第20話 尾行
登場人物説明(途中から見た人用)
ハイド(潜入名:神崎海斗):国家公安委員会情報部エース。結衣の秘匿護衛のため学園に生徒として潜入する。
西岡結衣:秘匿護衛の任務対象で、親が米国大手軍需企業CEOの令嬢。初日にハイドを恋に落とすと宣言。
後輩(潜入名:尾田翼):国家公安委員会情報部技術科エース。ハイドの後輩で、同じく秘匿護衛のため生徒として学園に潜入する。
エリオット:CIAの伝説的エージェント。今回日米共同の秘匿護衛ということでハイドたちの担任として派遣された。ハイドと昔から面識あり。
ナイト(潜入名:風間美幸):CIAエージェント。秘匿護衛として生徒として学園へ。普段は冷徹だが裏でエリオット先輩とお近づきに…と思っている。意外と甘党。
遠藤:謎の男。経歴に17年の空白があり今までの結衣の暗殺未遂の実行犯の最有力人物として追われている。
移動方法は見た目上車には乗れないため電車だ。現場まで19分はかかる。
その間に何も起きなければいいが…
耳に着けているマイクロ無線機より尾行の報告が来る。
―こちらZ2。ターゲットは恩賜公園方面に向かって移動中―
―Z1了解―
ハイドは電車の窓越しに街を見ながら、心の中で呟く。
何も起きなければいいが…まあほとんどが俺の同期のエリートたち…そう簡単にはくじけない
「こちらZ2ターゲッ…」
その瞬間、無線が途切れた。
「……Z2?」
ノイズだけが耳を刺す。嫌な予感が背筋を走った。
「通信状況確認してくれ」
「っ残念ながら…正常です」
ハイドは舌打ちをし、下を向く。
真っ暗な地下鉄の横から流れてくるライトがハイドの横顔を照らす。
「…先輩?」
2秒ほどの沈黙のあとハイドはすぐに顔を上げた。
「問題ない」
真顔だった。
その顔はいつもの嘘をついている顔だった。
「追尾だ。ターゲットの居場所を防犯カメラで確認しろ」
「はい」
二人は電車を飛び降り、恩賜公園へ急行した。
だんだんと先輩の足取りが早くなる。
――そして、見つけた。
ベンチの影に、Z2チームの二人が倒れていた。呼吸はある。だが完全に意識を失っている。
「殺されていない…?」後輩が安堵したように息を吐く。
「…」
もう次はないという事か…
もう敵にばれている。
「先輩?」
「本部に救援要請。防犯カメラを探せ」
「調べてみます」
その時、後輩が端末を見て叫ぶ。
「ターゲット、まだ動いてます!上野公園方面!」
「行くぞ!」ハイドは駆け出した。
そしていつしか憎き遠藤の背中が見えてきた。
必ずお詰めてやる。
俺が絶対に!!!
だんだんと遠藤の背中が近づいてくる。
――とその時、最悪の偶然が重なる。
「あれ?神崎くん?」
今の俺には悪夢にしか見えない。私服姿で、満面の笑み。
「たまには博物館に勉強しに来たの。まあ、私は優秀だから特に学ぶこともないけどね!」
ハイドの脳内で警報が鳴り響く。
最 悪 だ…よりによって今か。
「……お前、なんでここに」
「え?気になる?実はねえ私博物館に勉強しに来たの!たまにはそういうことをしてもいいかなあと思って~まあ優等生の私に学ぶことなんかないと思うけど」と結衣がニヤニヤと笑う
さすがにこれはマズイ。
まさか結衣の護衛まで…と後ろを振り向くと木の陰でうちの組織の土曜の結衣の護衛担当のやつがこちらをとても気まずそうに見ている。
見てるだけじゃなくて何とかしてほしい。ほんとに
ハイドは声を押し殺し、後輩に目で合図する。
後輩は必死に笑顔を作りながら、結衣に言った。
「いやー偶然ですね!僕らも公園を散策しに来たんですよせっかくだし一緒に行きましょう!(棒)」
(おい!!!!!なぜ連れてくる!)ハイドの心の叫びは届かない。
こうして、尾行+結衣の強制同行という地獄のミッションが始まった。
ほんとは送り返したかったが、ごねられて一人でどこかへ行かれるほうが困るので仕方なくつれてゆく。
雑踏の中、遠藤の背中を追いながら、ハイドは結衣の話に振り回される。
「ペンギンいるかな?」
「ここ博物館だ、ペンギンはいない」
「えー、じゃあ恐竜とか?っていうか神崎、顔怖いよ?」
怖いのはお前の行動だ…
視線を電灯に走らせる。
一見誰にでもある行動。だがその違和感をハイドは逃さなかった。
歩調、瞬きの回数、指の角度…すべてが微細に違った。
暗号か。だとすれば考えられることは近況報告。きっとあの電灯に隠しカメラが…
だが、結衣の声がその思考を切り裂く。
「ねえねえ神崎、これ見て!ロコモコ協会だって!変なのww」と大声で笑う。
遠藤の耳がピクッと反応する。
(バカ―!!!!今それ言うなー!!!!!)
後輩と協力し結衣とともに茂みダイブする。
マズイ…聞かれたか?いや、これでバレないはずがない!!!
実際遠藤のいた方向を見るとすでにいなくなっていた。そりゃそうだ。
まあ、殺されなかっただけましか…とりあえず結衣を送り返して…
手に柔らかい布があることに初めて気づく」
気づけば自分は結衣を抱いていたのだった。




