えなくなる事の方が怖かった。


 紫怨は自分が強いと信じていくれている。だからこそ、自分がいなければ……一人ならきっと大丈夫だと艦がてくれているからこそ、「待っていてくれ」と言葉を残したのだ

 そんな紫怨の信頼と想いを裏切り、自分だけが先に命を落としてさらなる罪悪感で紫怨を苦しめてしまう事を茉莉は何よりも恐れ、忌み嫌った


「待って下さい。どうか、命だけは……」

 武器を捨て、戦意を破棄し、今まさに最後の一撃を繰り出そうとしている悪魔に全霊を賭して命乞いをした


 ――その悪魔こそが、十世界に所属する悪魔たちのナンバー2、死紅魔(シグマ)と呼ばれる悪魔だと茉莉が知るのは、その少し後の事だった





「俺の傍にいてくれないか?」


 紫怨から――ずっと想い続けた人から、ずっと願い続け、街続けた言葉を向けられ、茉莉は動揺を隠せずに半歩後ずさる


 もっと早くに――自分のために離れる決意をする前にその言葉を言って欲しかった。「もし自分のために死ぬ事になっても、俺と一緒にいてくれ」――そんな言葉を翔けてほしいと願わずにはいられなかった今日までの日を思い返し、茉莉は唇を引き結んで悲痛な表情を浮かべる


「な、何で……」

「…………」

 もう少し早ければ――せめて自分が十世界に入る前に、死紅魔(シグマ)と出会う前にその言葉を向けていてくれれば、茉莉はその胸に飛び込む事をいとわなかっただろう

 しかし、あの時とは違ってしまっている。心の底では、今すぐにでも十世界の――自分に絡みつく全てのしがらみを振り切って紫怨に身も心も委ねてしまいたい想いが胸の奥底からとめどなく湧き上がってくる


 だが、それを出来ない事を――してはならない事を茉莉は十分に理解している。なぜなら、茉莉は他の十世界のメンバーとは違って、知ってしまったのだから。


 「十世界の闇」を。


「何で、今になって……っ!」

 待ち望んだ言葉と、目の前にいる愛する人――しかし、それに応えたい本心と応える事ができない事情の軋轢に心を押し潰されながら、茉莉は自身の武器である槍を握る手に微かに力を込める

(私は……っ!)

 胸が張り裂けそうな慟哭に身を焦がしながら、その身体から戦意の籠った悪魔の神能(ゴットクロア)――魔力を放出する茉莉に、紫怨は自身の力が武器として顕現した斧槍・「天星」を手に金色の髪を振り乱す想い人に視線を向ける

「茉莉っ!」

「助太刀させてもらうぞ」

 紫怨と茉莉の会話が決別したらしい事を察したクロスは、自身の存在が持つ「攻撃」の意識が現実世界に顕現した身の丈にも及ぶ両刃の大剣を召喚する

「……勝手にしろ。ただし、万が一茉莉を殺すような事をすれば、俺がお前を殺す」

「ああ」

 紫怨の強い意志の籠った鋭い視線を受けたクロスは、澄んだ音色を奏でる槍を携えた茉莉と対峙する

「お前がそのつもりなら、俺も容赦はしない。……今さら綺麗事で片付ける気もない。だから俺は、最後まで勝手を貫き通させてもらうぞ」

 天を貫く漆黒の魔力を放出し、自身の武器である斧槍を構えた紫怨は、今にも泣き崩れそうなほど弱々しく悲痛に満ちた表情を浮かべる茉莉に声を向ける


 「茉莉のため」などという耳触りのいい言葉を使うつもりはない。自分の弱さの所為で茉莉を殺してしまう事を恐れ、「茉莉のために」と距離を置いた結果が今の自分達だ。

 ならば、もう「茉莉のため」には戦わない。茉莉が自分を心の底から拒まないのなら、自分の弱さも茉莉の弱さも二人で共有し、これからの時を共に生きていく決意を刃と力に乗せる


「――力づくでもお前を十世界から俺のところへ連れ戻す」

「っ――……」

 揺るぎない紫怨の言葉に、茉莉は自身の心身を満たす歓喜を懸命に押し殺し、今すぐにでもその腕に飛び込みたい衝動を封殺して、自身の武器である槍を構えた。




 その頃、隔離された異空間内に再現された仮初の人間界城内では、至宝竜(ザイアローグ)が姿を変えた竜を思わせる鎧を纏い、神格化された黒白の気を纏わせた金色の槍を携えた人間界王「ゼル・アルテア・ハーヴィン」と、悪意の衣を纏った真紅の剣にどす黒い力を纏わせた十世界の真のリーダー「ジェイド・グランヴィア」がその刃を交えていた

「はああっ!!」

「むんっ!!」

 至宝冠(アルテア)の権能によって神格を得て、神能(ゴットクロア)に限りなく近い界能(ヴェルトクロア)へと昇華した光と闇の対極にして太極なる気の力と、簒奪の力を持つ悪意の洗礼によって神格へと堕ちた気の力を纏った二人の力が真正面から激突し、無制限に解放すれば世界すらも破壊しつくすのではないかと思われるほどの絶大なる力が仮初の王城の外壁を貫いて、天空に吸い込まれていく


「――っ」

(何て戦い……っ、これが人間界王様の全力……!)

 最強の人間にして、半霊命(ネクスト)の限界を超越した最強の半霊命(ネクスト)達の力に知覚を焼き尽くされながらも、エクレール・トリステーゼは、その力を前にして湧き上がる畏怖と崇敬の念に無意識に身体を震わせていた。


 「至宝槍(ラキスヴァイン)」、「至宝剣(セイオルヴァ)」、「至宝槌(ガルヴァリオン)」、「至宝弓(ゾーラザッファー)」、「至宝甲(ゼルドノード)」、「至宝杖(ミスティラム)」――十二至宝の中でも、明確な武器としての形を持つこれらの至宝には、総じてその形状と形態を変化させる力が備わっている


 ゼルがその力を発現すると、至宝槍(ラキスヴァイン)の柄が数十メートルの長さにまで伸長し、その刃がゼルよりも数十倍の大きさへと増大する。

「オオオッ!!!」

 強い闘志の宿った声を上げたゼルは、自身の数十倍を超える巨大な金色の槍をその常識を逸脱した大きさにも関わらず、閃光すら切り裂くほどの速さで振り下ろす。

「この程度で私を倒せると思うな!!」

 世界の理を斬り裂いて振り下ろされる巨大な刃を前にしたジェイドは、それに全く動じることなくその手に持つ真紅の剣――「至宝剣・セイオルヴァ」をバスタードソードのような形状へと変化させ、さらに至宝槍(ラキスヴァイン)と同等の大きさにしてそれを迎え撃つ

 互いに神格に近い強大な力を持つ黒白とドス黒い力が真正面からぶつかり合い、その刃に込められた破壊と抹殺の意志が、互いに侵食し合いながら荒れ狂う

「――っ!!」

 神格を宿した太極の気と悪意に毒されて神格に堕ちた気の力の渦の中、ゼルの一撃を完全に受け止めたはずのジェイドの悪意の衣が斬り裂かれ、袈裟掛けに走った傷口から真紅の血が噴き出す

(……光の影に闇が生まれるように、闇の中に光が灯るように、物理的な破壊と概念としての破壊を一度に二回(・・・・・)の攻撃として繰り出す――相変わらず厄介な力だ)

「だが、この程度では私は殺せないな」

 一刀の下に斬り裂かれた己の身体と、そこから噴き出す血を横目に、苦痛を堪えながら内心で忌々しげに吐き捨てたジェイドは、通常サイズへと戻した至宝剣(セイオルヴァ)をそのまま二刀一対の剣へと変化させてその内の一振りを自身の身体に突き刺す

「っ!!」

 突如自身の身体を至宝剣の刃で貫いたジェイドを見てわずかに目を瞠るゼルの視線の先で、先ほど与えたはずの傷が、瞬く間に癒えていく

(これが、「生と死」を司る至宝――至宝剣・セイオルヴァの権能か……!)


 かつて起きた人間界の内乱、「緋蒼の白史(ヴァイセ・イーラ)」の中で失われていた至宝剣・セイオルヴァは、生と死を司る「神威」の至宝。

 何かを守るために敵を殺し、命を奪う事で命を守るという戦いの真理と本質そのものが形になったかのようなその剣には、生殺与奪を選択する能力が備わっており、一振りであらゆるものを殺し、一薙ぎの下にあまねく命を救う力を有している


「――驚いているだろう? 至宝剣(セイオルヴァ)が失われて幾星霜。……あなたですら、この力を直接目の当たりにするのは初めてだろうからな」

 至宝剣が人間界王の手元を離れ、もはや数え切れないほどの年月が経過している。既に数千万の時を生きている、現人間界王のゼルですら初めて見る至宝剣の権能が、長い時を経てその力を振るう

「ハアアアッ!!」

 自身の身体を癒すために突き刺した剣とは別の、二刀にした剣のもう片方に真紅の光を宿す漆黒の力を纏わせたジェイドは、刃の一薙ぎと共にその力をゼルに向けて解放する。

 光すら捉える速さで放たれた真紅を纏う闇色の力が触れた瞬間、空間隔離によって現実のそれが完全に復元されている人間界城の壁が消失する

「っ!!」

(「死」の力か……!)

 この世に存在するあらゆるものに死を与える滅びの力が、至宝剣から放出されたのを見たゼルは、金色の槍に黒白の神気を纏わせ、一閃と共にそれを斬り払う

 光とは暴き排斥する力。闇とは隠し吸収する力。「闇」が触れるものの命を奪い、死を与える力を吸収し、光がその死を浄化して斬り裂いていく。


 十二至宝の中で明確な武器として機能する六つの武器の中で、なぜ王が至宝槍を手元に残したのか――その答えは、その力の特性が至宝冠(アルテア)と最も相性がいいからだ。

 光と闇の象徴たる槍と、世界で唯一光と闇を等しく持つ人間の界能(ヴェルトクロア)を神格化させる至宝冠(アルテア)。それを考えるだけでもその相性の良さは明白だろう


 至宝槍(ラキスヴァイン)の形態を変化させ、二本の槍へと変化させたゼルは、その両方に神格化された気――至宝冠(アルテア)の権能たる「太極気」を纏わせる

「貴様の思い通りにはさせんぞ、ジェイド・グランヴィア!! 世界も――光魔神様も!!」

 二本の槍から放出された黒白の神気の渦を、悪意によって神格へと貶めた力を纏わせた至宝剣(セイオルヴァ)の一閃によって斬り裂いたジェイドは、その口元に皮肉混じりの笑みを刻む

「……さすがは人間界王様。私の本当の目的に気づいていたか」

 天高く掲げられた至宝剣(セイオルヴァ)の刀身が煌めき、ジェイドの背後の空間から真紅と金色の刀身が何百本も召喚され、それが至宝剣の一薙ぎと共に剣の雨となってゼルに降り注ぐ

「オオオオオオッ!!!」

 視界を埋め尽くすほどの神剣の雨を前に、至宝槍(ラキスヴァイン)を一本に戻したゼルがその刃を空間に突き立てる。


 空間に突き立てられた至宝槍(ラキスヴァイン)の刀身が空間に波紋を立てながら沈み込んだ次の瞬間、光の力によって形作られた純白の槍と、闇の力によって構築された漆黒の槍、合わせて千本を超えるであろう黒白の槍の群れが出現し、神剣の雨を相殺する


 砕け散る神性を帯びた光と闇の力と、悪意の力の暴風に晒されながら、視線だけで敵を射殺してしまいそうなほど険しい表情を浮かべるゼルと、微笑を崩してはいないが、刃のような危険性を孕んだジェイドの視線が交錯する

「報告によれば、先日の舞戦祭(カーニバル)の襲撃は予定を前倒しして行われていた! ……それが裏で糸を引いていたお前の仕業ならば、その目的は丁度その時期に人間界にいらした光魔神以外にはないだろう!!」

 ジェイドに向けて怒号のような強い言葉を放ったゼルは、至宝冠(アルテア)によって神格化された黒白の気――「太極気」を纏わせた至宝槍(ラキスヴァイン)を振るう


 グリフィスとエスト、竜人達――先日舞戦祭(カーニバル)を急襲した賊達がいつから計画を立てていたのかは分からないが、その後ろで彼らを操っていたのが「ジェイド・グランヴィア」であったならば、逆説的に、襲撃の日付を決められるのはジェイド本人と考えるのが妥当だ。

 もし事前に決定していたとしても、光魔神が人間界に来ている事を知っていたジェイドが、あえてあのタイミングで舞戦祭(カーニバル)襲撃を強行させ、失敗させるには、それだけの理由があったはず。――そう考えた時、最も可能性が高い要素は、その直前に人間界にやってきた「光魔神」という存在だと考えるのが最も妥当で自然だ


「ああ。光魔神様が人間界(ここ)にやってくるという情報を聞いた時は驚いたよ。どうすれば、人間の神を私の意のままに操れるかと思案を巡らせたのさ。

 人間界王族(お前達)が光魔神様に余計な知識を与える前に、私だけが私にとって都合のいい情報を与える必要があったからな――そのために、グリフィス達と人間界王族(お前達)には一刻も早く消えてもらう必要があったわけだ」

 ゼルが放った至宝槍(ラキスヴァイン)の一撃を、至宝剣(セイオルヴァ)で受けとめたジェイドが、強大な力がぶつかり合う奔流の中で微笑を浮かべる



 未だ未覚醒とはいえ、完全に覚醒すれば異端神の中でも最強級の力を持った存在となる光魔神を味方につければ、将来的に九世界全体において絶対的な優位性を手に入れられる上、十三番目、十四番目の「至宝」を生みださせる事でさらなる戦力の増大も容易に見込める。

 その光魔神の力を手中に収めるために、ジェイドはまだ九世界――特に人間界やその社会的仕組みに対して認識と理解に乏しい状態の光魔神を求めた。知識と常識がなければ、言葉と謀略でその思考と行動を誘導し、意のままに操る事も容易になるだろう。


 そんな思惑があったからこそ、ジェイドは出来る限り世界に対する理解と認識が弱い段階で光魔神――大貴に取り入り、自分だけが光魔神にとっての世界そのものになる必要があった。

 しかし人間界王族は十世界にしろ、そうでない者にしろ、その力を欲して大貴と接触を図ってくる者がいるであろう事を予見し、光魔神が何者かに誑かされてこの世界の在り方を変え、結果として取り返しのつかない事態を引き起こす事になる前に、大貴が大貴の考えと意志で世界に観賞できる事ができるように、あえて人間の罪である亜人(サングライル)などを見せ、その意志にそって世界を見せ、ゆりかごの世界とは違う、九世界の知識と認識を与えようとしていた。


 その上で王族(ハーヴィン)は、次期人間界王であるヒナと光魔神を婚約者候補という形で関係を結んでしまった、このまま光魔神に王族(ハーヴィン)の味方をされては、人間界を手中に収めるジェイドの計画も水泡に帰してしまう。

 光魔神と竜人を使った王位簒奪を考えた時、どちらがジェイドにとって有益なのかは明白。だからこそ、竜人を最大限に利用しつつ、破棄するために考えられた計画こそ、先日の舞戦祭(カーニバル)襲撃事件の正体だ



「奴らは私にとって最高の結果を残して死んでくれたよ。この人間界が抱える闇を私の光魔神様に見せつけ、世界に対する疑念を植え付けてくれた。――あとは、お前達王族と貴族を一度に始末し、残った光魔神様を言いくるめるだけでいい」

 合わせた刃を離して一旦距離を取ったジェイドは、内側に秘めた狂気を滲ませた笑みと共に閃光を置き去りにするほどの速さで無数の斬撃を放つ。

「……愚かな」

 それを迎え撃つゼルも、ジェイドのそれに勝るとも劣らない速度で至宝槍を振るい、半霊命(ネクスト)の限界を超えた斬撃の応酬によって、世界に取り残された結像と衝撃音、衝撃波が不規則に世界に顕現して吹き荒れる


 この戦いも一連の動きも大貴――光魔神には知覚されているだろう事はジェイドも分かっている。しかし、今の――九世界の知識に乏しい光魔神ならばいくらでも言いくるめられるという自負をジェイドは持っている。

 現王族を悪役に仕立てる手筈も、偽造した証拠も情報も既に用意がされている。それを用いて、自分が起こしたこの一連の事件を今の王族から主権を奪うための革命だったと理解させれば全てジェイドの思惑通りに事が運ぶ。

 そのために、十世界の戦力を用いて光魔神が万が一にもこの会話を聞いて自分に疑念を抱かないように足止めし、同時に行動を共にする天使達を葬り去る。――それがジェイドの計画の全容だ


「ちなみに、光魔神様のパートナーをしていたルカという少女のパートナー変更と舞戦祭(カーニバル)参加の許可を出したのも私ですよ。――そうすれば、エストを戦場におびき出して処分しやすくなりますからね」

「――外道が」

 至宝槍の一閃によって至宝剣の刃を弾き飛ばしたゼルは、微笑を称えるジェイドを義憤に満ちた視線で射抜く


 ジェイドが最も危惧していたのは、計画に早い段階で介入する竜人やロジオ・虹彩(ツァイホン)という捨て駒達、その時点で会場にいる事が予定されていたグリフィスはともかく、事件が起きてから戦場にやってくる事になっていたエストが、事態の異常さや計画に気づき、逃走を図る可能性だ。

 だからこそ、パートナーを襲撃してまで計画に巻き込まれないように遠ざけたエストの妹――「ルカ」を舞戦祭(カーニバル)に参加させ、それにつられてやってきたエストを確実に処分しようと考えたのだ


「なんとでもどうぞ」

 至宝剣を弾くと同時に放たれた二本目(・・・)の槍の一撃を身をよじって回避したジェイドは、いつの間にか至宝槍を二本に分けていたゼルに至宝剣の斬撃を返す

「貴様はここで必ず討つ! ――王の名と誇りにかけて!!」

「それは私の台詞ですよ。あなたには、新たなる王となる私のための生贄となってもらいます」

 咆哮と共に力を解放し、まるで二匹の龍が絡み合いながら天に昇っていくかのような太極気の黒白の渦の中で至宝槍(ラキスヴァイン)を天に掲げたゼルに、それまで浮かべていた微笑を消したジェイドは、悪意に毒されたどす黒い気の力を至宝剣セイオルヴァに収束させていく

「オオオオオオッ!!!!」

 世界を軋ませながらせめぎ合う力をそれぞれの至宝へと収束したゼルとジェイドは、渾身の力を込めて持てる力の全てをただの一撃へと変えて解放する

 神格を得た気を宿した光と闇の力を宿して槍撃と、悪意によって神格へと堕ちた死の斬撃がぶつかり合った刹那、世界から全てが消失したかのような静寂が世界を包む



 あまりに強大な力のぶつかり合いによって、世界に存在する全てが一瞬世界から切り離されたかのような力の解放。

 隔離された空間に再現された仮初の人間界城は、原型をとどめないほどに消滅させされ、その力の余韻が消えさり、世界が世界を取り戻した瞬間、そこに立っていた二人の人物の内の片方が、鮮血を噴き上げながらその場に崩れ落ちる

「――ぐふっ」

「……終わりだ、ジェイド・グランヴィア」

 鮮血を噴き上げて崩れ落ちたジェイド・グランヴィアに背を向けた人間界王「ゼル・アルテア・ハーヴィン」は、至宝槍を軽く振るって血糊を払うと、抑制の利いた静かな声で、勝利と戦闘の終結を確信する

「これで我々の勝……」

 ゼルは油断していた訳ではない。

 渾身を込めた至宝槍の一撃は、ジェイドの身体を深々と斬り裂き、いかに神格へ落ちたジェイドの力であろうとも、その命を確実に消し去るだけの損傷を与えていた


 しかし、そうであるにも――確実に殺したはずにも関わらず、勝利を確信し、戦闘態勢を解除したゼルの背後から、赤い血をまき散らせながらジェイド・グランヴィアが至宝剣(セイオルヴァ)を振り下ろした

「――っ」

 ゼルがそれに気づいた瞬間には、すでに遅かった。

 赤い血が天に吹き上がり、自分が与えたものと酷似した深い傷を刻みつけられたゼル・アルテア・ハーヴィンは、驚愕に見開いた瞳に、明らかに致死量の血で身体を濡らしているにも関わらず平然としているジェイド・グランヴィアの姿を焼きつける

「……残念でしたね、王」

 静かに抑揚のない口調で、崩れ落ちるゼルへ弔いの言葉を向けたジェイドが放った至宝剣の刀身が、王の身体を容赦なく貫いた




 その瞬間、天を揺るがさんばかりに噴き出していたゼルの気の力の圧力が消失し、王都の外で悪意に毒された軍勢と戦っている人間界王族と七大貴族達が言葉を失う

「――なっ!?」

「人間界王様……っ」

 最強の人間である上、三つの至宝を同時に行使していたゼルの力は紛れもなく人間界最強。それが倒されたという事は、敵の強さは神の力の断片である至宝を行使していたゼルを上回っているという証明になる

 しかし、それよりもその場にいた者達に衝撃を与えたのは、ゼルの敗北――あるいは戦死という事実。最強の人間としてその実力には全幅の、その性格も一定以上の評価がされている以上、ゼルの敗北はそのまま街の外で戦っている者達の士気にも影響するのは明白だった。



「……っ、あなた!!」

 それと同時刻、ゼルの気が消失したのを感じ、ゼルの伴侶たる人間界王妃「フェイア・ハーヴィン」は信じ難いその事実に言葉を詰まらせ、今にも倒れてしまいそうなほどに顔を青褪めさせる

「お父様……!」

 一方、各々の戦場に立っていた人間界王の実娘「ヒナ・アルテア・ハーヴィン」と「シェリッヒ・ハーヴィン」は、この異常事態の発生と同時に弾かれたように地を蹴り、もはやただの瓦礫の塊と化している仮初の人間界城へ向かう




「――キュ、キュウ……」

 耳元で囁く不安げな声に一瞬飛んでいた意識を回復させたゼルがうっすらと目を開くと、そこには本来純白と黒で染まった色鮮やかな身体を持つ至宝竜・ザイアローグが、鮮血でその身を真っ赤に汚し、悲しげな声を向けてきていた

「生きていたか……しぶといな」

 低いうめき声を上げて身体を起こしたゼルを一瞥したジェイドは、しかしゼルが死んでいない事を確信していたかのような口調で言うと、血の海に倒れ伏しているゼルを嘲笑うような視線を向けて睥睨する

「ぐっ、なぜ……」

「本当に惜しかった。本当なら、先ほどのやり取りであなたの勝利が決まっていたところだ」

 身体を起き上がらせようにも、至宝剣で切り裂き、その腹部を貫かれた状態で動き回る事などできるはずがない

 命を落としていてもおかしくない程の傷がもたらす苦痛と、不意を突かれる形になったとはいえ、ジェイドを止められなかった己を苛みながら苦悶の表情を浮かべるゼルを見下ろす眉目秀麗なる青年は口元に微笑をたたえる

「――だが、あなたは一つ見落としをしている」

(……っ!?)

 まともに声を出す事もままならないゼルは、今にも意識を奪っていきそうな生命力の喪失を気の力を総動員してかろうじて押しとどめながらその言葉に耳を傾ける

 そんなゼルの様子を察してか、ジェイドは特に対応を求める訳でもなくただ淡々と地に伏した人間界王に向けて言葉を紡いでいく

「私が至宝剣(これ)を持っている時点で、あなたは疑ってかかるべきだった。もう一つの(・・・・・)失われた至宝も私が持っているのではないか、と」

「なっ!?」

(まさか……っ)

 ジェイドの言葉に、ゼルの目が限界まで見開かれる

 その視線に勝ち誇った笑みを浮かべたジェイドが自身の胸にそっと手を添えると、不意にその手の平の中に光が生まれ、その腕の中に無数の光を宿した宝玉が出現する

「っ、『至宝珠・イグニシス』……!」

 ジェイドの手の中に出現した宝珠を見て、ゼルは苦悶に染まった声でその宝珠の名を絞り出すように言葉に変える

「――その通り。至宝珠・イグニシスの権能はこれと融合した者に、不死と不滅を約束する能力。――まぁもっとも、本当に不死になるのではなく、限りなくそれに近づく――いわば、身体的に人間を半全霊命(ファースト)化させる至宝とでも言うべきものですからね」

 ゼルの言葉に口元を歪めたジェイドは、その手に持つ至宝珠・イグニシスに自分の顔を映して愛おしげに目を細める


 十二至宝の一つ、「至宝珠・イグニシス」は、永遠の世界、不変の理を司る至宝。それを身体に取り込み、魂に融合させる事で人は人の身体が持つあらゆる枷を打ち払い、不死とも思える生命力を獲得する事が可能となる。

 神格を高め、その存在そのものを半全霊命(ファースト)化するのが至宝冠(アルテア)。その身に纏う事で人間という存在を神格化するのが至宝竜(ザイアローグ)。そして、この至宝珠(イグニシス)は、その肉体によって命を維持するのではなく、命によってその身を維持する存在へと昇華させ、半全霊命(ファースト)化させる力を持っている。


 至宝珠(イグニシス)と融合した者は、存在の力をを無限に行使する事ができるようになり、それによって消耗という半霊命(ネクスト)最大の欠点が無くなり、全霊命(ファースト)と同様に「殺されるまで死なない」存在となる事ができる。

 その権能によって限りなく不死身に近い存在となっていたからこそ、ゼルの刃を受けたジェイドは命を落とさずに反撃を繰り出す事ができたのだ


「――さて、長話はこのくらいにしましょうか」

 そう言って話を打ち切ったジェイドは、至宝珠(イグニシス)を再度自分の体内に取り込むと、ゼルの命を奪うべき、神々しいほどの真紅に煌めく剣――至宝剣・セイオルヴァを掲げる

「キュウ!!」

 ジェイドが至宝剣(セイオルヴァ)を振り上げると、まるで瀕死のゼルを庇おうとするかのように、至宝竜・ザイアローグがその前に立ちはだかる

「ザイア……」

「キュキュウーーーッ」

 いかに十二至宝の一角を成し、半霊命(ネクスト)最強の「竜」である至宝竜(ザイアローグ)とはいえ、単体での戦闘能力は極めて低い。

 そのため、いかに勇猛果敢に凶刃の前にその身をさらけ出そうと、至宝竜(ザイアローグ)にはゼルを守る術も力もない。――つまり、ジェイドにとっては警戒に値しない相手という事になる

「……健気な事だ。だが、間もなくお前も私の物になる」

 怒りと敵意を露にする至宝竜(ザイアローグ)を睥睨したジェイドは、人間界王を庇う子犬ほどの大きさの白竜の存在など意に介したようも見せず、無慈悲に刃を振り下ろす


 それによってゼルの命は刈り取られ、ジェイドは完全な勝利を収める――はずだった。

「……っ!」

 ジェイドが今まさに剣を振り下ろそうとしたその瞬間、天を貫いて飛来した槍がその頭部を貫く寸前で至宝剣の一薙ぎによって破壊される

 至宝剣の一撃で破壊された槍の残骸に視線を落としたジェイドは、すぐさまその攻撃が放たれた方向へと視線を向ける

「キュウーーーッ!!」

 ジェイドの視線を追うように首を動かした子犬ほどの大きさをした至宝竜――「ザイア」は、そこに見慣れた二人の姿を認めて歓喜に満ちた声を上げる

「ヒナ・アルテア・ハーヴィンにシェリッヒ・ハーヴィンか……」

「今度は、私達が相手を致しましょう」

 今まさに父を殺そうとし、この世界に戦乱をもたらし、竜人をはじめとする多くの者に不幸をもたらした元凶たる人物を前に、とめどなく湧き上がってくる怒りを抑えたヒナは、静かな口調で言葉を紡ぐのと同時に召喚した槍を構え、隣に佇んでいたリッヒと共にジェイドに対峙する

「――まあいい、結局は同じ手間だ」

 静かな怒りをほとばしらせる二人の姫の視線と気の威圧もそよ風のように受け流し、ジェイドは至宝剣の刃を軽く振って天空に真紅の月を架けると、ヒナとリッヒ――二人の姫姉妹に明確な理性と殺意のこもった視線を向ける

「お姉様はお父様の許へ、私が時間を稼ぎます」

「……くれぐれも無理はしないでください」

 リッヒがその手に持つ英知と記憶の至宝――「至宝書・ファルシュ・メティウラ」の権能を解放し、もう一人の自分を作り出す


 先ほどの戦いでかなりの気を消耗してしまっている今のリッヒには、至宝書の力も十全には使いこなせず、記憶の複製(ダビング)もこれが限界だ。――もっとも、仮に万全の状態だったとしても今のジェイドには勝てないであろう事はリッヒ自身が一番よく分かっている

 それでも足止めを買って出たのは、ヒナに至宝を受け取る時間を稼がせるためだ。ヒナの実力は父――人間界王に次ぐほどだが、至宝を持っていない状態では勝ち目がない

 父が倒れた今、ジェイドを止められる可能性があるのは、次期人間界王たる「ヒナ・アルテア・ハーヴィン」を置いて他にはいないとリッヒは確信していた


「……はああっ!」

「愚かな。今の私を相手にその程度の力で足止めをしようとは」

 渾身の力を放出して向かってくる二人のリッヒを見て、ジェイドは嘲笑を浮かべる


「お父様、申し訳ありません……」

 リッヒの力ではジェイドを相手に長時間足止めをする事ができない事が分かっているヒナは、血の海に沈んでいる父を治療するという選択肢を苦渋の決断で破棄する。


 仮に今ここでゼルを治療しても、その傷を癒すにはかなりの時間を要してしまう。それでは父を助ける前にリッヒが命を落とす事になってしまうだろう

 ならば最善の手段は、至宝を受け取った自分がジェイドを足止めしている間にリッヒにゼルの治療を任せる事だとヒナは判断していた


「――分かっている、今はあいつを倒すのが先決だ」

 そんなヒナの心情を理解し、ゼルは険しい表情で頷いて見せる

「……はい。では、至宝槍(ラキスヴァイン)とザイアをお借りいたします」

「キュウッ!」

 ゼルの手から金色の輝く至宝の槍を受け取ったヒナが視線を向けると、それに応えるようにザイアが力強く咆哮し、天に舞い上がる

「待て」

 二つの至宝を手に流れるような所作で立ちあがったヒナを、ゼルの声が引き止める

「これを」

 ゼルは己が冠っていた王の証たる冠を外してヒナに差し出す

「……っ!」

 人間界において、人間界王が次期王に選ばれた者に至宝冠(アルテア)を渡すという行為は、王位の継承を意味する。

 至宝冠(アルテア)が次の後継者を選ぶ前にその後継者が不慮の事故で命を落とすような事態でも起こらない限り、一度王位を継承した王が王位に返り咲く事は無く、それはおそらくこの非常事態の中にあっても例外ではないだろう

「今の奴に対抗するには、至宝冠(これ)を使うほかない。本当はもう少し後に渡すつもりだったが、もはや選択の余地は無い」

 今まさに王位を継承する意志を示したゼルと、その目に宿った強い決意に、ヒナは思わず息を呑む


 いつかは、と思ってはいた。しかし、このような状況の中で、このように王位を継承する事になるとは予想だにしていなかったために、ヒナはどう反応していいのか分からず、戸惑いと困惑の表情を浮かべる

 何より、今ここで王位を継ぐという事は、今の人間界そしてこれからの人間界とそこに生きる全ての者の命を背負うという事。――この戦いの全ての命と結果を一身に背負うという事だ

 決してその覚悟がなかったわけではない。しかし現実に今その状況に直面し、王を継承して最初に行う事が人間界全ての命運を背負った戦いに赴く事である事を考えた時に、躊躇してしまうのも無理からぬ事だった


「ヒナ」

 そんなヒナの心情を理解しながらも、ゼルは強い意志の籠った声で娘の――次期人間界王の名を呼ぶ。


 ゼルとしても、こんな状態で王位を継承するのは不本意極まりない。しかし、おそらくこれから短時間で戦場に戻る事が不可能であろうと考えるゼルには、これが人間界を守る最善の手段であり、最も勝利の確率の高い選択だった


 こんな状況で、これほど残酷な選択を娘に迫らざるを得ない己の不甲斐なさを呪いながら、それでも王として父として、世界と未来のために、その全てを託す意志を厳かな声で紡ぎ上げる

「――お前に人間界の王を継承する」





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