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全員を救うと“消される”世界で、俺は選ばないことで全部残している  作者: 夕凪リィナ


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第33話 上位の視線

 ——空が、裂けた。


 音はない。


 だが。


 確実に、割れている。


 そこから。


 “何か”が、降りてくる。


「……あれが」


 男が呟く。


 声が震えている。


 無理もない。


 形がある。


 だが。


 理解できない。


 人ではない。


 影でもない。


 ただ。


 ——存在している。


 それだけで。


 空気が変わる。


 重くなる。


 ではない。


 薄くなる。


 世界そのものが。


 一段、外される。


「……っ」


 男が膝をつく。


 立てない。


 呼吸が乱れる。


 私は、動かない。


 立っている。


 ただ。


 見ている。


 それを。


『——確認』


 声が落ちる。


 感情がない。


 だが。


 観測者とも違う。


 もっと。


 上。


「……何を」


 私は問う。


 返事は、すぐに来る。


『逸脱』


 短い。


 だが。


 十分だった。


 私は、目を細める。


 理解する。


 これは。


 ——判定。


『対象』


 その言葉。


 私は、何も言わない。


 肯定もしない。


 否定もしない。


 ただ。


 聞く。


 それでいい。


 今は。


『修正不能』


 次の言葉。


 男が、顔を上げる。


「……何だと」


 だが。


 私は、動かない。


 その先が重要だから。


『再定義』


 その瞬間。


 空気が変わる。


 今までとは違う。


 修正ではない。


 ——書き換え。


 世界の前提が。


 揺れる。


 私は、前に出る。


 一歩。


 その存在へ。


 距離はある。


 だが。


 意味はない。


 これは。


 距離ではない。


 構造の話だ。


「……やめてください」


 私は言う。


 静かに。


 返事はない。


 だが。


 変化はある。


 その存在の“視線”が。


 こちらに向く。


 初めて。


 明確に。


 認識される。


『抵抗』


 その言葉。


 私は、頷く。


「はい」


 短く。


 それだけ。


『理由』


 問われる。


 私は、答える。


「残るためです」


 即答。


 迷いはない。


 その瞬間。


 空気が、止まる。


 ほんの一瞬。


 だが。


 確実に。


 反応。


『矛盾』


 返ってくる。


 当然だ。


 私は、続ける。


「それでも、残ります」


 同じ言葉。


 変わらない。


 その言葉。


 空間が、揺れる。


 今度は。


 明確に。


 その存在が。


 ——考えている。


 男が、息を呑む。


「……何だよ、これ」


 私は、答えない。


 今は。


 それどころではない。


『観測外』


 その存在が言う。


 小さく。


 だが。


 はっきりと。


 私は、目を細めた。


 来た。


 次の段階。


『分類不能』


 続く。


 私は、何も言わない。


 ただ。


 見ている。


『再試行』


 その瞬間。


 世界が、変わる。


 今度は。


 歪みでも。


 圧でもない。


 ——巻き戻し。


 時間が。


 わずかに。


 戻る。


「……っ」


 男が声を上げる。


 景色が揺れる。


 さっきの位置。


 さっきの状態。


 ほんの数秒前へ。


 戻される。


 だが。


 私は、動かない。


 そのまま。


 立っている。


 変わらない。


『……維持』


 その存在の声。


 わずかに。


 変わる。


 初めて。


 ——ズレる。


 私は、言う。


「無意味です」


 はっきりと。


 その瞬間。


 時間が、止まる。


 完全に。


 そして。


 ——戻らない。


『……例外』


 その言葉。


 確定した。


 私は。


 例外。


 構造の外。


 その存在が。


 わずかに。


 揺れる。


 ほんの少し。


 だが。


 確実に。


 理解している。


 今の状況を。


『——決定』


 声が落ちる。


 今までで一番、重い。


 私は、動かない。


 ただ。


 待つ。


 次を。


『保留』


 その一言。


 世界が、戻る。


 完全に。


 何もなかったように。


 空は閉じる。


 裂け目は消える。


 その存在も。


 ——消えた。


 静寂。


 風が戻る。


 音が戻る。


 私は、立っている。


 そのまま。


 男が、崩れるように座り込む。


「……何だったんだ、今のは」


 私は、空を見る。


 何もない。


 だが。


 分かる。


 終わっていない。


「……判断です」


 私は言う。


 男が顔を上げる。


「何の」


「私の」


 短く。


 それだけ。


 男は、何も言わない。


 理解できない。


 当然だ。


 だが。


 それでいい。


 私は、前を見る。


 拠点の外。


 さらに先。


 そして。


 分かる。


 これは。


 終わりではない。


 むしろ。


 ——猶予だ。


 次は。


 保留では済まない。


 私は、静かに息を吐く。


 そして。


 小さく言う。


「……準備が必要です」


 男が、ゆっくりと頷く。


 その目。


 完全に変わっている。


 もう。


 迷いはない。


 私は、歩き出す。


 次へ。


 選択ではなく。


 ——存在として。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。


ついに“上位存在”との接触が起きました。

そして主人公は、「修正不能」と判断される異質な存在に。


しかし、結果は「排除」ではなく「保留」。


これは猶予か、それとも——。


ここから物語はさらに一段上のフェーズに入ります。


続きを見届けたいと思っていただけたら、ブックマークや評価で応援していただけると嬉しいです。

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