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魔界闘神伝  作者: 和和和和
天界訪問編
68/305

貴族来城






 人間界城の貴賓室。そこに泊っている大貴、詩織、クロス、マリアの四人は、侍女として世話係をしているロンディーネと共に、朝の食後の一時をくつろいでいた――ただ一人を除いて

「……はぁ」

 ソファに腰掛けている大貴、クロス、マリアとは違い、室内を落ち着かない様子で歩き回っている詩織は時折ため息をついては、部屋の扉や窓の外に視線を送っている

「姉貴、そんなに心配しても仕方ないだろ? 俺達にはこうしてる事しかできないんだ」

 それを見かねた大貴が声をかけると、詩織は足を止め、双子の弟の視線から逃げるように自分のそれを逸らして消え入りそうな声で応じる

「キュ?」

 大貴の隣では、子犬ほどの小竜――至宝竜、ザイアローグが気持ち良さそうに横になっているのだが、小竜――ザイアは軽く片目を開けて詩織を見ると、興味がない様子で大貴に身をすり寄せる

「ごめん……分かってるんだけど、ね」

 大貴の言葉に自嘲気味に応じた詩織は、部屋の窓にそっと手をかけ外へと視線をずらす


 詩織の不安の原因はそこにいる誰もが分かっている。九世界非干渉世界への干渉の罪で魔界に囚われた神魔と桜の事――より具体的に言うならば、その判決によっては神魔と桜が極刑に処され、命を落としてしまうという事実だ。


 光魔神(大貴)の存在と人間界の口添えで処刑半分、労働奉仕半分という状況になってはいる。しかし会えない時間は、逆に詩織に神魔へ想いを馳せる事になり、その愛情を昂らせて自分自身ですら抑える事ができない感情を生みだす

 特にクロスやマリアと違い、九世界の知識や常識に乏しい詩織には、神魔達が連れて行かれた「魔界」という世界の名に込められた不吉な印象に不安を拭いきれない。


(……なるほど、光魔神様の仰っていた通りなのですね)

 その様子を見て、ロンディーネは目を細める


 一昨日、大貴と詩織と連れ立ってショッピングモールに買い物に行った経験があるロンディーネは、そこではしゃぐ詩織も、それを見た大貴の「無理して明るく振舞っている」という言葉も聞いている。

 こうして何もない静かな時間を過ごそうとすると、不安で押しつぶされてしまうのであろう詩織を一瞥し、ロンディーネは静かに思考を巡らせる


(道理で、界能(ヴェルトクロア)やバイタルにわずかな乱れがあると思いました……簡単な栄養剤を混ぜた食事を出しているとはいえ、あまり休めていない様ですね)

 身体をめぐる界能(ヴェルトクロア)は体調や、身体の悪い部分を如実に語ってくれる。ロンディーネの目には、無理をして平然とふるまっている詩織が受けている過剰なストレスによる心身の疲労を見逃していなかった。

 最初は、慣れない異世界に来た事によるストレスのようなものだと判断していたロンディーネは、さりげなく詩織の食事にこっそりを薬を混ぜて体調を管理していたのだが、このやり取りの中でその考えが間違いであった事に気づいていた。

(――さすがは(・・・・)ゆりかごの人間といったところですね。それとも人間のように(・・・・・・)、詩織さんだけなのでしょうか?)

 内心でそんな事を考えながら、ロンディーネが難しい表情を浮かべていると、大貴がため息混じりの声で詩織に話しかける

「あんまり無理しすぎるなよ?」

「……ごめん、ありがと」

 小さく目を伏せた詩織は、大貴の言葉に唇を引き結ぶ

 決して大貴が神魔達の事を心配していない訳ではないのは分かっている。自分に出来る事はヒナ達人間界の力を信じて、神魔と桜の減刑を信じる事しかない事も。――例えどちらの判決を受けても、二度と会えなくなるという事実が変わらないのだと分かっていても、それでも生きていてほしいと願う気持ちは変わらない。


 しかし、常に神魔の事を思い続けている詩織の胸中では、言い知れぬ不安だけが今にもその心を押し潰してしまうでのは無いかというほどに渦巻き続けていた。



                 ※



 長く続く廊下を三人の人物が足音を響かせながら歩いている。

 案内役とおぼしき一人の男の先導に従い、その後ろに続くのは男女の二人組。男は顔にタトゥーを刻みつけ、髪を逆立たせた青年。その隣を歩くのは、人形のような整った顔立ちに仮面のような無機質な表情を張り付けた女性。

「こちらです」

 案内役の男が扉を開き、その中を手で指し示す

 どうやら室内に入ってくるつもりがないらしい男の脇を通り抜けて二人が室内に入ると、その中に凛と佇んでいた麗人が、静かに目を伏せて一礼する

「ようこそおいで下さいました。ディートハルト様、リューネリア様。私は十世界に所属する『メリッサ』という者です」

「おほぉーっ、別嬪さ、ぷぎゃっ!!」

 二人を迎え入れた長いこげ茶色の髪を頭の後ろで束ねた女性――メリッサの姿に鼻の下を伸ばしたタトゥーの男、ディートハルトは、隣にいるリューネリアに足を踏みつけられて激痛に声を上げてその場でのたうちまわる

「……失礼しました」

「いえ」

 女性二人が無表情に視線を交わしているのを見て、涙目になりながら立ちあがったディートハルトがメリッサに訊ねる

「あんたがここのリーダーか?」

「いいえ。私達のリーダーは、すでに人間界王城へと出向いておられます」

「……へぇ」

 メリッサの言葉に声を漏らしたディートハルトを制し、リューネリアが一歩前で歩み出る

「十世界の理念など、私達にとっては関係ありません。私達は私達の目的のためにあなた達の計画を利用させてもらうだけです」

「構いませんよ。その方が後腐れがありませんから」

 リューネリアの言葉に事も無げに応じたメリッサは、「では、契約の通りに」とだけ述べて、ディートハルトの首根っこを掴んで引きずっていくリューネリアの背を見送りながら小さく笑みを浮かべる

「健気な子ね……」

「あなたほどじゃないでしょ、メリッサ?」

 小さく独白したメリッサの背後に、ツギハギだらけのぬいぐるみを抱えた小柄な少女が姿を現す。

「……セウ、ですか」

 その姿を見て目を細めたメリッサはそっと目を伏せて、あどけない少女の姿をしたセウに背を向ける


 セウは悪意を振り撒くものマリシウス・スキャッターと呼ばれる、円卓の神座№2「反逆神」の力に連なる存在(ユニット)全霊命(ファースト)であるセウは、外見こそあどけない少女だが、メリッサよりもはるかに長い年月を生きている。

 そしてその少女の外見こそ、彼女が「フラグメントユニット」としての自身の存在の特性を強く反映している者であるという事を、メリッサは十分に承知していた


「お疲れ様でした」

「気にしないで。グリフィス君の研究は、九世界の禁を犯すもの――生かしておいても十世界のためにならないもんね」

 メリッサの言葉を意図を正確に理解して、セウが満面の笑みで応じる

「……そうですね」

(白々しい事ですね……お互いに)

 純真無垢そのものといった笑みを浮かべたセウだが、メリッサはその表情をそのままの意味では受け止めていなかった


 確かに、グリフィスが行っていた非人道的行いは、「あまねく十方の世界の共存による恒久的平和」という十世界の理念に反するものだ。十世界の理念を重んじるガウルやメリッサにとって、自身の信念のために十世界(組織)を利用し、貶める行いは許せるものではなかった。

 しかし、セウがメリッサ達と同じ感情を持っているかと言われると、甚だ疑問で首をかしげざるを得ない。メリッサに言わせれば、悪意(セウ)はグリフィスを使って遊んで――否、自分の存在意義に従って弄んでいただけなのだから。


「……で? こうなって、あなたはどっちにつくの? ガウル君? それとも……」

 その時、背後のセウが満面の笑みを浮かべながらメリッサに訊ねる。

 その顔も、声も、心も確かに笑っている。好奇心から来るものではあろうが、セウは特に探りを入れたり、メリッサの心を見通そうとして訊ねてきているのではない。――しかし、その笑みにうすら寒いものを感じずにはいられない

「両方ですよ」

 セウの笑みに覚える不気味な感覚を噛み殺し、できるだけ平静を装ってメリッサは応える

「両方?」

「ええ。十世界のためにガウル様を支え、この命の限りあのお方(・・・・)に仕える……それが、私の生き方です」

 目の前の悪意に怯む事無く、メリッサは凛とした声音で自身の想いを告げる。

 ガウルは上司として、そして「その人物」には、一人の人間として最大級の尊敬と親愛を持って仕える――いわば、その二人は、職場と私事という二つの側面において、メリッサにとって重要な人物だった

「ふぅん……」

 メリッサの偽らざる本心に、セウは興味があるのかないのか分からない曖昧な答えを返す。

 というよりも、セウにとっては、メリッサがガウルにつこうが、あの人につこうが、興味はあっても、本質的にはどちらでもいいのだと理解しているメリッサは、念のために目の前に立っている無邪気な悪意へ鋭い視線と言葉を向ける

「今回は、くれぐれも邪魔をしないようにしてくださいね」

 釘を刺したメリッサに、セウは全く動じることなく笑みを浮かべる

「人聞きの悪い事を言わないで。グリフィス君を殺したのは、十世界のためにならないからだよ? あなた達なら、力を貸す事はあっても、邪魔をする事なんてないよ」

 全く真意の読めない無垢な笑みを浮かべているセウを見て、これ以上の議論は無駄だと判断したメリッサは諦めたように息を突く

「……なら、いいんですがね」

 そう言い残して身を翻したメリッサの背を見送りながら、セウはくすくすと小さな笑みを浮かべる

「ホントに邪魔はしない(・・・・・・)よ?」

 意味深な言葉をその背に向けたセウは、その口を三日月形に吊り上げ、無邪気で純粋な悪意に満ちた笑みを浮かべる

「フフ、楽しみだなぁ」

 そう呟いたセウの影が揺らぎ、その足元から漆黒の塊が湧きあがる。

 セウの影から現れたそれ(・・)は、ゆらゆらと蠢く不気味な影を通路に映し出していた



                 ※



 人間界城の裏手にあるドック。天を駆ける戦艦が着艦するその場所は、現在大小さまざまな戦艦によって埋め尽くされている

「またこれは、凄いわね」

 ドック内に、所狭しと並んだ戦艦を見て、人間界軍所属、オールド級戦艦・テスタロッサ艦長、クーロン・ラインヴェーゼは感嘆の声を漏らす。


 人間界王城の中のドックは、世界最大規格の艦「ドメイン級」戦艦すら何百隻も止める事が出来るほどに広い。長い間ここで働いているクーロンですら、ドックがいっぱいなってこれ以上入れないという状態になったのを見たのは初めてだ。

 ここに停まっている戦艦の乗員たちの目的が、光魔神である事を知っているクーロンは、「それも当然の事か」と内心で納得しつつ、何も全員が戦艦だけで来ている訳ではない事に思い至り、さらに感嘆の声を漏らす


「ええ、既に七大貴族の長達は、夜の王族(サングライル)を除いて全員集まっています」

 思わず感嘆の声を漏らしたクーロンに、隣を歩いていた部下らしき軍服を纏った男性がその言葉に応える

「全員……『レイヴァーも』?」

「はい」

 思わず目を丸くしたクーロンは、自嘲のようにも感じられる笑みを浮かべる

「まったく……さすがとしか言いようがないわね。我らが神は」

 部下にも聞こえない程の小さな声で呟いたクーロンは、今現在この城に滞在し、図らずも世界を動かす中心となっている人間の神――光魔神へと思考を馳せた



                 ※



 丁度その頃、人間界城謁見の間では、玉座に座った人間界王、ゼル・アルテア・ハーヴィン、その両側には人間界王妃、フェイア・ハーヴィンと人間界王女にして、次期人間界王、ヒナ・アルテア・ハーヴィン。そしてヒナの隣には、その実妹であるシェリッヒ・ハーヴィンが立っている。

 その一段下にいるのは、人間界特別戦力、六帝将(ケーニッヒ)の六人。そして(ハーヴィン)の名を冠す、「王名十三家」の中から選ばれた者と、人間界を運営する重鎮たちと人間界を守護する騎士の長達だ

「よく来てくれた」

 人間界王、ゼル・アルテア・ハーヴィンは、玉座の下で形式的に跪いている六人の男女に、威厳に満ちた声を向ける。


 今、玉座の間にいるのは、七大貴族の長と呼ばれる者達。――実力によって選ばれる「七大貴族」は、エクレールとギルフォードのように、たとえ親兄弟でも同じ姓を与えられるとは限らない。

 しかし、同じ貴族姓を冠した者達には、あってないような序列が存在し、それぞれの「名」を持つ貴族達を実質的に束ねるリーダーのような人物がいる。――それが「長」と呼ばれる者達だ



 金色の髪を獅子のように逆立たせた精悍な顔立ちの男性は、「アークハート」の長、『グラセウス・アークハート』。


 夜色のドレスを身に纏い、モーニングヴェールのような布で顔を隠し、鮮やかな真紅の紅に彩られた口元だけを見せている女性は、「虹彩(ツァイホン)」の長、『(ユイ)虹彩(ツァイホン)』。


 陣羽織のような衣装を身に纏った精悍な顔つきの男性は、「天宗(たかむね)」の長、『天宗(たかむね)(いつき)』。


 胸元の大きく開いたナイトドレスに身を包み、小さな花をあしらったつばの広い帽子と純白の毛皮のようなショールを羽織った見目麗しい美女は、「トリステーゼ」の長、『クリスティナ・トリステーゼ』。


 がっしりとした体躯に、漆黒の髪と口ひげをたたえ、マントを翻らせる大男は、「グランヴィア」の長、『アドルド・グランヴィア』。


 そして、腰まで届く金色の髪に、足元まで届くコート。そして額と首の付け根、手の甲に宝石を埋め込んだ美男子は、「レイヴァー」の長、『レイヴァー・ブレイゼル』。



「人間界を統べる七大貴族の代表格が一堂に会したのは、実に久しぶりの事だ。卿君らとこの場で会えた事を嬉しく思う」

「それは光栄です、とはいえ、我々はあなたに会いに来た訳でもないのですが」

 七大貴族の長達を見回した人間界王――ゼルの言葉に、レイヴァー・ブレイゼルが丁寧な応対をしながらもわずかに毒づく

「言い返せないのが辛いところだな」

「心にもない事を」

 大貴や詩織がこの場にいれば、「不敬罪にでもなるんじゃ?」という様な言葉を軽々しく口にしたレイヴァーの長を、ゼルは意に介した様子もなく寛大に受け入れる。

 その場にいる誰も意に介した様子も、動じた様子もない。ブレイゼルの言葉に全く問題がないという訳ではないが、レイヴァーは特別(・・・・・・・・)だという事を知っている他の貴族たちは沈黙を貫く

「さて、明日の催しの前に皆に集まってもらったのは他でもない。皆も気になっているであろう昨日の事件の詳細の説明と、簡単な話をさせてもらいたいからだ」

 そこにいる六人の長達を見回して、ゼルは静かに言葉を続けた



                 ※



 そしてその頃、人間界城の裏門では眼帯が特徴の魔道人形(マキナ)――「パセル」が一人の男を出迎えていた。

 明日の催しに招かれている貴族たちは、人間界城へ入るための三つの入り口、「空」「門」「裏門」のいずれかにやってくる。そのため人間界城に仕える魔道人形(マキナ)達は、その三か所に分かれて貴族たちを出迎えている

「ようこそおいで下さいました、『ガウル・トリステーゼ』様」

 パセルが頭を下げた先にいるのは、日に焼けた浅黒い肌が印象的な屈強な身体つき、それを惜しげもなく見せつける上半身裸の上にコートのような衣を纏った大男――七大貴族の一人、「ガウル・トリステーゼ」だ。

「ああ」

「こちらが、ガウル様の宿泊場所と、明日の予定です」

 恭しく頭を垂れたパセルは、ガウルの装霊機(グリモア)へと必要な情報を提供する

 パセルがガウルに渡した情報には、明日の催しの間、ガウルに割り振られた部屋の番号と鍵、そして簡単な日程が記されたデータだ

「何かご不明な点がございましたら、何なりとお申し付けください」

「ああ」

 礼儀正しく頭を下げたパセルに簡潔に応じ、ガウルは人間界城へ向かって歩を進める。


 見渡す限りに広がっている巨大な人間界城は、そもそも徒歩で歩いていては、端から端まで移動するのに年単位で掛かりかねないほど広大な面積を誇っている。


 そのため、人間界城の移動の基本は各所に設けられた転移装置(ポータル)による移動にある。手近に設置された転移装置(ポータル)へと向かうガウルは、横に広いだけでなく、天を貫かんばかりに高くそびえ立っている城を見上げて、その目をわずかに細める

「――手筈は整っているな」

《はい、滞りなく》

 耳のいい魔道人形(マキナ)から十分な距離を取ったガウルは、装霊機(グリモア)の通信を本部に遺してきたメリッサに接続し、誰にも聞こえないような小さな声で話しかける

「十世界の――姫のためだ。ここに安置されている神器(しんき)は貰い受けていく」

 傍から見れば、小さな小さな独白に過ぎないその言葉は、誰に耳に届く事もなく、転移装置(ポータル)によって移動したガウルの姿と共にかき消されるのだった。



                 ※



「わぁ……」

 思わずため息をついた詩織に、その隣に立っているロンディーネが穏やかに微笑む

「明日のドレスは、こちらで貸し出しますのでお好きなものを選んでください」

「ありがとうございます」

 その言葉に、詩織は深々と頭を下げる


 今、詩織とロンディーネ、そしてそれに付き合わされた大貴が来ているのは、王城内に設けられたドレスルームの一室。そこには所狭しと鮮やかなドレスや着物が並んでおり、ここではそのパーティドレスのデータを一時的に借り受ける事が出来る。

 人間界の衣装は、装霊機(グリモア)に情報として蓄積され、それが本人の体型に合わせて最適化された状態で身体に密着するように作られている。つまり「データ」とは、衣装の形状を変化させる際の設計図のようなものだ


 詩織にとっては意外だったが、人間界では貴族と呼ばれる人々でも、滅多にパーティに参加せず、戦闘用や生活用の衣装しか持っていない者がそれなりにいるらしい。

 ここでは、そういった衣装のデータを貸し出しており、そのデータは装霊機(グリモア)に入力されてから一定期間が過ぎると自動的に消去される仕組みになっている。


「まあ、いくらお金がなくても生活できるとはいえ、服のデザインにはデザイナーの方の努力がありますからね。例え物資が無限で情報として衣装を奪着出来るとしても、そこには最低限の礼儀が必要です」

「……なるほど」

 「なんで期限付きなんですか?」という問いに答えたロンディーネの言葉に、詩織は納得した様子で頷く

「なんで俺まで……」

「いいじゃない、別に。どうせ暇だったんでしょ?」

 半ば強引に連れてこられた事に、不満と抗議を口にする大貴を、詩織はその一言で封殺する。


 幼い頃から、大貴はなんだかんだと言いながらも自分に付き合ってくれる事を詩織は知っている。他の家では自分達位の歳になると、兄弟でも必要最小限の接触しかしなくなると聞いているが、そういった感覚は詩織にはない。


「……ったく」

 そしていつものように、妥協してくれる大貴を見た詩織は、どこか寂しそうな感情が見え隠れする笑みを向ける

「そうそう。その内ヒナさんに取られちゃうんだから、今のうちくらいお姉ちゃんに付き合うの」

「……からかうな」

 詩織の言葉に、大貴は目に見えて頬を染めながらも、照れ隠しに視線を逸らす

「あら、珍しい人がいるわね」

 その時、澄み切った清流のような声音が二人の耳に届く

「……エクレールさ……エクレール」

 その声の方へと視線を向けた大貴は、そこに立っている黒髪の麗人――エクレール・トリステーゼの姿を見止める。

 ちなみに、エクレールさんと言いかけたのをエクレールと言いなおしたのは、当の本人が大貴がさん付で名を呼ぼうとした瞬間、氷柱のように鋭く、冷たい視線を威圧を放ってきたからだ

「あなたもドレスを借りにきたの?」

 大貴の言葉に満足気に笑みを浮かべたエクレールは、そのまま視線を大貴と詩織、ロンディーネの三人に向ける

「はい。……そういえばエクレールさんは、昨日からお城に泊っていたんですよね」

「ええ。今日来ても、昨日来ても同じだから」

 ふと思いついたように言った詩織に、エクレールは微笑を浮かべる


 昨日の舞戦祭(カーニバル)襲撃事件が収束した後、事情聴取と情報提供を受けた「エクレール・トリステーゼ」、「ジェイド・グランヴィア」、「ギルフォード・アークハート」、「天宗(たかむね)(まゆみ)」は、明日のパーティへ参加するためにそのまま人間界城に滞在している


「丁度良かったわ。折角だから明日のドレス、あなたに選んで貰おうかしら」

「……は?」

 ふと思いついた様に言うエクレールに、大貴は思わず素っ頓狂な声を漏らす

 何でそうなるといった様子の表情を浮かべる大貴に、エクレールはその凛とした表情を微塵も崩さず、口元に微笑を刻む

「何もおかしなことはないでしょう? 元々私は、こういう場に出るのがあまり好きじゃないのよ。ファッションもあまり興味がないから、何を着ればいいのか分からないの。……なら、明日の主役の好みに合わせるのも悪くないでしょう?」

「あ、やめておいた方がいいですよ? 大貴ってそういう感性ちょっと変ですから」

 エクレールの言葉に、詩織が手を「ないない」と振りながら苦笑混じりに割り込む


 詩織にとって、エクレールは舞戦祭(カーニバル)の食事の席で相席し、何度か軽く言葉を交わした程度の仲に過ぎない。

 それでもやはり大貴が神である事を知っているからなのか、或いは命を懸けた戦った仲だからなのか、大貴に対して、エクレールが他の人に向けるものとは明らかに違う興味を示している事に詩織は気づいている。

 しかしそれは当人たちの問題で、自分が口をはさむ事ではない。そのため詩織の言葉は、大貴とヒナの関係に割って入るかもしれないエクレールを遠ざけるというよりも、経験による素直な忠告という意味合いが強い


「そうなの?」

「ええ、経験済みです」

 大貴を見て、意外そうに目を丸くしているエクレールに詩織は苦笑しながら返す

 その言葉に一瞬逡巡していたエクレールは、いくら大貴が選んだものでも大勢の人間の前であまり突飛な格好をしたくないと考えたのか、詩織に視線へと移す

「そう、じゃあ一緒に選びましょうか?」

「いいんですか?」

「ええ」

 エクレールと連れ立って室内へ入っていく詩織を、大貴とロンディーネが見送る

「……あなたが光魔神様ですか?」

 不意に背後から聞こえてきた声に振り返った二人の目に、そこにいた三人の男女を見止める

 しかし、その姿を見た二人の反応は全く違うものだった。大貴はただ見た事もない人物にキョトンとし、ロンディーネはその人物が誰なのかを知っているが故に、思わず目を瞠る

「っ!」

(レイヴァー……レイヴァー・ブレイゼル様……!)

 そこにいたのは、腰まで届く金色の髪を持つ美青年。額と首の付け根や手の甲など、身体の各部に宝石のようなものを埋め込んでいるその人物――七大貴族の一角、レイヴァーの長「レイヴァー・ブレイゼル」。そしてその背後に控えているのは、レイヴァーが連れてきた供の女性二人だ。

「えっと……」

 ロンディーネとは違い、目の前にいる人物が誰なのか知らない大貴が、困惑気味に声を漏らすと、それを察した金髪の男は胸に手を当てて、深々と頭を下げながら跪く

「お初にお目にかかります。私の名は、『レイヴァー・ブレイゼル』と申します」

「いや、ちょっ……」

(レイヴァーって、確か七大貴族だったよな?……でも、こいつ本当に七大貴族か(・・・・・・・・)?)

 「レイヴァー」が七大貴族の一角である事は覚えていた大貴だが、目の前で仰々しく膝を折られると、戸惑いと困惑を隠せない

「お会いできて光栄です。我らが神よ」

 そんな大貴の様子など意に介した様子もなく、ブレイゼルは、最上級の敬愛と信仰の念を込めた視線を大貴へと向ける

「とりあえず、その大袈裟なのはやめてください」

 ブレイゼルと、それに倣って跪く二人の女性に視線を送り、動揺と困惑の声を上げる大貴の言葉に従い、三人は素直に立ちあがる

「それは失礼いたしました。王から神は、敬われるのが苦手だと窺っていたのですが、私のあふれ出る敬愛の念が、自然にこのような事をさせてしまったようです」

「……っ」

 立ちあがったブレイゼルの敬意に満ちた言葉に、大貴は思わず内心で渋い表情を浮かべる

「本来でしたら、もっとあなたと親睦を深めさせていただきたいところなのですが、王よりあなたが先日の戦いでお疲れだと伺っておりますので、今日の所はご挨拶だけという事で」

「あ、どうも……」

「光魔神様は謙虚な方なのですね。そのような話し方をされずともよいものを……あなたこそがこの人間界で――否、九世界の頂点なのですから」

 軽く頭を下げた大貴に、ブレイゼルは目元を綻ばせて微笑む


 光魔神は人間界の人間の創造主であると同時に、最強の異端神「円卓の神座」の№1。その力は、世界を創造した真の神が居なくなったこの世界で最強の力を持っている。


「ハハ……」

 ブレイゼルの言葉に返す答えに困った大貴は、乾いた笑みを浮かべてそれをやり過ごす


 突然、何の前触れもなく光魔神(この力)を手に入れた大貴にとって、九世界の中における光魔神という存在は、どこか他人事のように感じられるものでしかない。

 この力を毛嫌いしているという訳ではないが、この力が原因で様々な厄介事に巻き込まれているのも事実。神魔やクロス達と出会えた事を差し引いても諸手を挙げて喜べないのが本心だ


「では、本日は存分にお身体をいたわってください」

 そう言って軽く頭を下げたブレイゼルは、供の女性二人を伴ってその場から立ち去っていく


「……なあ、ロンディーネ」

「はい」

 ブレイゼル達三人の姿を険しい表情で見送っていた大貴は、三人の距離がある程度離れた所で隣に佇んでいるロンディーネに問いかける

「あいつ、本当に七大貴族か? ……どう見てもあいつの気の強さ、王族(ハーヴィン)級だぞ?」

 大貴が疑問に思ったのは、ブレイゼルの気の大きさと強さだ。昨日の舞戦祭(カーニバル)で何人か七大貴族に会っている大貴には、ブレイゼルが放っている気の大きさが、七大貴族よりもこの城にいる王族など、ハーヴィンの名を持つ者のそれと同等以上だと知覚していた

「はい。七大貴族の一角、『レイヴァー』は、実はあの方――『レイヴァー・ブレイゼル』様御一人しか存在しない(・・・・・・・・・・)貴族姓なのです」

 大貴の疑問に、ロンディーネは恭しく答える

「一人だけ……?」

 予想外の事実を聞いて思わず問い返してしまった大貴に、ロンディーネは静かに首を縦に振る

「はい。元々、人間界が出来た当初、大貴族は『アークハート』、『グランヴィア』、『トリステーゼ』、『天宗(たかむね)』、『虹彩(ツァイホン)』の五つだけでした。

 そこに王族と袂を別った『レイヴァー・ブレイゼル』――旧名『ブレイゼル・ハーヴィン』が七大貴族として加えられたのです」

 大貴の疑問を肯定して、ロンディーネが「レイヴァー」について簡潔な説明をする。

「ブレイゼル……ハーヴィン!?」

 ロンディーネの口から語られた衝撃の事実に、大貴は思わず声を詰まらせる

「はい。彼は人間界で最も古くから生きている人間で、現在は『神仰教会(ルリジオン)』という神を崇め奉る組織の教祖を務められています」

「宗教か……面倒くさそうだな」

 ロンディーネの説明に、大貴は渋い表情を浮かべる

 神を信仰しているという事は、人間の神である光魔神(自分)に対して、崇拝の念を抱いているという事だ。そう考えれば、先ほどの過剰な態度も説明がつく

 しかし、強い宗教概念が法律よりも厄介なものである事を、知識としてだが知っている大貴は、今後のレイヴァーとの関係に一抹の不安を覚える

「そうでもありませんよ? 何と言っても、本物の神を目の前にしているのですから。――王よりも、神に忠誠を誓った者達程度の認識で十分かと」

「ああ、なるほど……まあ、そうなるよな」

 そんな大貴の様子を見透かしたかのように言うロンディーネに、大貴は小さな声で納得する


 地球のような場所で、宗教が厄介なのは、神が目に見えないからだ。ただ人の心の中にしかいない存在だからこそ、人は神に近づこうと教えを説き、戒律を設け、悟りを開こうとする。

 しかし、九世界は違う。この間まで死んでいたが、九世界を創造し、人間を創造した神が確かに目の前や、知識の中に存在しているのだ。

 光と闇の神、異端神――どんな神を信仰しているかはそれぞれだが、九世界の交流を持つ世界の宗教は、単に世界国家よりも、信じる神の下で生きたいと願う者達の集まりに近い。


「レイヴァー・ブレイゼル様は、かつて先の光魔神様が御存命の頃から生きている最古の人間。その身を禁忌の技術で不老とし、人間でありながら、唯一寿命を持たないお方でもあります」

「……不老って、そんなことできるのか?」

 思わず目を丸くした大貴に、ロンディーネは困惑した笑みを向ける

「人間を不老にする手段はいくつかございます。身体を機械化するなどが主なところですが、原則として禁忌の技術である事、そのほとんどの手段が、寿命の代わりに強さを失ってしまうなどの代償を孕んでいるため、滅多に使われません。

 中でもブレイゼル様が用いた手段は、唯一力を損なう事無く、不老の存在になる事が出来る禁忌の技術です。もっとも、王族(ハーヴィン)級の力がなければ不可能な手段なのですが」


 レイヴァー・ブレイゼルは、おそらく人間界で最初に禁忌を踏み越えた者だ。

 その身を禁忌の技術によって、老いでは死なない身体へと作り変えた、現存する最古の王族(ハーヴィン)。それが「レイヴァー・ブレイゼル」――否、「ブレイゼル・ハーヴィン」。

 それ故に、レイヴァー……レイヴァー・ブレイゼルだけは、七大貴族の中でも別格。ある意味、王とすら対等以上に接する事が出来る存在でもある。


「ブレイゼル様は、光魔神様に心酔しておられます。故に光魔神様が反逆神に滅ぼされてからは、人間界王と決別して、光魔神様をはじめとする神々を信仰する、『神仰教会(ルリジオン)』をお作りになられたのです」

 そう言ってロンディーネは、去っていくブレイゼルの背を複雑な表情で見送る。


 ブレイゼルが禁忌を犯したのは、崇拝し、敬愛してやまない当時の光魔神の下に永遠にあり続けるため。そのために、生と死の禁忌と倫理を踏みにじって不老の存在へとなり変わったのだ。


「ただ、そういう経緯もあって、ブレイゼル様と人間界王族はあまりよい関係ではないのです。ですが、光魔神様のお力でその関係も修復できるのではないかと期待されているのですよ」

 廊下からブレイゼル達の姿が消えたのを確認したロンディーネは、隣にいる大貴に視線を向けて微笑む。


 神にしか敬意を払わず、時に王すら軽視するレイヴァーは、人間界の者から見れば、厄介な存在でしかない。しかし、その圧倒的な力と神仰教会(ルリジオン)の組織力には、侮れないものがあり、いかに人間界軍といえど下手に事を構える事が出来ない。


 そういう意味において、光魔神が現れたのは、まさに渡りに船だった。十世界を利用して半霊命(ネクスト)全霊命(ファースト)混濁者(マドラス)を生物兵器として利用しようとする集団の牽制はもちろん、上手くいけば、目の上のたんこぶだったレイヴァー・ブレイゼルを御する事ができるようになる可能性も秘めているからだ。


「……マジ?」

「はい。期待しておりますよ、光魔神様」

 それを聞いて思わず表情をしかめた大貴に、ロンディーネは無条件の信頼を込めた笑みを向けて微笑みかける

「お待たせ、大貴」

 そうしてロンディーネと向かい合っていると、ドレスを選び終わった詩織がエクレールと共に戻ってくる

 二人の姿は私服のままでドレスを纏っている様子はない。装霊機(グリモア)で瞬時に着替えが出来るため、私服である事に疑問は無いが、姉の性格からして見せびらかしてくるかと思っていた大貴は、拍子抜けしたような、安堵したような感覚を覚えつつ、いつものように答える

「何だ、随分早かったな」

「まあね。私達のドレス姿は明日のお楽しみよ」

「……そうか」

(まあ、姉貴のドレス姿なんて別に興味ないんだけどな……)

 満面の笑みを浮かべる詩織を見て、大貴は内心でため息をつきつつも、それを表に出さずに、当たり障りのない答えを返す

 その様子を見ていたエクレールは、ゆっくりと大貴の近くへ歩み寄ると、人形のように整ったその凛々しい顔に微笑を浮かべる

「では明日、楽しみにしているわ」

「……お手柔らかに頼むよ」

「約束はできないわ」

 大貴に不敵な笑みを残して歩き去っていくエクレールを見ていた詩織がふと窓の外へ視線を向けた瞬間、不意に目に飛び込んできた光景に思わず声を上げる

「ちょっ、何あれ!?」

 思わず声を上げてしまった詩織につられて窓の外に視線を向けると、そこには蛇のような体躯に、蝙蝠のような翼をもち、白色の強い金色の鬣をなびかせる巨大な竜が今まさに天空を泳ぐように飛翔しているところだった

「……さっきからやたらデカイものが知覚に引っ掛かってたと思ったら、あれか」

「お気づきでしたか。まあ、あなたならあれだけ大きな力を持った存在なら気付きますよね……あれは、サングライルに仕える最高位の古竜、『メザノッテ』です。半霊命(ネクスト)最強の竜族(ドラゴン)特異体(ユニーク)で、極めて強力な力を持っています」


 ロンディーネの説明に耳を傾けながら、巨大な竜――「メザノッテ」に視線を向けていた詩織は、その竜の周囲に小さな何かが浮いているのを見止める。

 とはいえ、元々古竜(メザノッテ)の大きさが尋常ではないため、その小さな何かも、よく目を凝らして見ると、人間と同程度の大きさである事が遠目にも分かるだろう。

 古竜(メザノッテ)の周囲を飛んでいるのは、手が鳥の翼のようになっている亜人(サングライル)で、その姿は「ハーピー」と呼ばれる空想上の動物の姿に似ているが、実際は鳥系幻獣の亜人だ。


「サングライルって、事は明日の?」

 その言葉に視線を向けた大貴に、ロンディーネは肯定の意を示す

「はい。あれに乗っておられるのは、夜の王族最強を誇る二大巨頭――『ゼクス・サングライル』様と『ヴァルガ・サングライル』様です。」

「……本当だ、あの大きな竜の背中、なにか家? みたいなのが乗ってる……」

 ロンディーネの言葉に、天空を舞う巨大な古竜を見ていた詩織は、その竜の背に人工の物体が乗っているのを見て、感嘆の声を漏らす

「……夜の王族の王か……」



                ※



 その巨体に備えた四つの足で、蛇のような巨躯を綺麗に王城の一角に着地させた古竜(メザノッテ)の背から、二つの影が地に降り立つ

「ようこそ、お越しくださいました、ゼクス・サングライル様、ヴァルガ・サングライル様」

 その二人を、魔道人形(マキナ)の侍女、ヴァローナが深々と頭を下げて出迎える


 竜の背から降り立ったのは、いずれも長身の男。漆黒のマントのような衣を纏った、女性と見紛うばかりの白髪の美青年と、白を基調としたタキシードのような衣装を纏った黒髪の男。

 白髪の方が「ゼクス・サングライル」、黒髪の方が「ヴァルガ・サングライル」。この二人こそ、夜の王族と呼ばれる亜人(サングライル)を統べる最強の亜人達だ。



                  ※



「大貴さん!」

 その頃、ヒナが血相を変えて大貴の許へと駆けよってくる。

 普段の様子をかけ離れたヒナの様子に怪訝そうに目を細めた大貴の前で立ち止まったヒナは、戸惑いがちに視線を彷徨わせる

「……ヒナ?」

 さすがに、何かを言い澱んでいるようなヒナの様子を見れば、何かあったのだと容易に想像がつく

 急かしたり、責めたりする事がないよう、できるだけ優しく問いかけた大貴の言葉に、逡巡していた様子のヒナは、意を決したように、強く引き結んでいた唇を開く

「……申し訳ございません」

「……?」

 絞り出すような声で紡がれたヒナの謝罪の意図を掴めず、大貴と詩織は顔を見合わせてから揃って疑問の視線を向ける

「先ほど、魔界から連絡を受けました」

「……っ」

 ヒナが紡いだその言葉に、大貴と詩織が目を見開く

 その言葉に、大貴と詩織が身体を強張らせる。ヒナの様子、その言葉から二人の脳裏に最悪の結果がよぎる。

「――お二人の極刑が決定されたそうです」

「……っ!!」

 そして、その悪い予感を裏切る事無くヒナの口から語られた最悪の結末に、まるで時が止まったかのような静寂が流れた






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