鬼盛り唐揚げ定食屋さん
大阪・福島の駅前は、どこか中華の香りと人いきれが混ざり合っていた。
そんな雑多な空気の中で、秋香は、いつも以上に可憐な空気を纏っていた。
白地に淡いグレートーンの花柄が描かれたロングワンピース。
繊細な模様が布の上で風に揺れるたび、まるで小さな庭園がそこに咲いたように見える。
高めの位置で切り替えられたウエストラインが、
秋香の華奢なシルエットをより上品に引き立てていた。
襟もとは小さなフリルに縁取られ、
首元まで並んだボタンが、清楚さをそっと示している。
腕にかけた淡いコーラル色のカーディガンは、
ワンピースの淡色にほんのり温度を添え、少女らしい可愛らしさを引き立てた。
――まさに、上質さと可憐さを備えた“白鳳の令嬢コーデ”。
街ゆく人が思わず振り返ってしまうほど、秋香は静かに美しくそこに立っていた。
「……まぁ。こちらが“若鶏の唐揚げ”で有名なお店、ですのね」
淡いライトブラウンのハーフアップが、秋風にふわりと揺れる。
ガラガラ、と扉を開けると――
厨房から豪快に油の弾ける音。
テーブル席は満席で、ホールの女性の明るい声が飛び交っていた。
「いらっしゃいませっ!」
秋香は上品に会釈し、席へ案内される。
「若鶏のからあげ定食をお願いいたしますわ」
白い湯気がのぼるスープ。
ふんわり香るキャベツ。
小皿には細切りのたくあんと絹ごし豆腐が整然と並ぶ。
そして奥には――
圧倒的存在感で鎮座する若鶏の唐揚げ。
どん。
「……まぁ……! なんて大胆な……!」
皿の上には、外側が“ザクッ”と音を立てそうなほど
厚みのある衣をまとった唐揚げが山のように盛られていた。
箸で持ち上げるだけで、“ゴツッ”とたしかな手応え。
まずは、ひと口。
ザクッ――
じゅわぁ……。
「……っ……! 香ばしくて……なんて瑞々しいのかしら……!」
(衣ザクザクすぎん!?
中、肉汁じゅわーーー!!
やば、これ無限に食べるやつ!!)
唐揚げの横には、例の“魔法の粉”のような中華スパイス。
秋香は少しだけ指先でつまみ、そっと振りかける。
「……ふふ。香りが……本格的ですわね」
(うわっ、これ中毒なるやつっ!
やっっば、味バチコーン決まる!!)
ネギソースの甘い香りがふわりと鼻をくすぐる。
タレにカラシを溶いて――
そこへ少しだけマヨネーズを添えて――
「……まぁ……。たくさんの表情が楽しめますわね……!」
(味変の宝石箱やんコレ!!
全部うまい!全部優勝!!!)
ひと口ごとに違う表情を見せる唐揚げ。
箸が止まる気配など、まるでない。
水が少なくなったコップに気づいたホールの女性が、
ふっと優しく微笑んで、コップごと交換してくれた。
「こちら、お下げして新しいものをどうぞ」
秋香は少し驚きつつ、ほのかに笑みを返す。
「……まぁ。なんて丁寧な……心が温まりますわ」
(やっば……こういう気づかい、刺さる……!
萌えー……!!)
唐揚げのザクザク感と肉汁の甘み。
ネギソースの爽やかさ。
スープの優しい風味。
すべてが絶妙に調和していた。
「ごちそうさまでしたわ」
立ち上がる秋香のスカートが、ふわりと風をはらむ。
「……若鶏の唐揚げ……うわさ以上の実力でしたわ。
ふふ……次は、どなたをお誘いしようかしら」




