第35話 遠藤3
「しかし、お前何で易々ついてきたんだ?」
グラス口に運ぶ。
「何か伝えたいことがあると思ったんだ」
思えば最初からおかしかった。
経歴に空白を作ったこと・わざわざ経歴に暴行罪で逮捕ということを入れたこと・水族館に突然姿を現せたこと・わざわざ予定にもない恩賜公園に向かったこと…
遠藤が微笑した。
「まぁ、それはともかく監視が無い今取引しないか?」
「取引?」
「そう取引だ」
こいつは一体裏で何を考えているんだ…?
「馬鹿言え。それに応じるとでも思たか」
当たり前だ。敵とは取引しない。
「そうか。それは残念だ」
遠藤の口角がさらに上がる。
「せっかくお前らが今血眼で探している核の在りかを教えてやろうと思たのだが…」
気づけば胸ぐらをつかんでいた。
「吐け」
「これは交渉だ」
「いいから吐けよ。死にたいのか?」
拳銃に手が伸びる。
エリオットが肩を強く引く。
「落ち着け」
ゆっくりと引いた。
周りの視線が向いていることに気づく。
脈は下がり鼓動が小さくなってゆく。
「…条件は何だ?」
遠藤の口角が上がった。
昼の日差しが影を濃くする。
「遠藤誠と遠藤道子の死の真相を世界各国に発信することだ」
――2005年 アフリカ A国
遠藤は大学生になっていた。
そして両親が死んだこの地に再び足を下した。
理由はあの時別れを言えなかったピエールに遭う事。
そして両親の墓参りだ。
あれ以降結局遠藤はこの地には来なかった。
というか来れなかった。
それは単純に怖かったからだ。
そして今日遠藤はついに戻った。
ある程度覚悟を決めたからであった。
A国はだんだんと経済発展しつつあった。
首都にはビルがそびえ建ち高級外車も走っている。
しかし、それは表側の話。
首都から少し離れると道路の舗装やビルは消える。
あの頃と同じような雰囲気が残っていた。
車で30分ほどするとあの頃の村に着いた。
すると奥の建物から痩せた女性が一人出てきた。
しかし顔覚えはあった。
親友の母親だ。
「La tante de Pierre ?(ピエールのおばちゃん?)」
見た目は昔よりやせ細れていたが一目で分かった。
高校時代も優しく接してくれた第2の母のような存在だ。
鼓動が早くなる。
ついに!ついに‼ついに会えた!!!!
「Qui est-ce ? …Pas possible...(どなたですか?…まさか…)」
おばちゃんがこれでもかというくらい驚いた顔になる。
「C'est moi ! Endo―― !(僕です!遠藤――!)」
駆け寄る。
涙があふれ出てくる。
これでピエールにも!!!!!!
バシッ
頬が熱い
「Ne t'approche pas ! Enfant du diable !(来るな!悪魔の子め!!!)」
「…え?」




