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スパイは踊らない~学園に潜む影と恋~  作者: 猫吉
第二章 文化祭編
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第30話 マイクロフィルム4

『至急応援を送る。それまで逃げき――』

もう一発発砲してきた。

無線機にあたったらしい。繋がらない。

そうだ! 護衛のやつは…

あいつはあいつで麻酔銃に打たれて厨房でフラフラしていた。

…駄目だありゃ。

と、とにかく場所を変えなければ! 民間に被害が出たら取り返しがつかない!!

「おい、少し店の外へ――!」

腕を引こうと結衣を見ると顔がクリームまみれになっていた。

先ほど弾丸を避けた衝撃で顔からケーキに突っ込んだらしい。

「……あ」

次の瞬間、結衣の目がギラリと光った。

「ちょっと!何なのよこれ!」

周囲の視線が集まる。結衣はクリームをぬぐいながら、怒りで頬を真っ赤にした。

「私の顔、見てよ!これ、どうしてくれるの!」

ハイドは冷静に銃声の方向を確認しながら、低く言った。

「とえいあえず走れ。話はそこで聞く!」

「はぁ!? 何言って──」

その声を遮るように、麻酔弾がまたかすめた。

幸いまだ誰も気が付いていないようだ。

とにかく人ごみの中を走り抜ける。

人をかき分け進むと出口が見えた。

せめて市街地に入れば合流もたやすい。

風のように駆け抜ける。

そしてやっと出口付近に着く。

よし、ひとまず安心‥


だがそこまで現実は甘くない。

「囲まれたか……」

階段の下、黒い影が複数。SVRの男たちが散開していた。

周りは男たち以外にもやじ馬たちがどっと集まる。

ハイドは一瞬で判断した野次馬たちがいる以上、銃撃は使えない。

せめて、戦う口実が欲しい…

どんどん男たちは詰めよってくる。

「……仕方ない」

まだ結衣はまだ頬についたクリームをぬぐいながらギャーピーと声を上げている。

そんな結衣の肩をがっしりと掴む。そしてじっくりと見つめる。

「な、何よ…っていうかこの状況――!」

「悪いな」

足をかける。

「あっ…」

バサッ

結衣が近くにいたSVRの男に倒れこんだ。

腹式呼吸。

「この人たち痴漢でーす!!!!助けて下さーーい‼」

大声で叫ぶ。

結衣とSVRの男の視線が合う。

「え?」

・・・


「ええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

「大変だぞ!」

「警察を呼べ!!」

「きゃあああああああああ!!」

結衣の叫びで周りが一気にカオスと化す。

「Что?!」

ゴキッ

蹴りが男のあばらを砕く。

鈍い音とともに男の体はは店の窓に叩きつけられる。

「Стреляй!Стреляй!Стреляй!(撃て!撃て!撃て!)」

敵が拳銃を抜こうとする。

しかし、回し蹴りで弾き飛ばす。

銃が宙を舞い、床に転がる。

「Ох !!!!」

「Кха!」

「Ух!」

「А-а-а-а-а-а-а-а-а-а!!!!!!」



東京駅に響いた断末魔たちはそこで途絶えた。

床には痙攣している男たちが転がっている。

野次馬たちは言葉を失い警備員すらただ茫然と立っている。

「お、…おおおおおお!!!!!!」

だんだんと歓声が沸く。

間もなくすると警察――の変装をした組織の者たちがやってきた。

「ハイここは危ないので下がってて下さーーい!」

人の整理が行われ次第に人の流れが戻ってくる。

しかし…

横を見るとまだ結衣がどこか気の抜けた表情で口を開けて立っている。

「あ~…結衣?」

やがてロボットのようにぎこちない動きでこちらを振り向く。

「いや、ありがとうだけど…あんた…何者?」

しまった! 結衣を巻き込んだ上に戦闘姿を見せてしまった…俺としたことが…

「え、え~と昔少林寺拳法やってて…」

静寂が走る。

結衣がうつむく。

さすがに無理が――

「な~んだそういう事か~」

…は?

「いやいきな綺麗なフォームで殴りだすからさぁ…っていうかこのワンピース弁償しなさいよ!!!!!これ超高いんだから!!!大体あんたは――」

結衣がバカで助かった…

その後マイクロフィルムを預けドレスとケーキをすべて買わされたハイドなのであった。


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