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くいだおれ令嬢秋香さん~清楚モードがギャル爆発!~  作者: サファイロス


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4/5

千里中央のパンケーキ屋さん

 午後三時すぎ。

 駅直結の大型書店には、やわらかなクラシックが流れていた。


 白鳳女学院の制服姿で立ち読みしている少女の姿がある。

 ライトブラウンの髪をゆるく巻いたミディアムヘアが、

 肩の上でふんわりと揺れ、指先には一切の無駄がない。


 ページをめくる仕草も、まるで礼儀作法の一部のよう。

 ――そう、彼女は「くいだおれ令嬢」こと、秋香あきか

 完璧なお辞儀、整った制服。

 だが、ひとたび“食”の話になると、

 その瞳はまるで別人のように輝く


 ふと、本を閉じて呟いた。

「……ふわふわのパンケーキ、ですのね。

 表紙からして、もはや芸術……食べたいですわ」


 そう言って本を戻し、

 同じフロアの奥にあるパンケーキ専門店へ――。


 秋香がが選んだのは、

 ミルフィーユパンケーキ(8段重ね)とオリジナル紅茶。


 テーブルに届いた瞬間、

 秋香のまつげがふるっと震えた。


 皿の上には、黄金色に焼けた八段の塔。

 一段ごとに厚みがあり、ナイフを入れる前から“ぷるぷる”と小さく揺れている。

 上には小さな円型のバターが王冠のようにちょこんとのっていた。


「……っ、高さ、ありすぎませんこと?

 これ、建築現場ですわ……! 倒れませんの?」


 思わず漏れる本音に、周囲の客が微笑む。

 しかし、秋香の視線はもうパンケーキから離れない。


 焼き立てのパンケーキは、

 皿の上で小さく「ぷるん」と揺れる。

 ナイフを入れた瞬間、ふわりとメレンゲの空気が逃げて、

 まるでスフレを切っているようだった。


「まずは、何もつけずに――」


 小さく一口、ぱくり。

 秋香のまつげが、ふるりと震える。


「……っ、やば……。

 これ、パンケーキ味のなめらかプリンですわ。

 とろけるというか、もうほぼ液体。

 卵の香りが濃厚で、舌の上で“ふわっ”て消えるの……。

 パクパクいけますわ……っ」


 紅茶を一口。

 オリジナル紅茶の香りが、パンケーキの卵の余韻と溶け合って、

 まるで春の午後みたいにやわらかい。


「では、生クリームを……少しだけ」


 フォークでそっとすくい、重ねる。

 控えめな甘みが、パンケーキのふわふわと同調して――


「っん~……っ。

 甘すぎないのが、逆に罪深いですの……っ。

 これは“清楚の甘味革命”ですわ。」


 そして、メープルシロップをとろり。

 琥珀色の液体が、段の間をゆっくり伝っていく。


「きゃ……。見てください、このとろけ方。

 甘さ、倍増っ!

 でも後味さっぱりで、いくらでもいけますわ~!」


 最後にバターをのせて――

「……はい、完全に優勝ですの。

 もはやスイーツ界の貴族の椅子、ここにあり、ですわ」



 窓の外、千里中央の街路樹がゆらめく。

 秋香は満足そうに紅茶を口にして、

「次は……どこのパンケーキを制覇いたしましょうかしら」

 と、上品に微笑んだ。


 ――その瞳の奥には、

 次なる“くいだおれの標的”が、すでに映っていた。

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