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スパイは踊らない~学園に潜む影と恋~  作者: 猫吉
第二章 文化祭編
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第23話 事故の真実1

「多分これ以上あの編集者を問い詰めても出てこないな…」

「そうですね」

「次まわるか…」

―ナイジェリア 最大都市ラゴス郊外、水上スラム街マココ

車を降りるとボートで移動する。子供たちが泳ぎ戯れ、意外と域内は安定している。

「すみません千代田大学ボランティア学科のものなのですが」

奥からゼッケンを着た女性が出てくる。

「あらまあ遠いところからようこそおいでなさいました。早速私たちの慈善事業について説明いたしますね」

「まずこの慈善団体birdについてです。この団体は当時建築業界の巨匠ともいわれた遠藤 克樹、菫夫婦によって設立され…」

「えっ!あの遠藤夫婦ですか?」ナイトが前のめりになって聞く。

「あら知ってるの?」

「はい!」

「さすが師匠ね…世代を超えて認知されちゃって…」

「確か遠藤さんて事故でこの世を去るまで慈善事業をし続けたんですよね。憧れます!」

事故という言葉に眉がぴくっと反応していた。こいつもか…でもどうせ口止めされているな…

「はい…そうなんですよ。あの方々はお亡くなりになる直前までこの団体のことを心配してくださって…」

直前まで?

「もしかして事故当時現場にいらしたのですか?」

「いいえ私は亡くなる直前たまたま電話を師匠にかけていて…」

「おやおや?おかしいですね。確か…遠藤夫婦は当時携帯電話を持ち歩いていなかったですよね」

いつの間にか女性の肩にエリオットが手を置く。

「えっ…いやあなたこそなんでそんなこと知ってるんですか?まっまさかあなたたちはあいつらの…」

家の角に後ずさりしてゆく。

「あいつら?それは誰です?教えていただけませんか?」

「ここはうちの人員で辺りを囲っているので盗聴のリスクもありません。それに、勝手ながら今あなたはコートジボワールにいることにしておりますので命を狙われることもありませんよ」

―そんなこと俺、聞いてないけどね。

角でおびえていた女性はついにゆっくりと立ち上がった。

「実は、あれは事故ではないんです」

「事故ではないとは?」

「暗殺です」

その場が凍り付く。

「あの時…私は遠藤師匠と同じ車に乗っていました」

―2000年 アフリカ大陸 A国

「久志!ゲームばっかやってないでちゃんと荷物まとめなさい!」

一人でゲームをしている青年が面倒くさそうに返事をする。

「は~い」

両親は建築業界の巨匠と呼ばれた人たちだった。ただ、その時はアフリカにいた。最近内戦のあったA国で3年間にも及ぶボランティア活動をしていたのだ。その間久志も日本を離れ高校生活はアフリカの地でほとんど過ごしていたのだ。そして今日はボランティア最終日。今日は最後の活動としてお世話になった家や活動した地を巡り確認するのだ。

「そういえばあんた高校のお友達にお別れ言ったの?」

そういえば言ってなかった。

いや、言えなかった。

「…」

「まだ言えてないの?」

「…」

母さんはあきれてため息をつく。

自分だって何度も言おうとした。

だけど言えなかった。

内戦は収まろうともまだ政治も安定していないこの国では死は日常に近しい存在だ。

実際反政府軍の抵抗はまだ続いていて、在学中にも何人かが巻き込まれた。

明日生きているかもわからない。


だからこそお別れを言うと一生会えない気がしてつらい。

悲しませたくないし悲しくもなりたくない。

全てが言うには遅かったのだ。

「次会えるのがいつかわからないのだから…今日一緒に話に行きましょ?」

怖い。

失いたくない。

あとでそれが最後だったと分かるのも怖い。

それならせめて楽しい気持ちだけで離れたい。

「やだ今日はいかない」

「いやでも…」

「行かない行かない行かない!!!!」

青年はそういって家から飛び出した。

青年は臆病だった。

「遠くに行かないでよー!」

どんどん青年の背中が縮まってゆく。

どうせまた友人とサッカーでもするのだろう。

「おはようございます。道子先生」

「おはようございます。あら、もう出発時間ですか?」

「いや五分前ですがもうお車の準備はできております。誠先生も先にお車にいらっしゃいますよ」

「あら、あの人が五分前行動とはめずらしい。では少し早いですけど行きましょうか」

「そうですね」

砂埃とともに車が走り出す。

「そういえば久志お坊ちゃんは?」

「いじけて飛び出して行ってしまいました」

「まだ言えてなかったのか?」

「あの子も苦難しているのでしょう」

「今日言えなかったら明日はないのに…」

「言えなければ。明日俺が朝に友達さんのうちまで送り届けるよ」

「そうしましょうか」


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