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10話

「天くんは、ちょっと進路考え直した方がいいんじゃない?」

「・・・え?」

 そう言われたのは10月の進路面談の時だった。僕は一年生の頃からずっと小説家になるための専門学校を第一志望としている。第二志望と第三志望も小説家の育成学校で、ずっとそれは変わっていない。だから、それを先生も承知だったはずだ。

「り、理由を聞かせていただいても。」

「うん。君がずっと小説家になりたいって思ってるのは知ってるし、頑張って小説書いてることも知ってる。それだけ好きなことに夢中になれるのはいいことだと思うよ。」

「はい。」

「でもね。小説家って売れるのは難しいし、大変だし、頑張っても報われないことも多いと思うんだ。君の頑張って書いた小説も、結果として賞は取れてないわけでしょ?」

「まぁ。」

「天くんは成績いいし、もっと他の進路も考えられるんじゃないの?小説家みたいな曖昧な夢じゃなくてもっと現実的なさ。そっちの方が幸せだと思うよ。」

「・・・でも。」

「オープンキャンパスとかちゃんと行った?行ってみたらいい大学はたくさんあるから。他の進路を考えてみたら?」

「オープンキャンパスには行きましたし、ホームページを見たりもしました。志望の大学以外のところもです。そのうえでそこがいいんです。」

「うーん。この後も学園祭とかもあるしさ。そういうところでもう一回考え直してみてよ。気に入る学校あると思うよ。」

 そう言って先生は僕と一度も目を合わせないまま、次の面談の人の用紙に目を落とした。これ以上聞くつもりなどないのだろう。怒りと呆れを気づかれないように静かに席を立った。

「わかりました。では先生。僕が小説で成果を出したら、進路を応援していただけますか?」

「そのときはね。」

「それはよかったです。ありがとうございました。」

 そう言って教室を出た。目も合わせないし、話は聞かないし、こちらの気持ちは蔑ろにされるし。腹が立って仕方がない。一回も僕の小説を読んでないくせして、賞が取れているか取れていないかだけで一丁前に評価しやがって。

 でも、言質は取れた。別に先生から応援されなくたって進路の希望を変えるつもりはない。僕があんな発言をしたのは単純に腹がだったのともう一つ、言質を取るため。この前応募した小説。彼と一緒に書いていたやつ。あれはもう二次審査を通過したと連絡があった。あとは最終審査の結果待ち。可能性は充分にある。言質は取れたから賞が取れれば先生は僕の小説をちゃんと評価しようとしてくれるだろう。


 少し時間を置いてからさっきの面談について考えてみる。進路についてとやかく言われるのは今回が初めてだった。話を聞いてもらえた気もしないし腹こそ立つけれど、先生はきっと僕のことを考えてくれているんだろう。目が合わなかったのは忙しかったからで、気持ちを蔑ろにされたと思うのは僕のメンタルの問題。きっと僕が先生の優しさに気がつかなかっただけなんだろう。それでも、小説の評価はちゃんと読んでからして欲しかったな。

 落ち込みながら彼のところに行ったら酷く心配されてしまった。小説を書く手が進まず、気持ちが晴れなかった。こういうときにも彼は慰めることをしないでいてくれるのがとても心地よかった。今日はいつもより長く彼に付き合ってもらってから家に帰った。

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