第17話 嘘
歓声と音楽が遠くで響き、カーテンの隙間から差し込むライトが、埃を銀色に染める。
ハイドはゆっくりと歩を進める。足音を殺し、呼吸を整える。
顔を見ただけで誰だかわかった。
通称・闇の惨殺者 片岡修三 裏の世界ではその名を知らぬ者はいない。
「…来たか。」
低い声が闇を裂いた。
次の瞬間、刃が光を弾き、ハイドの頬をかすめる。
ハイドは即座に身を翻し、カーテンを裂いて距離を取る。
殺し屋の動きは異常に速い。ナイフと毒針を交互に繰り出し、まるで影が踊っているようだ。
「遅かったな、スパイ。」
「…お前を生かす理由はない。」
ハイドの声は氷のように冷たい。
殺し屋が突進する。
ハイドは舞台の支柱を蹴り、宙を舞う。
刃と刃がぶつかり、火花が散る。
カーテンが裂け、ステージの光が一瞬だけ二人を照らした。
観客の歓声が遠くで爆発する――だが、この裏側は地獄だ。
ハイドの拳が殺し屋の顎を打ち抜く。
だが、殺し屋は笑った。
「遅い。」
毒針がハイドの肩をかすめる。
瞬間、ハイドは殺し屋の腕を掴み、骨を折る音が響いた。
「…終わりだ。」
ハイドは無表情でナイフを奪い、喉元に突きつける。
殺し屋の目が見開かれ、静寂が訪れた。
遠くでうちの文化祭の目玉の花火が上がる。
ハイドは血に濡れたカーテンを踏み越え、夜の風を浴びた。
「おまたせ」
「お帰り神崎ってなんか服変わってない?」
「ちょっと転んでな…」
「あんたって転ぶんだ」
「人間だからな」
「人間…」後輩が復唱する。
そうスパイは人間。もちろん求められることは「完璧」だが最初のうちは失敗して当たり前だ。俺も後輩くらいの時は何度も失敗し殺されかけてくじけかけた。
「尾田…」
「俺の焼きそばが…あの時しっかり持ってれば」後輩を一発殴る。
「何すんですか!!!」まあ無事でよかった。
「ありがとなナイト」
「任務だ。気にするな」少し微笑む。
しかし高橋が違う以上真犯人に時間を稼がれたことになる。つまり真犯人はすでに俺たちがかぎつけていたことを知っていた。あの防犯カメラ映像はわざわざ高橋の変装をして高橋のパソコンで暗号をうったということだろう。高橋にはとても悪いことをした…
少し気を静めていると結衣が寄ってくる。
「ねえ文化祭どうだった?」結衣がほほ笑む。
「…よかったんじゃないのか。まあお前撮影中よく気絶してたけどな」するお結衣の顔が赤くなる。
「変なこと言わないでよ‼」
「悪い」
花火が一発上がる。
「ねえ」
「ん?」
「来年もまたみんなで見れるかな?花火」
二発花火が上がる。
正直来年まで任務が続いている可能性は低い。いやそうしなくてはならない。だけど…
「きっと見れるさ」
「うん!来年も一緒に見ようね!みんなで!」
花火が上がる
これは嘘だろうか。いやこれ以上結衣を命の危険にはさらしたくはない。嘘。浮かべている笑顔の裏は嘘で埋め尽くされている。俺はうそつき最悪の男だ。スパイはどんな状況でもうそをつかなくてはならない。でもこれでいいのだろうか?一瞬ハイドにそのような考えがよぎる。まあどちらにせよ来年まで俺たちが生きていたらの話だが…
どうも猫吉です!この度はスパイは踊らないを読んでいただき誠にありがとうございます!
さてそろそろ本編も内容が進んできましたがここで一つスピンオフを書いてみようかと思いまして読者の皆様に質問です。
「どのキャラのスピンオフを書いてほしいですか?」
・コメント欄にどうぞ!
・複数人いても構いません




