11話
進路を見直した方がいいと言われて、いくつか学園祭に行ってみた。確かにいいと思うところはもちろんあったが、行きたいと思うかどうかはまた別問題だった。
この時期になると、学生同士で進路について話をすることが増えてきた。みんなと話をするたびに、先生に言われた言葉がちらついてどうしようもない気持ちになる。そして、やはり夢としては珍しいため、バカしてくる人もいた。応援をしてくれている友達や両親に相談することはできなかった。彼にも、詳細は語っていない。
進路についてあれこれ悩んでいるうちに、僕の学校は冬休みに入った。年が明けて、4月になるともう高校3年生になる。進路を決めるには、もうあまり時間がなかった。
冬休みに入って、僕は彼のところへ行くことが少なくなった。別に彼と喧嘩したわけではない。家の電話が気になって仕方なかったからだ。応募した小説のコンテスト。受賞作品の発表まで残り一か月というところになる。要は最終選考を突破したならば、そろそろ電話がかかってくる頃合いなのだ。電話が鳴るたびに電話の傍に駆けつけては、お母さんが話す内容に落胆する日々を過ごしている。そもそも確実にかかってくるとは決まっていない。何ならかかってこない可能性の方が高いというのに。それでも期待してしまうのは人間であるが故だろう。
・・・また、電話が鳴った。お母さんが忙々とその電話に出る。どうやら親戚のおばさんだったらしい。少し世間話が続いた後、今年の挨拶を終えてお母さんは電話を切った。正月というのはなぜこうも電話の数が多いものか。年賀状だけでも十分ではないかと思ってしまう。自分でも機嫌が悪いのがわかる。ただ落ち着こうとひたすらに小説を書いて、玄関にある水槽の中で眠っている金魚を眺めてを繰り返していた。
彼がどうしているのか、彼は今どこにいるのか、彼の体温はどれほど冷たくなっているのか。そんな変なことばかりを考えている。彼とかなり親しくはなったが、彼は不思議なことだらけでまだ知らないことの方が多い。
「もっと教えてくれたっていいと思うんだよね。僕もあいつのこと名前で呼びたいし。名前の一つくらい教えてくれないかなぁ。お前だったらあいつの心の中わかったりしない?」
そう金魚に愚痴のようなものをこぼす。奴は眠っているから聞いているとも思っていないし、答えなんかも望んでいない。ただの本音の独り言だ。こんなとことで言っても、どうしようもないこと。電話のことや彼のことやらで変に殺伐とした感情が渦巻いていて、若干血生臭いにおいを鼻の奥に感じる。本音を少し吐き出したらマシになるかと思ったのだが、どうやらそうもいかなかった。
またしばらくして、電話が鳴った。変わらずお母さんが電話に出る。様子を窺っていると、お母さんがこちら向いて手招きをした。そちらへ行って電話を替わる瞬間、お母さんが微笑んで言った。
「今夜はお赤飯にしよっか。」
その言葉を聞き、驚きやら緊張やら様々な感情が沸き上がった。多くも感情に支配されたまま電話に出てしまったが故に最初に発した声が裏返り、途端に恥ずかしいという感情でいっぱいになった。




