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くいだおれ令嬢秋香さん~清楚モードがギャル爆発!~  作者: サファイロス


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21/22

日本橋のジビエ屋さん

 夕暮れ時の日本橋。

 近鉄の高架をくぐる風は少し冷たく、

 秋の気配をそっと街へ落としていた。


 その中を歩くのは、ライトブラウンのロングヘアを揺らす少女、

 白鳳女学院の令嬢―― 秋香。


 淡いサックスブルーのトップスは、袖のシアー素材が光を受けてふんわりと透け、凛とした中にやわらかさを添えていた。

 肩から流れる生地は繊細で、歩くたびに空気をまとうように揺れる。

 白地に線画の花模様が散ったロングスカートは、涼やかで上品な存在感を放ち、足元まで清らかな印象を引き立てる。

 グレイッシュなパンプスが全体の色味を締め、爽やかで清潔感あふれる“今どきのお嬢様”を完成させていた。


「……こちらのお店、以前から気になっておりましたの」



 目的の店へ足を踏み入れると、

 木のぬくもりと鉄板の音、そして香ばしい香りが迎えてくれた。



 まず運ばれてきたのは――


 カンガルーの赤身肉。


 鉄板の上で焼かれたそれは、

 しっとりした赤色で、脂がほとんどない。


「まぁ……なんて綺麗な赤身……。いただきますわ」


 一口。


 しっとり。

 やわらか。

 そして、驚くほどクセがない。


「……っ、おいし……。

 赤身なのに、このやさしさ……上品な旨味が広がりますわ」


(え、ウマッ!? なにこれほんまにクセゼロ!?

 うそやろ……これ家帰ったら絶対検索するやつやん……)


 噛むたびに旨味がふわりと広がり、

 秋香の目が自然と細くなる。



 次に店員が笑顔で持ってきたのは――

 大きな鍋。


 白菜が敷き詰められ、

 その上に白く透き通った脂身が美しい“アナグマの肉”が乗っていた。


「こちらが……アナグマ……?」


 煮立ってくると、

 白菜がくたっと柔らかくなり、

 肉の脂がじゅわりと鍋全体に広がる。


「では……いただきますわね」


 秋香は、くたくたの白菜にアナグマ肉を包み、

 恐る恐る口へ運ぶ。


 一瞬。


 次の瞬間。


 甘い。


「……っ、あ、甘……!? 甘さが……とろけ……」


(なにこれ天才!? 脂の甘みバケモンやん!

 こんな綺麗な脂ある!? 幸せやん……)


 脂の甘さが白菜の水分と合わさり、

 驚くほど軽く、するりと喉を滑る。


「こ、これは……おすすめされる理由がよく分かりますわ……!」


 秋香の頬がほんのり赤く染まった。



 アナグマの余韻がまだ体に残っている中、

 次に運ばれてきたのは――


 イノシシのロース。


 鉄板で焼かれたロースは、

 縁に美しい脂身がつき、

 香りだけでご飯が欲しくなるほど。


 一口。


「……っ、なんて力強い……!

 なのに、上品な甘さが残りますのね……」


(うわ、これは“山のステーキ”やん。

 うますぎて笑う……ジビエってこんな世界あったん……?)


 噛みしめるほどに旨味が滲み、

 秋香の表情はすっかり“至福そのもの”になっていった。



 食べ終わり、店を出ると、

 夜の日本橋ライトが少女を照らした。


「……ジビエとは、こんなにも奥深いものですのね」


 濡れた路面に光が反射し、

 秋香は上品に、しかしどこか弾んだ足取りで家路についた。

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