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5話


 彼と会ってから1か月くらいになる。こちらの質問攻めにより、彼のことについては色々知ることができた。ずいぶんと仲良くなれた気がしている。始めのときより、彼はだいぶ丸くなったように思う。僕はというと夏休みにはいった。最近はずっと川辺で過ごしている。家にはおばあちゃんがいて気まずいし、ずっと家にいても何も思い浮かばない。彼といる方がよっぽど有意義に過ごすことができるというわけだった。

 龍を小説のネタにしていいかと聞いたら彼はあっさり了解してくれた。別に、丸々彼のことをお話にするわけではない。元にするのは、居場所、話し方、性格、見た目のイメージ、彼の話で面白そうなものなど。そして今は彼の横で堂々と小説を書いている。コンテストに応募するものだ。夏だしホラーがいいかとも思ったが、ホラーを書くだけの脳がなく、いつも通りの恋愛ものになった。龍の神隠しにあった女の子に恋をしていた男の子の話。女の子に会うために男の子が龍に神隠しされようと奮闘する話だ。それを言ったとき、彼は若干いやそうな顔をしたが、知らなかったことにしている。

「ここ、文字が間違っているぞ。」

「あ、ほんとだ。ありがと。」

「あぁ。」

「流れとしてはどう?」

「いいんじゃあないか?現実味はないが。」

「一応ファンタジーだからね。仕方ないと思って。」

「…そう何人も神隠しはできない。簡単にできるものでもないからな。」

「わかってるよお。何回も聞いたし。」

「互いに了解も必要だ。こっちもそれなりの覚悟がいる。」

「それも聞いたよ。それだと少し物語として成り立たなくなっちゃうから。」

「そういうものか。」

「うん。そういうもの。」

 彼としては現実味がないことにどうも納得していないらしい。具体的には、神隠しの設定についてどうにも人間が思い描いているものと違うところがあるらしく、逐一指摘をしてくる。もちろん彼には協力してもらっているので、変えることができるところなるべく変えるようにしているが、変えると話が成り立たなくなってしまうところは申し訳ないがそのまま残させてもらっている。彼との意見の相違について特に困ったのは、恋愛関係の人間の心理について。あいつはそこについて本当にわかっていないのだ。それに意見も相当なものだった。

「なぜこいつは想いを伝えない?早々に伝えてしまえばいいだろう?」

「なんで女のためにと自分の身を危険にさらすようなことをする。こいつは死にたいのか?」

「この龍も本気で守りたいならもっとやりようがあるだろう。相談に乗るだけとは何て腰抜けなやつだ。」

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