第33話 遠藤
―3限目 数学科 遠藤久志
「今日は俺が担当する」
荒々しく教科書を置く。
後輩と視線を合わせる。
「はい!」
「何だ?」
「先生はいつから教師をやって――」
すると強く机を叩く。
「それは数学に関係のある質問か?」
クラスが凍る。
後輩も少し雰囲気に圧倒されていた。
「おいどうなんだ?」
まるで鋭いナイフのような視線が後輩に向けられる。
「ち、違います…すみませんでした」
舌打ちをし、チョークを手に取る。
「授業中は授業以外の事を考えるな」
駄目だ尋問を回避された。
黒板にチョークが走る音だけが響く。
「今日は数式の最適化だ」
遠藤は淡々とした声で数式を書く。
黒板にチョークが走る音だけが響く。
視線を鋭く走らせる。
最適化…選択…
ゆっくりと手を挙げた。
「はい」
遠藤の目がわずかに動く。
「もし最適解を得るためには、他の値を全部捨てるんですか?」
鋭い視線同士がぶつかり合う。
「例えば…その“捨てる値”が解に何の影響もない値でも」
遠藤はチョークを置き、静かにこちらに向かってくる。
「切り捨てる。」
遠藤がすぐ隣までやってくる。
机に手をつき肩に手を載せる。
「もちろん…誤差も排除する」
遠藤の声が低く落ちる。
「そうしないと、解は崩れる」
今まで以上に鋭い目で耳元に口を寄せる。
「授業が終わったついて来い。さもないと――」
結衣に視線を移す。
心拍数が少し上がった。
結衣は意味がわからず首をかしげている。
そして授業終了のチャイムが鳴った。




