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3話

 マイナスな感情ばかり浮かんできて、場の空気が沈んでしまうことはよくある。こういうとき、無駄に話を続けると自分も相手も話すのが辛くなってしまう。では、話を展開させるためにはどんな言葉をかけるべきか。



「やっぱり龍だったんですか!ほんとにいるんですね。」

 


 僕の持つ正解は、相手が予想できないような言葉をかけること。つながりを持たせながら、強制的に話の雰囲気を変える。謝罪や同情のような話の流れを続けるようなことはしない。自分まともに話せなくなるから。相手は急に話の流れが変わって混乱する。その混乱の間に自分の心持をポジティブなものに置き換え、自分が話せる状況を作る。

 明るく見せるのは昔からの僕の特技。頭の中を空っぽにして、最初に思い浮かんだポジティブな感情を思い浮かんだときに言葉にする。ただそれだけのこと。だから今回も単純に、最初に出てきたポジティブにできる言葉をただ口にした。少しだけ、恐怖など感じていないと思ってくれることも期待して。まあ、そんな誤魔化しが、考えが読めるものに通用するはずもないのだが。

 彼は少し驚いた顔をしていた。先ほどまで考えていた言葉と僕が発した言葉の印象が全く違うものだったからだろう。だがやはり通用せず、すぐに先ほどの顔に戻ってしまった。

「…怖いと思っただろう。」

「いやいや、そんなことないですって。」

「逃げようと思っていたくせによく言う。」

「ばれてますよねぇ。そりゃあ、今まで見たこともないもの見たら誰だって怖いと思いますよ。少し座りません?この岩の上とか。」

 丁度いい岩を見つけ、腰を下ろす。恐怖の感情はまだある。小さい頃に聞いていた話も覚えている。悲しそうにしている彼を見て、ほおってとくことができなかっただけ。ただ、彼を知らないのに畏怖するべきではないのではないかと思っただけだ。実際、危害を加えられているわけでもないのだから。もしかしたら今後危害を加えようとすることもあるかもしれない。それならいっそのこと仲良くなってしまえばいい。そしたら危害が加わる可能性も少なくなるだろう。

 誘うと彼は素直に岩に腰を下ろした。さて、何から質問するべきか。やはりいろいろと考えてしまう。彼が黙ったままでいるのはたぶん僕が質問するのを待っているのだろう。先ほどから、夏だというのに妙に涼しい。はたと疑問に思ったとき、彼がそれに対して答えた。

「ほら触ってみろ。それでわかる。」

「え、じゃあ。…うわ、冷たい。」

「熱を吸収しているんだ。だから俺の周りは空気が冷える。」

「へぇ、その熱は何処に行くんですか?」

「さあ?どこかしらの水にでも行っているんじゃないか?」

「そんな適当な。あ、僕が触って火傷とかしてません?」

「大丈夫だ。していない。」

「不思議ですね。龍って。」

「そうか。」

 冷たい以前に実体があることに対してまず驚いた。まるで人の皮膚に触っているような感覚。違和感としてはその皮膚が人間ではない冷たさだということくらいだ。氷のような手を引くような冷たさというわけではなく、少しひんやりする程度の冷たさ。言ってみれば、水に触れたときみたいだった。

 彼の様子を窺う。まだこちらに手を出してくるような動きは見せていない。仲良くなるとは言っても、まだこちらの安全は確実なものになっていないので、用心するに越したことはないだろう。彼は何か言いたげな表情を見せたが、すぐにその表情はないものになった。

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