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スパイは踊らない~学園に潜む影と恋~  作者: 猫吉
第二章 文化祭編
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第32話 安原

朝の校舎はざわめきに包まれていた。

地下室の端で腕を組み、防犯カメラで二人の動きを一時間以上追っていた。

遠藤は職員室で淡々とプリントを整理し、安原はただただ穏やかな笑顔で挨拶している。

…不自然な行動はない。接触もなし。完全に“普通”だ

後輩が小声で近づいてきた。

「先輩、何か怪しい動きありました?」

「ない」

「そっちは?」

「改めて過去の行動分析しましたがやはり何も…」

思わずため息が出る。

「授業から読み取るしかないな…」

後輩もため息をつく。

視線を窓に向ける。

…今日で決める。

チャイムが鳴った。

「最後の最後まであきらめるな!行くぞ!」

「はい!」


―1時限目 社会科 安原健太郎

「初めまして。今日は私、安原が担当します」

チョークを黒板に丁寧に走らせる。

「何か質問はありますか? 何でもいいよ? 好きな映画とか、好きな食事とか…」

クラスが少しだけざわつく。

後輩と目を合わす。

「はい!」

「はい、え~尾田君?」

「先生はいつから教師をしているんですか?」

安原は一瞬右上に目をそらす。

「だいたい2年くらいかな?」


今だ。


「はい」

「え~神崎君」


「先生は教師になる前までは何をしていたんですか?」

安原の経歴の空白は教師になる直前にある。

この状況、どう出るか…?


「まぁ君たちになら話してもいいか…」

急に穏やかな顔が寂しげな顔に代わる。

「実はね…先生は紛争地帯で人質解放の交渉をしていたんだ」

国連?…そうか守秘義務があるな…

安原は続ける。

「とても過酷な仕事だったよ。いわゆる命の採決ってやつだからね」

その声は淡々としているのに、奥に沈んだ重みがあった。

腕時計型うそ発見器は緑色のランプを灯したままだった。反応なし…か。

「だからねもう目の前で罪のない人が死ぬのを見たくないんだ」

クラスに静寂が走る。

安原はふと穏やかな笑みを戻す。

「おっとすまないねくらい話をしてしまって…そろそろ授業に入ろうか」

教室に再びざわめきが戻る。

後輩と再び視線を交わし、指先で小さく信号を送った。

―駄目だ、収穫なし―

後輩がわずかに肩を落とす。

―つまりあいつか―


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