第40話 遠藤8
「というわけだ。SVRに返す恩は一切ない」
「なるほどねぇ…で、交渉には応じるのか?」
「…」
何とも言えない。
敵…さらにほかの諜報員との交渉ときたら外交案件だ。
そう簡単に一人で決められる話ではない。
だが、今は時間がない…
まず局長に連絡を――
「別にうちはいいぞ」
横から割り込んだエリオットの声に、思わず身を固くした。
「おい…」
それを制するかのようにゆっくりと口を開く。
「今の時代、民間に一度でも流れた情報は一瞬で拡散する。上手くいけば発信源も特定できないはずだ。……そうだろ?」
「…」
エリオットの視線が、射抜くように自分を捉えた。
「お前も成長しろ。自分の直感をもっと信じろ。たとえどんなに遠回りでも自分が正解だと思えばそれは正解だろ?」
迷いは消えなかったが、進むべき方向だけは定まった。
「…わかった。」
すると遠藤はこくりとうなずきコートのポケットに手を突っ込む。
その中から一枚のメモを取り出し、差し出した。
「これが在りかだ。」
すぐさま本部へ緊急連絡を入れる。
人員を現場へ向かわせる。
数分の待機だった。
昼下がり、重機と怒号が響き渡ったあと、ついに例の物が姿を現した。
無線から歓喜の声が響く。
「回収も済んだ。で、どうするんだ?…」
「ここは、『情報を生徒から聞き出そうとしていたところを、CIAに強襲された』……ということにでもしておこう」
「敵に情けでもかける気か?」
「事実だろう?」
遠藤がにんまりと笑う。
「じゃあ、お前自身はどうすんだよ」
遠藤が頼んだ料理の最後の一口を口へ運ぶ。
「…ひとまず海外逃亡するさ」
満足そうに席を立った。
「そうか」
「せいぜい頑張れよ」
そういって遠藤は店から出て行った。
席を立つ。
俺にはやらなければいけないことがある。
覚悟しろよ 安原健太郎 お前は絶対逃がさない。




