9.5.
まだ書き始めたばかりで文章も拙いですが、キャラたちをもっと丁寧に書きたいと思うようになりました。
よってこれから文章の書き方や表現を少しずつ調整していきます。
〈五時間前――凪〉
「学校を休む」
そう殴り書きした紙を、凪はキッチンに乱暴に置き去る。
工房の重い扉をそっと開け、外に出た。
朝の空気は、驚くほど冷たい。吸い込んだ肺の奥が、ツンと鋭く痛んだ。
夜が明けたばかりの街は、まるで世界に一人しか残されていないんじゃないかと思えるほど、静まり返っている。
――電車......そう駅に行けば、学校に行けば、相手は俺に引っ掛かるかもしれない。囮になるんだ。
それしか凪の頭には浮かばなかった。
静かな道を、駅へと急ぐ。
ズボンのポケットに入っていた少ないお金で切符を買い、自動改札に通した。
指先に触れる切符の薄さはどこか心許ない。
ホームに入ってきた電車は静寂を切り裂くように凪の前に止まる。
だがその電車に乗ることはなく、ホームのベンチに座る。
奴らも、見つけるならじっとしていた方がいいと見込んで。
ガタゴトとレールを鳴らす重い音が、次第に遠ざかり、また元の静寂がホームに染み込んできた。
馬鹿なことをしている自覚はある。
でも、どうしてもじっとしていられなかった。
陣たちの会話を思い出して、凪は溜息をつく。
政府から盗まれた遺物と自分のエネルギー波形が一致。
勉強を避けていた凪でもこれだけは知っていた。
エネルギー波形が一致する、つまり相性のいい遺物と出会うと能力者の能力は自分ではコントロールが効かない、暴走状態になると。
「......少し寒いな」
日本は冬に差し掛かる秋。
冷え切った空気にぽつりと吐いた息が消えていく。
「探していたぞ。未登録の能力者」
低く、湿気のない声が凪の鼓膜を打った。
声の方向に振り返ると、安っぽいスーツを着た男が二人。
凪はベンチから立ち上がり、正面から二人と向き合う。
「なんの目的で俺を狙っているのか答えろ」
「こちらも指示で動いてるだけだ」
男の一人が一歩、距離を詰める。
その手には、いつの間にか小さなスプレー容器が握られていた。
「しばらく寝てろ」
至近距離で プシュッ と微かな噴射音が響く。
無色無臭の霧が、凪の鼻腔をすり抜けて肺の奥へと滑り込んだ。
(……っ、しまっ......)
神経を直接遮断されたかのように、全身の筋肉から一瞬で力が抜ける。
膝が折れ、崩れ落ちそうになった凪の身体を、安っぽいスーツの男たちが両脇から手際よく支え直した。
「おい、大丈夫か? しっかりしろ」
男たちは周囲の乗客に見せつけるようにわざとらしい声を上げ、ぐったりした凪を急患の病人のように抱え込んで歩き出す。
一般人の目には、体調を崩した少年を親切に介抱する大人の姿にしか映らない。
急速に世界が暗転していく中、凪の身体は周囲に気づかれることもなく、静かにホームから連れ去られていった。




