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スパイは踊らない~学園に潜む影と恋~  作者: 猫吉
第二章 文化祭編
23/44

第21話 アフリカへ

ほんのりと香るゆずのシャンプーの香り。


前にもこのようなことがあった気がする。


そういえばあいつもゆずが好きだったな…

「先輩そういう趣味だったんですね」

足が後輩の鳩尾に素早く入る。

「たおっとあおyちょちょちょっちょっと早く離してよ!!!!!」

もう遠藤はさすがに逃げたか…

「すまない。こけただけだ」

「はあああああああ!!!!!人にいきなりハっハハグしておいてそっそそっそそれはないでしょ!!!」結衣の体温がどんどん上がってゆく。

「お前ハグごときで恥ずかしがってんのか?欧米では基本だぞ。お前アメリカ生まれじゃなっかたのか?」

「そおtれとこれとはっ別でしょっ!!!!!!!!1」

「あっあの僕は…」後輩はかすれれた声でいう。

「自業自得だろ」

「なんか全身が震えて動けないんですけど」

「もう今日は用事ないだろ帰るぞ結衣」

「先輩?」

「えっちょまだ私博物館見てないんだけど」

「先輩?!置いてくとかかないですよね?」

「ったくしょうがないな。駅でアイスおごるから」

「アイス?!」

「っちょ待ってくださいよー!!せんぱ~い!!!」とうるさい後輩を置いてひとまず本部へ帰った。

後日

『次のニュースです。台東区上野恩賜公園にて電灯が爆発。幸い死者は出ませんでしたが…』

「くそっまたやられた‼」後輩が頭を抱えて嘆く。

ハイドは黙って画面を見つめていた。

冷たい光が彼の瞳に宿っている。

「うるさい報道が聞こえない」

「でも、これでまた振り出しですよ?暴行の証拠でもあれば逮捕できたのに……」

「大丈夫だここまでは予測範囲内だ。だからわざわざ爆弾処理班も同行させたんだろ」

「いやでも民間に被害が出たら…」

「おい」

ハイドから鋭い視線を向けられていたことに初めて気づく。

「冷静になれ」

「はい…」

しかし妙だ。遠藤はうちのエージェント二人をも倒す優秀な人材。ならば俺たちの尾行にも気付いていてはずだ。

なのになぜ俺たちの前で暗号を送った?

こちらに向けたメッセージか?それともあおり?いや目をそらすための特殊工作か? 

だが襲われたと思われる二人に確認しても「いきなり意識がなくなった」と証拠はなし。

ふぅっと息を吐く。

すると椅子からゆっくりと立ち、机の一番端に埋もれた一枚の報告書を引っ張り出す。

「遠藤の過去を洗え。まずは動機を探る」

「また…ですか?もう何百回とも確認したんですけど…」

「遠藤だって昔から暗殺者じゃない。動機があるとすれば空白の17年だろ」

「ですがもう国内で調べられることは…」

後輩の胸に報告書を押し込む。

そこには、遠藤の両親の名前と、簡素すぎる死亡記録。

『アフリカで事故死』――それだけ。

「そういえば空白の17年の前にアフリカに一度渡航した記録ありましたね……でもアフリカですよ?黒鴉の勢力圏じゃない。うちの組織の報告でもやっぱり事故死と…」

「嘘だな。」

ハイドの言葉は即答だった。

「現地新聞だけ該当号が欠落している。それに事故の調査があまりにも簡素だ……おかしくないか?」

「誰かが拒んだと?……」

「さぁな」

ハイドの瞳が、冷たい炎を宿す。

「とにかく事故当時アフリカでは隠された何かがあった。」

室内に沈黙が落ちる。

やがて、ハイドは立ち上がった。

「航空券を手配しろ。俺が行く。」

「えっ、アフリカにですか?!」

「他に方法があるか?」

ハイドの声は、決意で固まっていた。

その時、スマホが震えた。

画面に映るのは――結衣からのメッセージ。

10分前 結衣 次みんなでカラオケ行こ!どうせ暇でしょ?

ハイドは一瞬だけ目を細め、画面を伏せた。

「……結衣を護衛強化しろ。俺がいない間、絶対に一人にするな。」

「了解。」

後輩が頷く。

――その頃、湯島駅

静かなホームに足音が響く。

男は静かにベンチを通り過ぎる。

『春夜、雪は音もなく落ちる』

電車が通過する音が響く。

ベンチに座っていた男の目は刃のように鋭く輝いていた。


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