第16話 文化祭
その後もろもろの撮影が終わり文化祭当日。学園は朝からにぎわい、大混雑していた。今日がこの任務最終日…これで結衣ともこの幼き日の体ともおさらばである。今日は結衣のわがままに精いっぱい付き合ってやろうと決めた。今日一日ぐらい頑張ろうか。
「ねえ今日一緒に回らない?」
「別にいいけど」すると結衣はかなり驚く
「いいの?!」
「ああ」
「いつもだったらやめとくっていうのに…(もしかして落ちた?…いやこいつの今までの傾向上それはない)」
「なあ結衣…今まで悪かったな」
「ん?何のこと?」そういうと思ったよ…
「何でもない」今日ぐらいね…
その後4人で屋台を回ることとなった。結衣の笑い声が続く。結衣が焼きそばを頬張り、翼が「先輩、これ絶対食べてください!」と騒ぐ。このような光景を見ているとなぜか笑顔が…
シャキッ――金属音がした。
視界の端で、男がナイフを抜き、結衣に向かって突進する。
「結衣!」
ハイドの体が勝手に動いた。時間がスローモーションになる。
刃が光を弾く前に、ハイドの腕が男の手首を捻り、骨が折れる音が響いた。
「体調悪い人だ。出口まで運ぶ。」
ハイドは無表情で男を引きずり、結衣はチョコバナナ買ってくる!と後輩やナイトとともに走っていった。
その時、無線が鳴った。
「こちら本部、現場全諜報員に告ぐ。高橋は無関係。繰り返す高橋は無関係。利用されただけだ。」
ハイドの目が細くなりチッと舌打ちをする。完全に俺のミスだ。俺が敵を楽観視したから何の関係もない民間人を巻き込んだ。完全なスパイ失格だ!
――じゃあ、真犯人はまだここにいる。いったい誰だ?
後輩とナイトに目線を送る。すると二人はうなずきできるだけ人ごみのほうへ行く。そうすれば暗殺者も手を出しずらくはなる。しかし結衣も結衣である。
「えーっまだあそこの売店のチョコクリームシュークリーム食べてない!みんなで食べようよ!」
「いやでも」
「また後でで」
「せっかく今すいてるのに」と言って一人で強行していく。
するとまたもや横から暗殺者が迫るが今回はナイトがしれっと排除してくれた。いざ売店に着くと今度は後ろから電気ショッカーを持った男がやってくる。すぐに結衣が頼んでる間に腕をつかんで手首を折る。あとはひじうちで気絶させた。と今度は結衣がシュークリームを俺の口に突っ込んでくる。何から何まで大変である。
「次お化け屋敷行こうよー」暗闇はさすがに避けたい。
「いや…」
「あっ!ビビってんだー」
「ちげーし」
「じゃあ行こ」と手を引っ張ってまた強硬でお化け屋敷に行く。すると予想通り後ろから本物のナイフを持ったお化けがやってくる。それなのにもかかわらず「キャー」と怖かったのか左腕にしがみついてくる。暗殺者を目の前にした暗闇で左腕が使えないのはマズイ。
「ターゲット、発見!」
結衣が振り向く瞬間、ハイドは低く呟いた。
「結衣、出口はあっちだ。」
結衣が振り返った瞬間、骨が折れる音が響く。
ハイドの手が暗殺者の腕をひねり、次の瞬間、回し蹴りで壁に叩きつけた。
暗殺者は呻き声を上げるが、ハイドは無表情で襟を掴み、
「体調悪い人だ。出口まで運ぶ。」
と淡々と引きずる。
「えっ、どうしたのその人?」
「驚きすぎて倒れたんだろ。」
「やっぱうちのお化け屋敷って怖すぎない?!」
背後で暗殺者が白目をむいて失神していることなど、結衣は知らない。
極めつけはカフェでスナイパーの狙撃だ。一瞬キラット奥の建物でで光が見えた。するとハイドは窓から腕を出しサイレンサー付き拳銃で後ろを向きながら射撃する。見事それは命中しスナイパーは落ちてゆく…
「でさーつぎあそこいこーよ―」時はもう夜三人全員目の下にクマができている。そりゃそうだ結局今日一日で一人当たり20人近くの暗殺者と格闘したのだから。まあ60人も殺ったのでさすがに全滅したと思うけど。これで文化祭最後まで持ちこたえれば任務は成功か…
「少し校庭のステージの奥で休まないか?」
「別にいいけど?そんなに歩いたっけ?」疲労が体にしみる。
人ごみを通りステージ裏に4人一行は突き進む。とにかく今は静かな椅子のある所で座りたい。
その瞬間、すれ違った男が後輩の肩を軽く叩いた。
何気ない仕草――だが、次の瞬間、後輩の顔色が変わった。
「…せんぱ…い…毒…」
膝が崩れ、視界が揺れる。
ハイドの心臓が一瞬止まった。
「風間、二人を連れて行け!」
「尾田君大丈夫?熱中症?」
「いやでもこいつはお前だけじゃ…」
「いいからいけ」鋭い目線を送るとナイトは軽くうなずき笑顔で二人を連れて行った。
殺し屋が振り返る。笑みを浮かべ、闇に溶ける。
ハイドの視界が赤に染まった。
「…殺す。」




