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魔界闘神伝  作者: 和和和和
妖精界編
126/305

世界に響く警告






 天を映した鏡の大地にそびえたつ妖精界王城の中の一室――会議室のように広い応接室とも取れる室内に招き入れられた大貴、神魔、クロス、詩織、桜、マリア、瑞希、リリーナ、アイリスは椅子に腰かけて、対面する位置から自分たちに視線を送っている女性を見る

 大貴たちの視線を受けた蝶翅を持つ、黄昏と暁の輝きを内包した白髪の女性は、一同を見回してから穏やかな声音で微笑みかける

「では、改めまして自己紹介させていただきますね。私が妖精界王・アスティナです」

 この妖精界を総べる全霊命(ファースト)――精霊の原在(アンセスター)の一人。日輪の精霊王である妖精界王アスティナは、その存在を表すにふさわしい陽光を思わせる優しく温かな笑みを浮かべると、自身の隣に立っている水色の髪の精霊を自身の手で指し示す

「そしてこちらは、私の夫『グレイシア』」

 アスティナに夫と紹介されたグレイシアは、水色の逆立った髪を背の中ほどまで伸ばした美丈夫。全霊命(ファースト)特有の整った顔立ちは、細身でありながら力強さを併せ持ち、青年のような容貌にどこまでも澄み切った清水を思わせる静けさを宿してそこに佇んでいる

 その背から生える精霊特有の翅は蜻蛉を思わせる半透明の四枚翅であり、その出自が「湖の精霊」であることを物語っている

「どうも」

 自身の妻でもある妖精界王アフィリアから紹介を受けたグレイシアが軽く合図をすると、アフィリアを挟んで反対側に立っていた背の高い男性が口を開く

「私は『カリオス』。妖精界王様の護衛を務めている。そこにいるアイリスの父だ」

 自らをアイリスの父と名乗った「カリオス」は、その背に乳白色の蝶翅を持つ日輪の精霊。金色の髪を逆立て、額に十字架を思わせる装飾を有している

 白いコートを思わせる霊衣を纏ったカリオスが名乗ると、その言葉の真偽を問うように大貴がアイリスに視線を向け、すぐさま肯定の意志が込められた反応によって返される

「同じく、妖精界王様護衛の『メイベル』です」

 カリオスの言葉に続いた蝶翅をもつ日輪の精霊「メイベル」は、アスティナと比肩しても見劣りしない美貌を持つ女性だが、陽光のような笑みを浮かべる妖精界王とは異なる清水のような存在感と微笑を浮かべてる

 礼装にも似た白の霊衣を纏い、腰まで届く薄明色の髪を揺らすメイベルが目礼すると一通り挨拶が済んだのを確認した瑞希は、自分たちの自己紹介に移る

「わざわざありがとうございます。私は魔界王様の命により、不肖の身ではありますが光魔神様を引率させていただいております、瑞希と申す者です」

「光魔神・大貴です」

 瑞希に視線で促され、大貴が挨拶したのを皮切りに、この妖精界が光の世界であることを配慮し、クロス、マリア、神魔、桜、詩織の順で挨拶をし、事前にそれを済ませているリリーナはそのやり取りを微笑みを浮かべて見守っていた

「わざわざありがとうございます」

 リリーナとアイリスを除く全員の挨拶を受けた妖精界王・アスティナは、目を伏せて軽く感謝の言葉を述べると、席についている来界の客たちに視線を向けて穏やかな声音で言葉を続ける

「早速ではありますが、皆様の来界の目的は、我々も存じております。しかしながら、これまでの世界がどうであったかは存じませんが、先ほどご覧いただいたように、この世界の十世界はニルベスの統治の下、緊張状態にあっても、敵対するような直接的な行動へは未だに移っておりません」」

 その視線を大貴から、引率の係りにあるという瑞希、そして初の光の世界への来界ということで、補佐的な役割を果たすために、世界的な知名度と人気を誇っているという理由から遣わされている歌姫・リリーナへと視線を移しながら、アスティナは静かな声音で語りかける


 大貴が世界を回っている理由が、現在の世界における最強の存在である光魔神を十世界と敵対させ、九世界と関係を深めさせることにあることを知っているアスティナは、すでにその当人である大貴が"その理由"を知らないという意識の下、明言を避けながらこの世界の状態を簡潔に説明する

 いかようにも解釈可能な言い回しを以って、来界の目的を把握していることを伝えたアスティナだが、この世界にいる十世界は、その総督であるニルベスを筆頭にして実によく統制がとられており、関係は良好とは言えないが、直接的な戦闘を行ったことは未だない


「確かに、中には行儀の悪い者もおりますが、ニルベスを筆頭としたこの世界の十世界は実に温和なもので、皆様のご期待には添うのは難しいでしょう」

 紅蓮を筆頭に、これまでの世界で遭遇してきたような十世界を隠れ蓑にして自分の目的を果たそうとするような輩がほとんどなく、奏姫――愛梨の、そして何よりも十世界の理念と理想を重んじる妖精界の十世界が相手では、特に「十世界と敵対させる」という行動は取らせにくい――そういう趣旨の言葉を以って締めくくったアスティナに、瑞希は小さく頷いて同意を示す

「……そうですね。無理にこちらから戦いを仕掛けるということもないでしょう」

「ああ」

 瑞希の視線を受けた大貴は、それに同意を示すように頷く


 九世界側としては、光魔神と十世界には敵対してもらいたいという腹がある。本心では、十世界に攻め込んで敵対行動をとってもらってもいいくらいの考えはあるが、それを強制し九世界(自分達)の心証が悪くなるのはそれ以上に避けたいこと。

 元々前の妖界での成果ができすぎだったのだ。今回は、こういうことも在るだろうと割り切り、せめて九世界に対する心証の維持と向上を心掛けるべきだろうと、瑞希は内心で判断してその意図を無言で周囲に提示する


「ということですので、皆様にはゆっくりとこの世界を楽しんでしていただこうかと考えております」

 瑞希の言葉の裏に隠れた真意を正確に汲み取っているアスティナがこの世界の方針を示した時、不意に大貴がゆっくりと手を上げる

「いい、ですか?」

「ええ。それと、気楽に話していただいて結構ですよ」

 明らかに敬語を使い慣れていない大貴のぎこちない言葉遣いに微笑みを向けたアスティナが言うと、それを受けた光魔神は、自分の拙い言葉遣いを打ち消すように、小さく咳払いをする

 その小さな間で場を仕切り直した大貴は、真摯な眼差しをアスティナに向けて自身の中にある思いを神妙な面持ちで口にする

「もしよかったら、月の精霊に会ってみたい」

「――!」

 その大貴の言葉に、アスティナ達妖精界の代表はもちろん、神魔たち同行者も大なり小なり驚きを露にした表情で視線を向ける


 月の精霊――月天の精霊達は、この妖精界の中で微妙な立場であることは、少し前にリリーナから聞いて知っている。

 本来は干渉するべきではないような世界の内面の問題に対して興味と、その瞳の中に宿る積極的な干渉の意志を感じ取った一同は、光魔神(大貴)でなければ大きな問題になっていたであろう発言に無意識に表情をわずかに強張らせていた


 その大貴の言葉に返されたのは、一瞬の沈黙。そしてそれに伴い、この場をまるで鉄が溶けこんでいるのではないかと思えるほど重みのある空気が支配する

(大貴、一体どういうつもり?)

 知らなかったとはいえ、好奇心から不用意な発言をしたばかりの詩織はその真意を掴みあぐねて怪訝そうな視線を大貴へと向ける


 良くも悪くも積極的に人と関わるよりも、受動的に関わることの方が多い大貴の性格を考えればこの場は「部外者の自分たちが口を出すことではない」という方がしっくりくる。

 少なくとも生まれてから大貴とずっと暮らしてきた詩織の記憶に、親しい間柄でも友人でもない人物のために積極的に干渉したということはない

 心変わりをしたと言われればそれまでだが、その理由も原因も分からない詩織にとっては、そんな大貴の姿は不可解そのものだった


「構いませんよ」

 大貴の言葉によって一瞬重苦しい空気を生じさせた妖精界勢だったが、それを打ち消すようにアスティナが穏やかな声で微笑む

「その様子ではもうご存知のようですが、月の精霊はかつて光の全霊命(ファースト)でありながら闇の世界に協力し、光の世界――特に妖精界に多くの犠牲を出しました

 あれから幾星霜の月日が流れ、私も月の精霊達と以前の様な関係に戻りたいと思っています――ですが、中々ままならずにおりましたので、あなた方をきっかけに少しでも良い方向へ変わることができるのなら私は歓迎いたします」

 大貴の口振りから、すでに妖精界と月天の精霊達の確執を知っているのだろうと判断したアスティナは、自らの口からそれを説明し、そして関係を変えたいという自身の想いを加えて語りかける


 世界三大事変と呼ばれるロシュカディアル戦役が起きるまで、月の精霊達は妖精界の精霊達にとってかけがえのない同胞だった。無論時折犯罪を犯す者もいたが、それは他の精霊達も同じことであり、少なくとも種族的な意味での差別感情はなかった

 それが変わってしまったのがロシュカディアル戦役――仲間だと信じていたはずの月の精霊達が当時敵であった闇の全霊命(ファースト)達に助力し、精霊をはじめとする光の世界に敵対、多くの犠牲者を出した世界屈指の事変だ

 それに拍車をかけたのが、裏切った月天の精霊がその理由を説明することも、釈明することもなかったことだ。納得できるだけの理由も何もなく、ただ信頼を裏切られたと感じた精霊達は、敵ではなく味方だと思っていた者たちに奪われた大切な人の命を嘆き、その激しく深い憎悪と怒りが今日(こんにち)の月の精霊との確執に繋がっている


「……よろしいのですか?」

 「月天の精霊達と以前の様な関係に戻りたい」――アスティナの願いは側近である者や、この妖精界城に仕えている者達は十分に承知している。

 しかし、理解していることと納得していることは別の話。それが分かっている故に、妖精界王の護衛であり、アイリスの父でもあるカリオスは念を押すようにアスティナに確認する

「ええ。よい面や優れた面だけを見せるのは簡単なことです。ですが、この世に完全無欠ということはなく、どこかに綻びや影が生じるは世界の必然。

 完璧であろうとすればするほど、世界は自らの心の弱さに食い尽くされてしまうでしょう。彼らのしたことを許せとは言いませんし、忘れろとも、水に流せとも言いません。ですが、今のままでいいということもないでしょうから」

 カリオスの言葉に小さく頷いたアスティナは目元を優しく綻ばせると、その瞳に一抹の憂いを宿して答える


 自分の弱さや過ちを認めることは難しい。それが国であればなおのこと。少しでも良くしたい、完璧な世界を作りたい――王である以上、アスティナはこの妖精界とそこに住まう精霊達の幸福と平和を願ってそんな世界の実現を目指している

 しかし、表があれば裏があるように、光差すところに影が生じるように、何事もよいことばかりにすることはできない。今ではその最たるものは月天の精霊達との不和になるのだろうが、ロシュカディアル戦役の前でもそれは大なり小なりそれがあった。

 できれば人の目に触れさせたくない、知られたくない世界の影を無理に取り繕おうとすれば、それはより罪深くなってしまうだろう


(それって、まるであのニルベスって人と同じ……)

 良い面はもちろん、悪い面や問題も隠さずに見せるべき――そんな意図を以って紡がれたアスティナの言葉を聞いていた詩織は、その言葉に先程会ったばかりのニルベスの言葉を重ねていた


 ニルベスもまた、アスティナと同じように十世界の理念が、今の世界とは違う形で世界に影を落とすであろうことを半ば確信したように予見し、大貴にそれを見極めて判断するように忠告している

 光を闇を抱くのが世界ならば、善と悪を抱くのが心。二人がそう言うのは、何に正しさを求めたか、何を正しいと願ったかによって人の正しさは等しく悪に変わるのだと知っているからだろう


(考え方は同じなのに、仲良くできないなんて――難しいな)

 自らの不完全さを正しく許容することができるアスティナとニルベスでも、その願う世界が違う故に敵対している――正しく願うことが争いを生む何度目になるか分からない現実の理不尽さに詩織は神魔を一瞥してその瞳に寂しさとも憐れみとも取れる色を宿す


 「愛する」という気持ちは同じはずなのに、ゆりかごの人間である自分と悪魔である神魔の間にある大きな隔たりを常に感じている詩織には、それが痛いほど理解でき、それがどれほど辛いことなのかということが否が応でも分かっていた


《神魔様》

 同様にそのやり取りに耳を傾けていた神魔の意識に、隣に座っている桜からの思念を介した無御音の声が届く

《大丈夫だよ、大貴君のやりたいようにやらせてあげればいい》

《畏まりました》

 意識を介して返ってきた神魔の言葉を受けた桜は、一度大貴に視線を向けると静かに目を伏せて事の成り行きを見守る


 桜もまた、詩織と同様に大貴の意識の変化を感じ取り、おそらくその原因が前の妖界で神魔としていた話によるものであることを正しく推察している

 具体的な内容については桜自身も知らないが、それが大貴にとって、何よりも神魔にとって不利益に働かないのであれば、問題はない


「――……」

 桜に意識の中で返答した神魔は、大貴へと視線を映してその行動理念になった出来事を思い返しながら静かに目を伏せる

(早速、か)

 前の世界で、敵対した相手の志を同情で汲んだ神魔とは違い、大貴は少しでも相手が幸せな結末を迎えられるようにと願っていた


《なら、もし次にこういうことがあったら、俺は俺らしくやることにするよ。どんな結果になるか分からないけど、俺にとって最善だと思える方法を探す》


 無論、それが相手のためになるかは分からない。当人からすれば、有難迷惑、余計なお世話ということになるかもしれない。望んだ結果が得られるとも限らず、うまくいかないかもしれない

 それでも、自身が望む結末を作るために戦う決意をした大貴が、月天の精霊達のために何かをしたいと考えているのだと理解している神魔は、その口元に小さく笑みを浮かべる

「では、アイリス。光魔神様方を連れて、月の精霊城へ――」

 カリオスを筆頭に、妖精界側の精霊達が不本意ながらも承諾したのを見て取ったアスティナが、大貴達の案内を任せているアイリスに命を下そうと言葉を紡ぎ始めた瞬間、その場にいる全ての者の意識に強制的に別の力が意識を介入させてくる

「――っ!」


『この世界に住まう者どもよ。界厳令である』


「なんだ?」

 思念通話のように、突如脳内に響いた威厳ある声に大貴をはじめ、全員が反応する中、その声が一人だけ聞こえていない詩織は、周囲の様子に戸惑いを見せる

「え、なに?」

 思念通話として直接意識に語りかけられている言葉は、世界で最も霊格の低いゆりかごの人間である詩織に感じ取れるようなものではない。

 そしてそれ故にその言葉は、これを感じ取れるもの――つまり、世界に住まう全ての全霊命(ファースト)達に向けられたものなのだ


「『界厳令』!?」


 聞きなれない言葉に眉をひそめた大貴に、わずかに腰を浮かせていた神魔が神妙な面持ちで答える

「この世界の法の番人――円卓の神座№11、司法神・ルールが世界に対して発令する世界的危険警報だよ」

「!」

(円卓の神座……!)


 その名の通り、法を司どる神である司法神・ルールは世界に住まうすべての者に対して、その法を発布する能力――世界という壁を越え、すべての者の知覚に同時に意識を介入させる能力を有している

 これによって、九世界は法を全ての者に提示してきた。そして「界厳令」とは、司法神がその特性によって全世界に一斉に発布する警報といえるものだ


『先ほど蒐集神が逃亡したという連絡が入った。どの世界に逃亡したかは分からぬが、今理想郷(ユートピア)が奴を探している。安全が確認された際には、再度連絡を入れる故、それまでは神器を持つ者、特異型の武器を持つ者は特に用心するようにせよ』


「――っ、蒐集神が……」

 警報であるがゆえに当然ではあるが、一方的に意識に割り込んで必要なことだけを述べると、有無を言わさず通信を遮断した司法神の言葉に大貴がわずかに不満気な表情を浮かべる中、同じ話を聞いていたその場にいる全霊命(ファースト)達は神妙な面持ちを浮かべて声を呻くようにその名を呟く

「蒐集神?」

 何が起きたのか一人だけ分からない詩織だが、この場にいる全員が険しい表情を浮かべている要因が、その「蒐集神」という言葉にあるのだろうと推測して、説明を求めるように桜に声をかける

「異端の神の人柱『蒐集神・コレクター』。珍しいもの――特に神器などを集める癖のある神です」

「えっと、それが危ないんですか?」

 桜の説明を受けた詩織が怪訝そうに首を傾げると、その会話を聞いていたアイリスが険しい表情を浮かべてそれに答える

「蒐集神は、自分の気に入ったものを手に入れるためには手段を問いません。場合によっては世界を滅ぼすことも厭わないでしょう」

「……!」

 冗談とも思えない真剣な眼差しで言うアイリスの言葉に周囲を見回した詩織は、それを肯定するように神妙な表情を浮かべている神魔達やアスティナ達を見て息を呑む


 「蒐集」――つまり、"集める"という概念は、勝利を欲し、誰よりも優れた存在であることを望む生命の存り方に強く起因するものだ

 生物の世界でも、食料を集めたり、優秀な伴侶を求めるように「集める」という行為は勝利者の特権ともいえるものであり、生存に必要ではないもの――例えば娯楽的な収集品であっても、それを集めるためには経済的、生活的余裕が必要になる

 他者が持っていないもの、現存する数が少なく、限られた者しか手に入れることができないもの――それを有しているということは、即ち戦いおいて勝利し、生き残ったにも近しい意義を持つ、独占と支配の証でもある


「特異型の武器って言ってたな」

 その時、それまで沈黙を守って何かを思案していた大貴がふと口を開く

 その脳裏に甦るのは、先ほどの界厳令で司法神が言っていた『神器を持つ者、特異型の武器を持つ者は特に用心するようにせよ』という言葉だ

「神器を欲しがるのは分かる。でも、特異型の武器っていうのはどういう意味だ?」

 神器ならば手に入れることができるだろう。だが、いかに珍しくとも全霊命(ファースト)個人の存在そのものが形を得たものである特異型の武器を略奪することはできないだろうと考える大貴の疑問に、リリーナがその美声に険しい色を宿して答える

「そのままの意味ですよ」

 リリーナの言葉に、その意味を理解している全員は無表情かつ無言で耳を傾け、それを知らない大貴と詩織だけがその声に食い入るように意識を向ける

「蒐集神の武器は、『回収神』という本の形状をした特異型の武器なのですが、これは他の全霊命(ファースト)をその内側に取り込むことによって、その人物の武器を行使する(・・・・・・・)ことができるのです

 つまり蒐集神は、この世界で唯一自身の武器を持ち替える(・・・・・・・・)ことができる存在ということです」

「――っ!」

 その美声に蒐集神に対する敵意とも嫌悪感とも取れる憤りに似た感情を宿して紡がれたリリーナの言葉に、大貴は静かに目を瞠る

「そして、蒐集神が世界から危険視されている理由こそが、その能力です。彼は、その力を使って珍しい形状や能力を持つ特異型の武器を本人ごと回収してしまうのです。全霊命(我々)の武器は、私達の神能(存在の力)そのものですからね」


 全霊命(ファースト)の武器は、その存在を構築する神能(ゴットクロア)が自身の特性に合わせて変化した「戦うための自分の形」。故に、その武器形態は常に一つであり、複数顕現させることができる武器でも、複数種の武器を持つ多現顕在者(マルチレイザー)であっても、武器形態は常に同様のものだ

 しかし蒐集神だけは例外だ。その武器である本――「回収神」に全霊命(ファースト)を取り込むことで、その取り込んだ対象の武器を自身の武器として行使することができる蒐集神は、この世界で唯一武器を持ち替えることができる存在。

 加えて、蒐集神は神位第六位相当の力を持つ異端神。取り込んだ全霊命(ファースト)の武器をその神格に合わせて行使するすることができるという極めて特異で危険な能力を有している

 そしてその収集癖によって神器はもちろん、珍しい形状や能力を持つ武器を集める蒐集神は、これまで何度も全霊命(ファースト)をその中に吸収し、武器を奪ってきた。――それが、蒐集神が世界から恐れられ、嫌悪される最大の理由だ


「しかし、"蒐集"は支配と独占を内包する世界の概念でもあり、心の在り様の一つ。我々が殺生という形で行っている生存の形を、『集める』という形で行っているに過ぎません。

 そういう意味で、我々と蒐集神の間には明確な線引きはありません。ですが、我々がその力を嫌悪する理由はただ一つ――存在そのものである武器を奪われるという嫌悪にあるのです」

(なるほど。確かに、それはいい気分がしないな)

 そう言って締めくくったリリーナの言葉に、大貴は自分の武器が奪われたと仮定すると湧き上がる嫌悪感に、全霊命(ファースト)達の心情を理解して内心で独白する

(たしかに、全霊命(ファースト)の人達の武器って自分そのものだもんね。私には分からないけど、それを自分以外に使われるのはきっと嫌な気分なんだろうな)

 片や、この中で唯一の半霊命(ネクスト)である詩織は、この場にいる全霊命(ファースト)達の心情をおぼろげに察して無言のまま思案を巡らせる


 蒐集神が世界から恐れられ警戒されている最大の理由は、その「武器を奪い取る」という能力に起因している。全霊命(ファースト)にとって「武器を奪われる」ということは、「命を奪われる」ことにさえ等しい

 命と信念を賭けた戦いの結果として死を迎えるならばまだしも、自分の命を自分以外の者に使われるなど耐え難い屈辱。――ならば、自身の、あるいは大切な者たちの存在を根底から踏みにじるような蒐集神の力に対して嫌悪感に似た敵意を抱くのは必然だった


「通常蒐集神は、『理想郷(ユートピア)』と呼ばれる円卓の神座№10護法神・セイヴの神片(フラグメント)ユニットによって抑え込まれています。ですが、極稀に今回の様に理想郷(ユートピア)から逃れた蒐集神はその度に世界に小さくない爪跡を残しているのです」

「――!」

(護法神の……ってことは、あいつ(・・・)と同じ存在ってわけか)

 アスティナの言葉を受けた大貴の脳裏に、その理想郷(ユートピア)という存在と同じ神――「護法神・セイヴ」の力に列なるユニットである戦乙女「シルヴィア」の姿が思い起こされる

「いずれにしても、光魔神様は蒐集神に十分にご注意ください。かの神があなたを狙ってくる可能性は皆無ではありませんので」

 場を和ませるように優しい声音で語りかけながらも、最大級の警戒を促すリリーナの言葉に大貴はその視線を伏せて沈痛な面持ちで応じる

「ああ、分かった」



                 ※



「蒐集神……!」

 その頃、九世界にあるとある場所――そこで、司法神からの界厳令を受けたその人物は、その「名」を噛みしめるように言葉に変える

 澄んだ鈴の音を思わせる可憐な声の中に、激しい敵意と歓喜の色をのぞかせるその声の主――可憐な天使の乙女は、その背に生える純白の翼を羽ばたかせて天へと舞い上がる

「もう、あなたの好きにはさせない」

 天に舞い上がった天使を世界を照らす光源――神臓(クオソメリス)が迎え入れ、短い金色の髪が煌めきを纏ってその毛先を揺らす

「おい、『アリア』!」

 天へと舞い上がったその姿を見止めた黒髪の男がそれを咎めるように声をかけるが、当の本人である金髪の天使――アリアは、その言葉に拒絶の一喝を返す

「止めないでよ? 私は、奴を殺すために英知の樹(ブレインツリー)に入ったんだから!」

 自身の感情に任せてそう言い放ったアリアは、それ以上の言葉など聞きたくないと言わんばかりに翼を広げ、異なる世界へと繋がる時空の門を開く

「オイ待てって――ったく、しょうがない奴だな」

 制止を振り切り、アリアが時空の門の中へと姿を消したのを見送った黒髪の男は、辟易した様子でため息をつくと、苛立ちを鎮めようとするかのように自身の頭を軽く頭をかきむしる

「あのじゃじゃ馬め。神器も何もないお前に何ができるってんだよ……」

 自身の率直な感情を吐き捨てた男の声は、自分以外答えてくれる者のいないこの世界の空に静かに溶けていくのだった



                   ※



 そして、時空の狭間を漂う十世界の本拠地の中にある盟主、奏姫の私室の中では、その声を聞いた愛梨が、普段は博愛の笑みを湛えている表情にわずかに剣呑な色を宿していた

「界厳令ですか……かの神が解き放たれたとなると、大事ですね」

 その博愛の美貌を憂いで彩った愛梨が独白するのを聞いていた腹心の一人、戦王・ブレイカーは瞳のない目でその姿を見据えながら安心させるように優しい声音で語り掛ける

「ここは安全です。いかに奴とはいえ、『反逆神(アークエネミー)』、『覇国神(ウォー)』の二柱の異端神を有す十世界(我々)に手を出すことはできませんから」


 蒐集神は神器と特異型の武器を好んで収集する癖がある異端神。愛梨を崇拝する十世界メンバー達によって集められた神器をいくつも保有している十世界はともすればその標的になる可能性を多分に含んでいる

 しかし、十世界には最強の異端神である円卓の神座の中でも最強の神の一柱である「反逆神」と、神位第五位と同等の力を持つ覇国神がいる。神位第六位相当の力しか持たない蒐集神が相手ならば、仮に攻めて来ても返り討ちにすることはそう難しいことではない


「そんな問題ではありません。蒐集神の力は我々の尊厳を踏みにじるようなものです。かの神の存在意義であると言ってしまえばそれまでかもしれませんが、できることならば蒐集神様にも世界と折り合いを持っていただきたいのです」

 いかに温和で平和主義の愛梨でも、全霊命(ファースト)にとっての存在そのものである武器を奪われるという行為には嫌悪感を持っている。

 非難の色を感じさせる言葉を紡ぎながらも、愛梨はしかしその反面蒐集神と世界が折り合いを以って接することを望んでいるように沈痛な面持ちで祈るように言う


 蒐集神の存在意義であり、その概念そのものである「蒐集」を否定するつもりは愛梨にはない。しかしその欲望を満たすために、全霊命(ファースト)達の武器を奪い取ることは、恒久的世界平和を求める愛梨の立場としても看過できるものではない

 せめてその癖を抑えてくれればよいのだが、過去その悪癖を止めることができなかったからこそ、今理想郷(ユートピア)が力づくでその暴挙を抑えている形になってしまっている


「それは難しいのではないのでしょうか? 今理想郷(ユートピア)が蒐集神を抑えているのは、あなたの嘆願(・・・・・・)巫女姫様が(・・・・・)叶えてくださった(・・・・・・・・)からです。しかし、奴は一向にその在り方を改めるつもりがないのですから」

 愛梨の言葉を受けた戦王は、戦の眷属の特徴である瞳のない目をわずかに細めると、誰をも想っているがゆえに、交わらない心の軋轢に苦悩し、沈痛な面持ちを見せる諭すような穏やかな声音で語りかける


 蒐集神の力は神位第六位相当。円卓の神座の神片(フラグメント)ユニットならば、その気になればその存在を屠ることは可能になる

 にも関わらず未だに蒐集神が存在し続けているのは、かつてかの神と対面した愛梨がその在り方を正し、更生してくれることを願い神の巫女の四姉妹の長姉「巫女姫」に神の力を借りることを嘆願したことに端を発している

 巫女姫が護法神と交わした盟約により、蒐集神はその思想と在り様がたださえるまで理想郷(ユートピア)によって封じ込められることになったのだ


「……だとしても、です」

 今蒐集神によってもたらされている犠牲と被害が、単にかの神を滅ぼすことを良しとせず、必ず分かり合えるという根拠のない自信を持って姉に願った自身の甘さに起因していることを自覚している愛梨は自責の念に苛まれながら、しかし一抹の希望を捨てきれずに唇を引き結ぶ

「死の神は、ただ死を振りまくものではありません。滅びを司る神もまた同義です。彼も自身の持つ蒐集の概念と己の意志に折り合いをつけることはできるはずなのです」


 蒐集神は「蒐集」の概念そのものである存在だが、「そうであること」を定義されているわけではない。

 闇の神にいる死や滅びの神がそれらを振りまくだけの存在ではないように、その在り方を変えることはできなくとも一線を引くことはできるはず――そう考え、そう願ったらこそ愛梨は巫女姫()の力を借りてでも蒐集神を変えたかったのだ


 自身が差し伸べた救いの手を振り払われ、最後の願いさえも否定されながらそれでもなお蒐集神を信じようとする愛梨の姿に視線を向けていた戦王は、それに根負けしたように小さくため息をついて言葉を発する

「――ならば、我らが参りましょう」

戦王(ブレイカー)さん」

 戦王の口から発せられた言葉に愛梨が目を瞠る中、十世界盟主の腹心を務める戦の神の欠片は、自身の成すべきことを宣誓するように口にする

「あなたの願いの通り、奴の犠牲者が出る前に理想郷(ユートピア)に引き渡します――奴の性格を考えれば、素直に言うことを聞くとは思えませんので少々手荒になるでしょうが」

 護法神は、戦王の神である覇国神にとって対になる神。その眷属である理想郷(ユートピア)に力を貸す不本意さと、現在の主である愛梨の心を天秤にかけてその想いを汲み取ることを判断した戦王はその身を翻す

「ありがとうございます」

 照れ隠しなのか、その表情を見られないように背を向けた戦王に、愛梨は輝かんばかりの笑みと感謝の言葉を向ける

 誰からも嫌われ、その厚意を袖にした相手のために本心から感謝の言葉を述べている愛梨の言葉を背に受けた戦王が軽く指を鳴らすと、それに応じるように一つの影――戦の神の眷属である斥候(スカウト)がその姿を現す

「お呼びでしょうか?」

「『七戦帥(セブンス・ウォー)』を全員集めろ。それと蒐集神の行方を追え」

「はっ」

 戦の神、覇国神・ウォーの七人の神片(フラグメント)ユニット――通称「七戦帥(セブンス・ウォー)」の徴集と蒐集神の探索を命じた戦王の言葉に恭しく応じた斥候(スカウト)がその姿を一瞬にして消失させる

「では、私も少々我が神と話をしてまいります」

戦王(ブレイカー)さん。貴方方に戦いを強要した私がこんなことを言うのは的外れだと重々承知していますが――くれぐれも無理をなさらないようにしてくださいね」

 これからの打ち合わせのために歩を進めた戦王は、背後から送られた愛梨の自分たちの身を案じる言葉にため息とも微笑ともとれる吐息を漏らして肩越しに視線を送る

「御意」



                   ※



 そして、そうして世界が大きく動き始める中、その元凶――世界を動かすほどに危険視されている存在感である蒐集神は、天を仰ぎながら久しぶりに解放された歓喜と、これから手に入れるであろうまだ見ぬ宝を幻視してその口端を吊り上げる

「匂う。匂うぜ、宝物の匂いだ」

 理想郷(ユートピア)によって阻まれ続けてきたその存在意義を満たす自由を得た蒐集神は、その背から生えた鋼の腕を合わせた二対の腕をまるで世界そのものを掌握するように広げて、声をあげる

「欲しい、欲しい」

 まるで自身の渇望を高めるように言葉を紡いだ蒐集神は、眼前に広がる世界を見て軽く舌なめずりをするのだった



                ※



 そうして、世界が水面下で動乱の兆しを見せ始める中、そんなことなど知る由もない大貴達は、たっての希望で月天の精霊の許へと向かうために出発の準備を整えていた

「では、お気をつけて」

 天を映す大地にそびえたつ妖精界城の前に並んだ大貴達を前にしたリリーナは、見送りの言葉と優しい笑みを向ける

「どうも」

 自分に対して向けられているリリーナの言葉に、どう返答するか少しだけ迷った大貴は小さく会釈をすることで答え、その身に宿す光と闇の力を象徴するような左右非対称色の翼を広げて天に舞い上がる

「では、参りましょうか」

「ああ、よろしく頼む」

 一同の先導を務める日輪の精霊――「アイリス」は、視線をリリーナから移した大貴の言葉に頷くと、その背から生える乳白色の透けるような蝶翅を羽ばたかせて天へと舞い上がる

「月天の精霊王城は、ここからかなり離れています。全速力で飛びますので、しっかりついて来てください」

「はい」

 その言葉を詩織を結界で守りながら宙に浮いている神魔へと向けたアイリスは、一度その蝶翅を羽ばたかせると、大貴たち一行に背を向ける

「では行きます」

 そう言って天へと飛翔したアイリスに続いた大貴は、まるで流星のように飛ぶその後に続きながらその速度に目を瞠る

「疾……っ!?」

「精霊は、全方位を見渡せる視界に加えて全全霊命(ファースト)の中最大の知覚範囲、最速の飛翔速度を誇っているからね」

 アイリスの飛行速度に目を瞠る大貴に視線を向けた神魔は、そう言ってその身に纏う魔力を高めてすでに星の様に見えるまでに一行を引き離しているその後を追う

「急がないと置いていかれるよ?」


 この妖精界を総べる「精霊」は、九世界を総べる八つの全霊命(ファースト)の中で最も視覚と知覚に優れ、最高の移動性能を有している。

 神能(ゴットクロア)によって、世界の法則を無視し、万象を滅ぼす力とすべてを阻む防御、光や時間さえも介在できない神速での戦闘を行う全霊命(ファースト)だが、個人差と種族差によって強化され易い能力というものが存在する。

 最も神格が高いと言われている悪魔、天使は全ての能力に対してほぼ均等に神能(ゴットクロア)が作用するが、それでも攻撃一つとっても神魔やクロスの様な「威力型」と大貴や瑞希の様な「連撃型」、桜の様な「対処型」があり、加えてマリアの様な「遠距離型」、大貴、クロス、桜、瑞希のような「中近距離型」と神魔のような「全距離万能型」と攻撃手段と得意な間合いによって大別されている

 それが種族となればさらに顕著になるのは必然であり、中でも精霊は「速さ」と「知覚」いう概念が強化されやすい種族特性を持っているのだ


「くそ……っ」

 神魔の声に促されるように翼を羽ばたかせた大貴は、黒白の流星となって神速の速さで時間と空間を貫いて飛翔するアイリスの後に続くのだった





 全てを超越する神速で飛翔しているがゆえに、瞬く間に星の様になり、見えなくなった大貴たちを見送っていたリリーナの背後から、陽光を思わせる温かく穏やかな声がかけられる

「行かれましたか」

「ええ」

 その言葉に振り向いたリリーナは、そこにいた人物――妖精界王・アスティナに視線を向けると、その慈愛に満ちた表情にわずかに険しい色を浮かべる

「……見せていただけますか?」

「こちらです」

 リリーナが大貴達についていかなかったのにはいくつか理由があるが、その最たるものこそが、これからアスティナに見せてもらうもの(・・・・・・・・)にある


 アスティナとその護衛であるカリオス、メイベルに挟まれ妖精界王城の地下へと続く回廊――とは言っても、深い竪穴のようになっているその場所――を、十枚の翼を広げてゆっくりと下降するリリーナはその下から漂ってくる言い知れぬ重圧にその美貌をわずかに強張らせる


「九世界の王は、神威級の神器の使い手。誰しもがいざというときのために神位第六位相当の神にならば対抗できる程度の力を有しています――ですが、私にはその神器がありません。いえ、正確にはそれはあるのですが、使うことはできないというべきなのでしょうね」

 その緊張を察したのか、あるいは客人を案内するにあたって静寂をもたらすのを良しとしないのかは分からないが、アスティナはその陽光の声で九世界王の娘であるリリーナならば知っているであろう事を再確認するように語りかける


 厳密には九世界の王が神に等しい力を得ることができる「神威級神器」を使うことができるのではなく、神から生まれた最も神に近い原在(アンセスター)が王を務めていることが多いためそのように表現をしている

 つまり、仮に九世界王であっても原在(アンセスター)でなければ神威級神器を使うことはできないのだが、そんな王は限りなく限定的であるために、アスティナは意図的にその人物(・・・・)を例外扱いして話をしている面がある


 それが決してアスティナの皮肉や嫌味ではないことを知っているリリーナは、緊張をほぐすためにかけてくれたのであろうその言葉に内心で感謝しながら神妙な面持ちで応じる

「心得ております。もしも蒐集神がこの城に来るようなことがあれば危険ですね」

「ええ」

 しばらく城の地下深くへと下降すると辿り着く扉の前にいた数人の精霊達は、自分たちの王(アスティナ)から合図を送られると、その来訪の意図を理解して何も言わずにそこに自分たちの力で作っていた極彩色の結界を解除する。

 複数人の精霊達が重ねるように作っていた結界の壁が消失すると、それによって閉ざされていた道が開き、この回廊の終着点である扉がその口を開ける


 精霊達によって守られていた扉の先には、大地が抉れたのではないかと思われるほど広大な球状の空間が広がっており、その様はさながら卵の中、あるいは胎内ともいえるかもしれない

「これが……」

 そんな空間で下降を止めて中空に佇んだリリーナは、眼下にあるそれ――この球状の室内に安置されているものを見止めて息を呑む

「はい。あれこそが私の神器によって封じている神――」

 リリーナの声を受け、眼下の空間にあるそれへと視線を移行させたアスティナは、その目と声に剣呑な光を宿して言葉を紡ぐ





「円卓の神座№3。『自然神・ユニバース』です」






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