第ニ話 潜入開始 改
落とす⁉脅迫?まさか正体がばれたのか。あいつ実は、結衣に変装した敵の諜報員なのか?いや、それでは大声で宣戦する意味はないしむしろ不利になるし…
あれこれ考えていると後ろから短髪の男子生徒がポケットに手を突っ込みながら来た。こいつの潜入名は尾田翼、俺の後輩だ。
「先輩!いったい何をそんなに思い詰めているんですか?」
「いやこの年代の心理がわからん」
「そういえば先輩中高の時もずっとうちの組織にいましたもんね」屋上の手すりによりかかる。
「ところでお何故ここにいる?」
「いや、今回の任務の名簿確認したんですけど、その中にどえらい人がいたんですよ」そう言って一枚の名簿リストを見せてきた。意外と知る名前も多い。
「ここですよ!ここ!!!」と数多に並んだ黒文字の中から一つエリオット・ハウゼンの文字を指す。
「あぁ、エリオットか確か、お前は初めてだったよな」
「あぁじゃないですよ!あの伝説の諜報員エリオット・ハウゼンですよ‼っていうか先輩会ったことあるんですか?」やけに興奮気味に聞いてくる。まぁこの業界に入ったならば彼に憧れを持たないわけないが…
「あぁ…昔いろいろあってな」一瞬表情が固まる。
「え!いつ?いつですか?日米共同任務ですか?!いいなぁ絶対かっこよかったんだろうなぁ」
そうエリオットにあの時拾ってもらえなかったらここにはいなかった。いまだに鮮明に覚えている。いや忘れられない。忘れられるわけがない。あの時…あの時あの時あの時あの時あ――
「先輩?」
手を見るるといつのまにか汗がにじみ鼓動は痛いほど打っていた。
「ん?あっあぁ何でもない何回か共同任務をしたことがあってな。というか担任だからもうすぐ会えるだろ」
「まあそうですけど…それより――」
「あと…このことについてはあまり触れるな」
扉に着くと同時に勢いよく屋上のさびた扉を閉める。一人教室へと向かった
「Hello everyone!しばらく鹿嶋田先生は入院するので今日から私ロバート先生が担任を務めます。短い期間ですがよろしくお願いします。」後輩は憧れのエリオットさんだーと目が釘付けになり完璧に体が固まっている。
「さて今日はなんと3人の転校生がいます。黒板の前にどうぞー」席を立つトクラスの視線が集まるとともにとてもざわつく。
「はいっじゃあ自己紹介どうぞー」順番的に最初は後輩だ。
「えー僕の名前は尾田翼です。あまり長所はありませんが一応PC系は得意です。もし隠れてゲームしたかったら僕に行ってください!よろしくお願いします」クラスに多少笑いが起こる。
「私の名前は風間美幸。よろしく」こいつはCIA諜報員のコードネーム:ナイト。何回か共同任務をしたことがある特にエリオットと話しているときなどなぜかすごい目線でにらんで来るのが不思議だ。
「神崎海斗。よろしく」一応拍手が起こる。ふと結衣を見るとなぜか少し顔を赤らめそっぽを向かれた。
…俺が何かしただろうか?
改めて席に座る。まだじっと見てくる。
授業中もずっとなぜか見てくる。
いや、さすがにマズイこれで結衣の成績が下がりでもしたらなお一層だ。俺が理由で学力低下などさせたら依頼金は取り消しの可能性もなくもない。スパイ失格だ。スパイならば自分の非を認め改善するまで‼
「俺なんか悪いことしたか?もし気に障ることがあったら――」
「ん?いや別に」
…ん?
「じゃあなんでずっと見てくるんだ?」
「えっ?!(バレてる?!)」
「ん?いや、もし俺に非があるなら――」
「だからそんなんじゃないって」
…は?
予想外の反応に混乱し結衣の目をじっと見る。
するとまた目をそらされる。
「ちっ違う。あれよ。うちの学園試験難しいから転校生ってなかなか来ないの。だからきっとすごい人なんだろうなって」あぁただの物珍しさか。
「まあ別にどんな風に思ってくれても構わないが、勉強には励めよ」
「私が馬鹿だっていうの?」
「誰だって、授業中によそ見していたら内申点も減点されるし(任務にとっても悪いし)いろいろと大変だろ」
「別に内申点引かれても問題ない成績なんですけど」と頬をふくらませてまるで漫画の中のような怒り方をする。
「はいはい、そうですか。また明日な」面倒になりそうなので全速力で走りだす。
「ちょっ、ちょっと待ちなさいよー」廊下に結衣の声が響いた。
屋上に着くとエリオット・後輩・ナイトがいた。
「よう。久しいなハイド君」エリオットが軽く片手をあげる。
「お久しぶりです」深く頭を下げる。
頭を上げ軽くナイトにもあいさつしようとしたが
「ナイトもひさし…」と言いかけたところで、「どうも」とだけ言いサッと端のほうに行ってしまった。相変わらず冷たい。
「しっかし、結構結衣とお前、いい感じになってきてるな」と言いながらエリオットがコーヒーを渡してくる
「ただの任務です。そういうんじゃありません。」コーヒーは予想以上に甘かった。相変わらずの好みである。
「ちなみに今回の現場、エリオットさんから見てどう思います?」
後輩が身を乗り出し、机をきしませながら問いかけた。
エリオットはコートの裾を整え、静かに笑う。
「じゃあ君はどう思う?」
その視線がナイトに移る。
「えっと…なんか平和な感じです」ん?何だその目の輝き。
「君は?」
「うーん、僕は特に引っ掛からなかったですけど…」
すると突然にやけだし俺の肩をたたいてくる。
「君は気づいてるだろう?ハイド君」
給水タンクの下にかすかに焦げ跡が見えた。
「……爆弾の痕跡だな」
「正解。CH24型時限爆弾の残骸だ」
後輩がエリオットから渡されたコーヒーを吹きだした。
「え?!ちょっ、それどういうことですか!」
「実を言うと、もう私が潜入し始めた時からほぼ毎日こんな暗殺未遂が続いていんだ」
「そんなこと僕、聞いてないですよ!っていうか先輩知ってたんですか?」後輩が俺の肩をつかむ。
「いや、今俺も初めて知った」
「まあ落ち着け君」エリオットがさりげなく体を割って入り仲裁しようとする。
「そうよ、報告なんてしなくても一人で任務達成できてるんだし、コネで任務に就いた身で気安くエリオット様の偉業を語らないでくれるかしら」とナイトが謎に後輩に突っかかる
「でもこれ必須共有事項でしょ。というかコネじゃないし!!!」ナイトと後輩がものすごい形相でにらみ合う。
「悪い悪いもちろん最初は何回も報告したが毎日あるもんでな…まあその暗殺方法がだんだん過激になってきたから君らを呼んだんだし…」確かにこれを報告しないとは重大な違反だがそれが看過されるのはエリオットが優秀だからである。それはともかく後ろでものすごい口喧嘩が起きている。このままではCIA との関係が…いや日米関係が悪くなりそうなので止めに入ろうとしたところ。先に、エリオット両者の間に壁のように立ち「まあ…」と言って場を鎮めた。春風が彼のコートを揺らす。
「この学校はもう戦場だ。気を抜けばいつでも死ぬ。せいぜいがんばれよ」
「はっ、はい‼」校庭に楽し気な生徒たちの声が響いている。そうこの声も俺たちが裏で動いているから保てるものなのである。




