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第7話:クラス分け能力試験 戦闘試験その①

ーサムエル・あるベインー


「ということですので、本日は好きなものを好きなだけ注文することができます。ただし注文したものはなるべく残さないようにお願いします。また、こちらの手前のエリアが本日の1年生のエリアになっております。普段はこういうしきりはありません。入学初日だけです。明日以降は好きな席を利用して頂いて構いません。何か質問はございますか?」


「ないで〜す」


「はい、ではごゆっくりと食事を楽しんでください」


なんかあれだな。

表面的には完璧そうだけど、どこか変な空気がある人だったな。

アルドンス?アルフレッド?う〜ん。アル先輩!

アル先輩は噂通り、いや、噂以上の美貌だった。

ただし、自分は美しいんですオーラは特に発していなかった。

そういう点ではオラベラに似ているかもな。

ロビーにいたクイーンさんとは大違いだ。


今まで会ってきた美女とは2段階上にいるって感じ?

まぁ、周りに美女しかいなく、感覚が麻痺しているのかも知れんが、エリザ、アラベラ、お姉さんとかを普通の美女とするのなら、していいのか?あれらも大分上の方だと思うけど。

まぁ、いいやとりあえず基準にするために彼女らを普通の美女とした場合、オラベラ、さっきのクイーンさん、それにサン姉さんとかが1段階上の美しさ。

そしてアル先輩はそのさらに1段階上って感じだな。

うん、大体そんな感じだろう。

と言ってもアル先輩ってハイ・エルフ?ちょっと違う感じもしたけど…

ハーフ・エルフ?なんのハーフ?

う〜ん。

まぁ、どうでもいいや。

これ以上は興味ないし、食べるとしますか。


食事を頼んで席で食べ始めた。

肉いっぱいのやつを頼んだ。

ちなみに肉食い犬はさきほど大量の肉を食べたのにも関わらず、またほぼ同じくらい量の肉を頼んで美味しそうに食べていた。


「どこにあれだけの肉が入るんだろう?」


「どうしたのサムエル?」


「あっ、エリザ。あのな、あそこの肉食い犬いるじゃん?朝からずっと肉食べてるやつ」


「う、うん。いるね」


「あんなウェスト細く、くびれてて、それにシックスパックなのにどこにあれだけの肉が入るんだろうなと思って」


「き、気になるの?」


「それはなるよ。絶対にお腹に入っている量と体型があってないもん。つかちゃんと見るとオラベラ並のボンキュッボンだね。瞳が紫で、顔も綺麗だし、案外普通にしてればかなりモテるかもな」


エリザはおどろいたような、怒ったような顔をした。


「え、エリザ?、ど、どうしたの?」


「ふん!知りません」


そして食事を頼みに行った。その直後オラベラとアラベラが到着した。


「エリザどうしたの?」


「知らない〜、なんか怒って食事を頼みに行った」


「サムエルがまた、なんか傷つけることを言ったんでしょう?」


「言ってないって」


「それよりさ見た?やばくないアルドニス先輩。初めてオラベラやお姉ちゃんより綺麗な人見たよ」


「うんうん、そうだね」


「私より綺麗な人なんていっぱいいるよ。でもサンさんとかなり良い勝負だね」


「オラベラ」


「何?」


「いないからね。オラベラは本当にそう思ってるかもしんないけど、オラベラより綺麗な人はほぼいないから。つかいっぱいいたら困るわ」


「えっ?」


「もういいや、食事頼みに行こう。ちょっと待っててねサムエル。ついでにエリザの機嫌も直して上げるから」


「ああ、うん、よろしく」


しばらくすると3人とも戻ってきた。

エリザはまだ不満がありそうな感じだったけどそれでも俺の隣に座った。

それにしてもなんで怒ったんだろう?犬科の獣人が嫌いなのかな?

いやいや、今までだってそんなそぶり見せたことなかったし。

う〜ん。わからんな。


それでもアラベラとオラベラのおかげで話がはずみ、特に第2筆記試験の問題について盛り上がった。

第2試験の問題は全員一緒だったらしい。

4人で話している最中に赤毛、赤瞳の小さい男がやってきた。

さっきエリザに手を振ってたやつだ。


「お久しぶりでございますエリザ」


なんか良い笑顔でエリザに挨拶してきた。


「ええと、どなたでしょうか?」


良い笑顔から世界の終わりと思わせる表情になった。


「え、エリザ、ま、まさか僕を覚えていないのか?」


力強く問いかける赤髪少年。


「はい。覚えていません」


赤髪少年は10精神ダメージをくらった。


「は、はは、ははは、まぁまぁ当時はお互いに幼かった。成長した今の姿をわからないこともありましょう。僕は覚えていましたが。エリザ、僕です。ダルビッシュ家の分家のあなたの従兄弟のエリック・ダルビッシュです」


「そんなことはありえないよ、エリックはディスタントヒル魔術学校に通ってるからこんなところにいる訳ないよ。それにエリックは今15歳だからこんな背が低いはずがないわ」


赤髪少年はさらに20精神ダメージをくらった。辛そうだ。


「しかも顔も幼い。あなた、どう見ても12歳くらいよね?」


赤髪少年はさらに30精神ダメージをくらった。もうくらくらだ。


「そんな年齢でミレニアム学園に入学できるのはすごいと思うけど、うそはよくないよ。私の従兄弟のエリックは少なくともサムエルほどの背丈があるはずよ」


50精神ダメージ!もう限界だ!

立っているのがやっと。後何か一言を言えば完全に倒れるぞ。

エリザ、行け!


「うそじゃないよ。どっかで見覚えがあるかと思ったら、昔エリザの家で会ったことあるよ私。あのときの姿とほとんど変わってないからまさかとは思ったけど。エリックで間違いないよ」


「えっ?本当に」


赤髪少年はもう言葉が出ずに、ただ頭で少し頷いただけだった。

思わず赤髪少年にオラベラの回復が入る。


「エリック!久しぶり!あのときから全く変わってないのね」


100ダメージ!

とどめの一撃だ!

まさにオーバーキル。

なんて残酷だエリザ。

伝説の赤き魔女の血縁たるゆえか。

そして、エリックは死んだ…


というのは嘘だけど本当に倒れた。


「あはははは」


「大丈夫エリック?」


「大丈夫です」


「そんなで倒れるなんて女々しいのねエリック」


「ぐはっ」


「もうやめてあげてよエリザ。エリックがかわいそうでしょ?」


「あはははははは。ヒヒヒ。めっちゃ受ける」


ずっと笑ってるのがアラベラ、なんとかしようとしてるのはオラベラ、相変わらず氷の女王モードを崩さないのはエリザだ。

と言っても別に不思議なことじゃない。

エリザはお姉さんを含む俺ら4人といるときはフレンドリで親しみやすいが、そうじゃない人に対して大抵の場合こんな態度である。

赤髪少年が悪い訳じゃない。

ただたんにエリザの中の仲間?友達?という枠に存在しないだけである。

従兄弟であってもその枠に自動で入れるわけじゃないのである。


「あははははははは」


「もうそろそろお昼の時間が終わるね。エリックも早く自分の席に戻りな」


「ちょっとエリザ!エリザの家族なんだんから一緒に行動すればいいでしょう?」


「そうなのエリック?私達と行動しないと不安なの?それなら考えなくもないけど」


「いいえ。大丈夫です。僕はただあいさつに伺ったまで。面倒を見てもらおうなど微塵も思っていません」


「あ、そうなの。じゃ、試験の残り頑張って」


喜怒哀楽を込めずによくすらすらと言えるなエリザ。


「エリザ。先ほども言ったように、あなたに面倒を見てもらおうなどと微塵も思っていない。なぜなら、あなたをお守りするのはこの僕の役目であるからです」


「結構よ」


「なぜ!?あなたをお守りするのが分家のものとして、あなたの従兄弟としての僕の役割だ」


「はぁ〜。私は自分の身は自分で守れる。あなたに守って頂く必要はない。それにもしも誰かに守ってもらう必要があるのならば、ここにいるオラベラ、アラベラそしてサムエルに守ってもらうわ」


「こんな軟男にエリザが守れるとは思えません。さっきから一人だけ何も話さずに、まれで自分のことではないようにぼっとしてるだけ!こんなのがエリザを守れる訳ないじゃないか!」


えっ!?俺?オラベラとアラベラもって言ってたよ。


「あんたにサムエルの何がわかるのよ!サムエルはね優しくて、強くて、どんなときでも一緒にいてくれるの、音楽の天才でその音楽でどれだけ私の心を癒してくれたと思ってるの!?サムエルを知らないのに勝手に出てきて彼の悪口を言うな!」


エリザは立ち上がり、赤髪少年に向かって怒鳴った。

あ〜あ。エリザを怒らせるとまずいって。

怒ったエリザは伝説級の怖さだから。

ていうか食堂にいる全員の注目を集めちゃってるよ。

アル先輩まで来ちゃったじゃん。


「大丈夫ですか皆様。何かありましたでしょうか?」


エリザはそこで我に戻り、頭を下げた。


「何でもないです。うるさくしてしまってすみません。僕はもう下がりますのでご心配なく」


「そうですか、ここはみんなが使う場です。今後はくれぐれもご注意を」


「はい」


俺ら一同は返事した。


「エリザ、すまかった。エリザのご友人のことを悪く言うつもりはなかった。オラベラ王女もアラベラ様も失礼しました。今日はこれで失礼する。また寮で話そう」


エリザは返事しなかった。

オラベラとアラベラは赤髪少年に気にしないでと宥めた。

俺はというと赤髪少年にめっちゃ睨まれた。

なんでだ?


「エリック君寮で話そうって、エリザと同じクラスになれる自信があるのかしら?」


「お父さんが言ってた。なるべく家族や友人が一緒になるようにしているって。だから可能性は高いんじゃない?」


「その法則だと私達全員同じクラスってことになるけどね」


お昼の時間は終わりセバス先生をはじめとする1年の担任の4人が食堂に集まった。

オメガクラスの担任はまだ来てないらしい。

我鷲丸も犬先生に連れてこられてた。


「食事はちゃんと食べたか?では、これから戦闘力試験の会場へと移る」


歩いて数分、別校舎。校舎と呼ぶのは少し違う気もするが。

う〜ん。あえて例えるのならばその建物は闘技場に近い雰囲気があった。

入ると真ん中に大きなフィールド、その周りを観客席で追われている。

そして至る所に見たことない装置がたくさん。

ラ・カハの闘技場よりはハイテクで綺麗な感じだ。


「この場所は主にミレニアム学園の魔術、武術大会が行われる場所だ。ただし、戦闘訓練に適した施設なので戦闘授業や本日の戦闘試験などにも使われる」


魔術、武術大会ね。

本気でやればどこまで行けるんだろう?

テッド兄さんは確かどちらとも優勝経験あるんだよな〜。

と言っても俺にとってもあの人は規格外だからあんまり基準にならないな。

まぁ、この戦闘試験で同学年の実力を見るとしますか。


「では、これからあなた達には1対1の戦闘をしてもらう。1人あたり3〜4試合を行う。ビーストマスターの生徒は個人だけのときの戦闘力と相棒と一緒にいるときの戦闘力どちらとも計らせてもらうためそれ以上に試合が多くなる。発明家も同じで、作成した物があるときとないときの戦闘力を計らせてもらう。武器は刃が無いものを使用する。また、このフィールドでは魔術の殺傷能力を大幅に減少させている。そして回復魔術に秀でている先輩方にも協力を頂くため大きな怪我や死亡の可能性は限りなく低いと考えている。ただし、これは戦闘だ。いつも万が一の可能性があることを忘れてはならない。そういう緊張感を持って試験に挑んで欲しい。では本日協力を頂く先輩を紹介する」


あ〜あ。名前が多いよ。

覚えらんないよ。

と、覚える気がないだけなんだけど。

とりあえずアル先輩と生徒会のみんなとその他諸々ね。


「では、次に戦闘のルールを説明しよう」


セバス先生の説明によると、ノックアウト、もしくはギブアップで試合終了。

1試合の制限時間は15分。

それまでに勝負が決まらない場合は引き分け。

それと本気で振り抜いてたら、もしくは打ち込んでいたら明らかに戦闘が決まっていただろうという一撃、魔術の前に試合を止めるとのこと。


「では5つのグループに分かれてもらう、名前が呼ばれたらその先生について行くように。また、オメガを担任する先生はまだ来ていないため最後のグループは生徒会長のアルドニスとクイーンが担当する。質問のあるものはいるか?」


いなかった。

というより戦闘好きが多いよで、多く戦いたくてうずうずしているという感じだった。


「では、開始する」


各先生が自分が担当するグループの生徒を呼んでいる最中に闘技場の観客席は自動で収納され始め、さらに大きなスペースができた。

そして、いつのまに5つに試合場が出来上がっていた。


その後、オラベラ、アラベラ、エリザの名前が呼ばれていった。

俺ら4人とも違うグループになった。

呼ばれたら、その先生の元に行き、自分のグループの試合場に移動する。


「次の方達は私についてきてください」


「ケレギオン、

 キュウリ、

 エリック・ダルビッシュ、

 ハッシャシン・サンドランド、

 ルーシー、

 ンズリ、

 サムエル・アルベイン、

 トーマス・テスラ、

 ウィリアム・ロンカル、

 ザラサ」


俺はアル先輩が担当するグループの1人になった。

同じグループには学生証の制作者のテスラ、俺と同じく学生証がエラーを起こしたウィリアム、獅子ギャルと、肉食い犬がいた。

そして、どういう運命のいたずらか先ほどの赤髪少年もいた。


う〜ん。どうしようかな。

最低3試合だから1勝2敗?全部負ける?

でも低すぎてもな〜。

アルファは避けたいけど、1番下のオメガや2番目に下のデルタは避けたいんだよな。

狙いはガンマだな。

ちょうど真ん中でいい感じだし。

平凡な学生生活送りたい自分にはぴったしかな。

なのでやはり1勝2敗コースで行くか。

4試合目があった場合はそのとき考えよう。


そして戦闘試験が始まった。


うんうん、なるほど。

戦闘力のばらつきが大きいな。

強い人はとことん強いし、普通は普通、弱い人は…、弱いというか戦闘訓練を受けたこともないいんだろうなって人が弱いって感じだ。


「次、ルーシー対ウィルアム・ロンカル」


おお、ウィリアムだ。

頑張れ。


「始め!」


「ぐはっ」


あ、ウィルアム負けた。

戦闘訓練とか受けたことないんだろうな。

動きが素人そのものだ。

でもなんかいいやつそうだから嫌いじゃない。


「弱すぎる。やはり男は使いもんにならん悪だな」


勝ちセリフにしては怖い一言だな。

あのほぼ裸の服装、鍛え抜かれた肉体に自然な日焼けでできた褐色の肌。

そこに男は悪と平気で言っちゃうところを付け加えると、あの女はアマゾネスだな。

本当に世界中から生徒が集まんだなここ。

アマゾネスなんて資料でしか知れねぇもん。


「次、サムエル・アルベイン対エリック・ダルビッシュ」


えええ〜


赤髪少年はまだ座っている俺の目の前に来た。


「あなたにエリザは渡しません」


そして戦闘エリアに行き、杖を構えた。


渡さないって、俺のじゃないんだけどなエリザ。

まぁまぁ、これ以上変な目をつけられても困りますし、すぐに負けてやるとしますか。

自分も戦闘エリアに行き、レイピアを構えた。


「始め!」


開始の合図とともにレイピアで一突き。

なあに、十分躱せるような速度だ。

さぁ、躱してちゃっちゃと魔術撃って。


「ウォール・オブ・プロテクション」


ウォール・オブ・プロテクション!?突きを止めるためにほぼあるゆるダメージを通さない魔術を使う!?というか発動はやっ!確か突きの速度は遅めにしたけど、普通は間に合わんだろう。


「どうしました?まさかこの魔術を破る手がない訳じゃないですよね?」


ないわけじゃないけどさ、それを見せると俺の平凡な学生生活がその時点で終了するわけよ。


「打つ手がないのならこちらから行きますよ、ファイア・ボール」


はいはい。どうもありがとう直撃してとりあえず負けれるわ。


「あっつ!」


直撃しなかった。


「ファイア・ボール」


「だからあついって」


「ファイア・ボール。ファイア・ボール。ファイア・ボール」


彼がそれ言う度に空中に作られた火の玉は降ってくる。

ただし、直撃はしない。

だが、地面の直撃したときに火が広がり、それが体の横に当たってる。

それを赤髪少年は卓越な魔力コントロールで操作している。

わざわざ直撃させられるものを逸らして、ノックアウトじゃなくて、痛みつけるような形で攻撃している。

つまり赤髪少年は相当性格が悪い。

人のことは言えないけど、これは相当だよ。


「どうしました?エリザを守れる男なんですよね?それを証明してくださいよ」


「ファイア・ボール。ファイア・ボール。ファイア・ボール」


ファイア・ボール、ファイア・ボールってそれしかできないのかよ。

つかレベル3魔術だから結構魔力消費するだろうそれ?

後2試合はあんだぞ。

ああ、服が黒焦げだ。


「やはりそんなもんか。それじゃエリザを守れない。オマエにその資格はない!今後エリザに近づかないと約束するのなら素早く終わらせてあげますよ」


「…」


「さぁ、2度とエリザに近づかないと言え!」


「…」


「言うんだ!」


はぁ〜。

別にどうでもいいけどよ言えばいいんだろ、言えば。

そこでふと、となりの戦闘場を見た。

そこにおそらく自分より強い生徒と戦うエリザの姿があった。

彼女の負けないぞという気迫は伝わった。

どうでもよくねぇか。


「嫌だね」


赤髪少年の顔がさらに歪んだ。


「そうですか。だったらいなくなれよ…。全てを焼き尽くす炎よ我が声に従え、我が敵を全て灰になるまで焼き尽くせ、いや、灰すらも残すな!フレア!!」


凄まじいほどの魔力が1点に集中され、それが出来上がる。レベル10破壊魔術”フレア”。

全てを焼き尽くす最悪の炎だ。

どれくらい魔術の威力を弱めているか知れないがくれえばただでは済まない。

ていうかこの年齢でレベル10魔術ってすげぇな。

少しだけ評価してやるよエリック。

ただし、それはやりすぎだ。


「マジック・カウンター!」


その言葉の後に1点に集中されていた魔力は乱れ、制御されなくなった魔力は分解され、魔術は不発に終わる。


「なぜ!なぜ邪魔をした!?」


赤髪少年は怒りの形相でアル先輩に詰め寄る。


「説明にもあった通り、これを放てば勝負が決まる1撃または魔術であったとこちらで判断した場合、試合をその時点で止めると。それに今の魔術は学友に使うべきものではありません。それに今の魔術を悪質に使用したとこちらが判断した場合はあなたは即退学です」


「くっ」


「ですが、今回は自分の実力を見せたくて思わずやってしまった。ということにしてあげるつもりではいますが、どうでしょうかサムエル・アルベイン?」


「ええ、俺はそれで構いませんよ」


そして赤髪少年に睨まれた。

だからなぜ!?

そのときだった、アル先輩からミレニアムナイトが使う力が溢れた。

そのオーラにあてられた赤髪少年は顔を下げ、そのまま引き下がった。


「勝者、エリック・ダルビッシュ」


さっそく平凡な学生生活に障害が出たよ。

しかもエリザの従兄弟だから消すわけにもいかないし。

めんどくせぇな。


全員の1試合目が終わった。

ウィリアムとテスラと兎科の獣人はともかく弱い。

アマゾネスとエリックはかなり強く、後は普通って感じ。

だけどこのグループでやばいのはあの肉食い犬だ。

1戦目で当たったウッド・エルフの人は正直弱くない、まぁまぁやる方だとすぐにわかった。

それを瞬殺した。

俺でも目で追うのがやっとの速さ。

それに一発一発が重い。

筆記試験のときと違ってすげぇ生き生きしている。

こいつも戦闘狂か?


「サムエル・アルベイン対キュウリ」


弱い兎科の女だ。

この子には勝っておこうかな。


「始め!」


さっきよりも遅くレイピアを振って相手の反応を伺う。

だが、レイピアが相手に届く前に


「降参します!」


と兎が言ったのであった。

なんてあっけない。

まぁ、いいけど。


「勝者サムエル・アルベイン」


兎の1試合目そうだったけど、そもそも戦う気がない。

それならあの車椅子ガールのように全敗確定で見学すればいいのに。

でも兎は試合前に先生と話してたな。

それをお願いしたけどダメだったってことか。


「ンズリ対ウィリアム・ロンカル」


ウィリアムの試合だ。

相手はあの獅子ギャルだ。

獅子ギャルはまぁまぁ戦えた。

今回もウィリアムは瞬殺かな?


「始め!」


獅子ギャルが仕掛ける!もちろんウィリアムにはそれが防げない。

けど反射神経が悪いわけじゃない。

こういう戦いの駆け引きを知らないだけだ。

ときどき光る動きはしている。


「あんた戦いの訓練を受けたことないの?」


獅子ギャルはウィルアムに話しかけた。


「ははは。こういうスタイルでは経験がないな。ごめんよ。弱すぎて気を悪くしたか」


それは普通の声だった。

イケボでもなければ、いやな音声というわけでもなく、本当に普通の声。

ただし、なぜか俺にとってはそれは聞き心地がいいものだった。


「ううん。違う。ちょっとタンマね」


そう言って、獅子ギャルはウィルアムに近づいて行った。


「まず、今あんたが持ってるのはロングソードってやつだから、構えるならこんな感じ」


そして驚くことに試合中に獅子ギャルの剣技講座が始まったのであった、


「で、もし相手がこう来たら、こうやって動く、こう来たら、こう動く。まぁ、ただの基本だけど、わかった?」


「うん、わかった。ありがとう。でも試合中にこれ教えてよかったの?」


「いいのよ。どうせうちが勝つし。でもこのままだとあんた何も学べずに負けちゃうじゃん。せっかくいい感じで反応しているのにそれはもったいないもん。これなら負けても少しはためになるっしょ」


「優しんだね」


「違うし!弱いやつを意味もなく倒してもなんか気分悪いだけだし」


これはうとい俺にもわかるな。

あれはツンデレだ。


そして2人はまた向かい合った。

試合再開と思いきやウィリアムが剣を下げた。


「我が名ウィリアム・ロンカル。美しき獅子のお嬢様、よろしくお願いします」


「う、美しいって!?も、もう、褒めたっても手は抜かないからね。…、ンズリよ。こちらこそよろしく」


そして2人は打ち合いを再開した。

ウィリアムの飲み込みが思った以上に早く、2〜3分の獅子ギャルに教わっただけでさっきとは比べ物にならないほどよくなっていた。

だが、実力の差は実力の差だ。

剣を弾かれ、そのまま獅子ギャルは重い1撃を入れる。

でも、ウィリアムはなんとかこれを剣で防ぐ。

だが、その体重を乗せた獅子ギャルはウィリアムを地面に倒し、その剣を喉元に当てた。


「勝者ンズリ!」


「ありがとうンズリ。楽しかった」


「ふん、楽しくてよかったね。じゃ、もううちに関わらないでよね」


「えっ?なんで?めっちゃ関わりたいんだけど」


「なんでって、めっちゃ!?ど、どうして関わりたいのよ?」


「だって、優しいし、強いし、カッコいいし、綺麗だし」


「うぇ!?あんたまさかうちの事が好きになったの!?あのね、うちはあんたみたいな雑魚に構ってる暇はないの。ちょっと優しくしてやったからって勘違いしないでよね。うちは弱い人はお断りなの!」


「そうなんだ」


「そうよ、あんたはタイプじゃないの」


「どんな人がタイプなの?」


「どんなのって普通よ普通」


「だから普通ってどんなの」


「う〜んと、かっこよくて、強くて、頭良くて、優しくて、男らしい人かな。普通よ普通」


「なるほど。それって俺が強くなって、頭良くなればチャンスがあるってことだよね?」


わおお!

ウィリアム大胆である。

獅子ギャル顔が真っ赤だ。


「そ、そうだね…」


獅子ギャルちょろい!

顔から湯気が出ちゃってるよ。

多分、強くならなくともこのまま押せば行けるよ。

でもなんかウィリアムは強くなりそうな気がするな。

その後、獅子ギャルとウィルアムは試験が終わるまでずっと行動をともにした。


「ルーシー対ザラサ」


「始め」


肉食い犬はまたもや圧倒した。

ウィルアムを破ったアマゾネスは弱くない。

このグループでは大分上位だ。

それになんもさせずに勝った。

身体能力がすば抜けているのは言うまでもないがそれだけじゃない。

最初はアマゾネスが攻めに転じていた。

あの犬はその攻撃を防いだり、躱したりすることしかしてなかった。

なんでかと思ったら、途中で理由がわかった。

技を見切るため。

案の定、途中から全くもって攻撃が当たらなくなり、つまらなくなった肉食い犬はカウンターでアマゾネスをノックアウトした。

はっきり言って戦闘センスがやばい!

俺、本気を出せばあの犬に勝てるのか?

今のグループで勝てる自信がないのはこの犬だけだ。

それだけの戦闘センスだ。

肉食い犬…、じゃないな。

ザラサだ。

ザラサ…、うん、この名前は覚えておこう。


これで2巡目が終わり、次が最後の3巡目か?

でも4試合をやる人もいるんだよな?

まぁ、さっきの兎には勝ったから次は負ける方向で。


赤髪少年は危なげなく3勝した。

勝つ度に睨まれる。

めんどくさい。


そして、


「ハッシャシン・サンドランド対サムエル・アルベイン」


サンドランド?マイラ大陸の孤児に与えられる苗字だ。

そっかぁ、厳しい子供生活だったんだろうな。

俺には想像もつかない。

うんうん、今日は貴族を倒して、そのうっぷんを晴らすといい。


「始め!」


ではいつも通り突きと。

うんうん、これは躱すよね。

さっき見てた感じだと基礎はできてたんだよな。


その後、サンド君と数手打ち合った。

ただ決定だが出ずに、次元の低い打ち合いが続いてただけだった。


ん?おかしいな。

なんかやりにくい。

こっちの実力に相手が合わせてるような。

向こうも手を抜いている?


そして、その打ち合いはどちらが有利になる訳ではなく10分続いた。

このグループで最長の試合になってしまった。

しかもなんてつまらない試合。

ウィリアムと獅子ギャルはずっとしゃべってるし、ザラサに関しては寝てしまっている。


「2人ともまじめにやってください。これ以上このまま続けるとどちらとも試合放棄とみなします」


アル先輩からお叱りのお言葉だ。

審判を任されるくらいだもんな、相当な手練れだろう。

それがこの試合の違和感に気づかないはずがない。

もういいよ、見せてやるよ。

究極のやられ方ってやつをよ。


俺は打ち合いのペースを速めた。

防御を捨てた攻撃の一辺倒、そして相手がそのうちのどれか1つでも弾くのを待つだけ。

それで決まりだ。

来い来い。


そして案の定俺の突きの1つは弾かれた。

本の少し弾かれただけだが、俺はそれを腕が後ろの方に弾き飛ばされたようにする。

腕が真上に上がっており、体はガラ空きだ。

さぁ、打ってこい。打ってこなければ、ここで決めなければ、試合放棄となるのはオマエだサンド君。

そして、その1撃は来た。

だけどサンド君はまたやもそれをミスる。

当てなかったのではなく当てれなかったというていを保った。

なんて雑魚の演技がうまいやつなんだ。

わかるぞ。俺にはわかる。俺も同じことやってんだから。

でも、そこだけは譲れねんだよ。

この戦い絶対負けてみせる!


と思ったそのときだった。

サンド君の体が変な回転をした。

斬撃の速度が急加速する。

おまわず反射神経でよけてしまう。


おいおい、それじゃ雑魚じゃねぇぞ。

普通に強いやつになっちゃうぞ。

雑魚の誇りを捨てたのか!?


躱してしまった斬撃のあとに俺は思った。

これでいいと。さっさと決めろと。

次がどんな攻撃であっても俺はそれを躱さずに受ける。

それで終わりだ。


だが、俺はびびってしまった。

演技とかじゃない、まじでびびってた。

サンドランドが放った殺気によって、恐怖にかられてしまった。

死を感じとってしまった。

なんとかしなくては死ぬ!

そう思ったときには俺はもうレイピアを振り抜いていた。


そして俺の目の前にサンドランドは倒れていた。

思わず本気で振り抜いてしまっていた。


「勝者サムエル・アルベイン」


サンドランドはすぐに回復魔術で治療された。


「おい」


「ん?なんだ。勝ち誇りに来たのか?」


「最後のあれはなんなんだよ」


「?最後のオマエの一撃か?あれはすげぇな、オマエ結構つえんだな」


あの放った殺気はなんだったんだと聞きたかったけど、あいつがそれに応えるはずはない。

思わず熱くなって話しかけちゃったけど、話したところで答えが出ないことはわかっている。

俺も逆の立場だったらはぐらかすだけ、何かを話すことはない。

このように俺の3試合目は終わった。

勝利という結果の敗北で。


「次、ウィルアム・ロンカル対ザラサ」


ザラサとウィリアムか。

さっきの講義があったとはいえ、到底無理だろうな。

俺でも勝てるかわかんねぇもん。

このグループで俺が唯一勝てるかわからない…

違うな。ハッシャシン・サンドランド。

あいつもどれくらいの実力を隠しているかわからねぇ。


「ウィル頑張れ!」


ウィリアムのやつにさっそく応援団(獅子ギャルオンリー)ができてる。

俺もエリザと同じグループだったら応援されたのかな?


「始め!」


ウィリアムは獅子ギャルに教わったようにロングソードを構えた。

構えだけは様になっている。

だけどザラサは止められない、止められない、止められないよな。

なんで動かないんだザラサ?

さっきから匂いを嗅いでるだけ。

ああ、やっといくか。


そしてザラサはキックを繰り出した。

ウィリアムはそれを躱す。

その後に爪で攻撃、その後にキック、爪、爪、キック。

ウィリアムは全て躱した。

ウィリアムがすごいんじゃない、ザラサがありえないほどに遅く振っている。

すごくやりにくそうだ。


「オマエはなんなのです!?」


「俺?俺ウィリアムだけど」


「違うのです!」


「?」


ウィリアムは首を傾げた。

それはそうだ。いきなり話かけられて、名乗ったら違うって言われるって。


「ザラサは弱い奴は嫌いなのです」


「お、おう」


「弱いのにザラサと戦おうとする奴はザラサがこてんぱんにやつけるのです!」


「そうなんだ」


「そうなのです」


「ってことは俺はこの後こてんぱんにやられちゃうってこと?」


「う〜ん。わからないのです。なんかオマエを殴りたくないのです。こんなの初めてです」


「お、おう」


「ザラサはどうすればいいのです?」


それを本人に聞く!?

どうなってんだあいつの脳みそは?

それにウィリアム、まさかのザラサから1勝をここで掴むのか?


「うん、殴りたくない相手っていうのはいるよな。わかる。でも今回は誰も死なない遊びだから大丈夫。いつも通りやりなザラサ」


「うん!わかったのです」


あちゃー。

今のうまく言い包めていたらワンチャンあったんじゃない?


そしてザラサは容赦ない攻撃をしかけた3撃目でウィリアムは地面に倒れた、ザラサは追い討ちをしようとしたがそのパンチはウィリアムの顔で止まった。


「勝者ザラサ!」


ザラサ手加減しようと思えばできるんだね。

途中まで本当に獣だと思ったよ。


「おっつーウィル」


「はは、負けちゃった」


「あれはしょうがないよ。うちでもあれには勝てんし」


「強いんだねザラサ」


ウィリアムは目でザラサを追った。


「う、うちももっと強くなるし、あの犬にも勝てるようになるかもだし」


獅子ギャルは張り合いだした。

興味ないんじゃなかったの?


「うん。ンズリももっと強くなるね。でも犬じゃなくてザラサね」


「えっ?」


「ンズリもあのライオンって呼ばれたら嫌でしょ?」


「う、うん。ごめん。ザラサ強いね」


「ふふ、ンズリ素直でかわいいね」


「ちげぇし、勘違いすんなだし!気持ちがわかるだけだし」


って言いながら顔は真っ赤である。


「でもね、ザラサが言った事、うちも感じたんよ」


「何が?」


「殴りたくないなって」


「そうなんだ」


「うん、なんかわかんないけど本能的に。ウィルなんか変な術とか使ってる?怒らないから言って」


「使ってないよ」


「本当?」


「本当だよ。魔術感知でもマジック・キャンセルでもかけていいよ」


「ううん。ウィルがそう言うなら信じるし」


「ありがとう。でもね、自分はなんか特別なことをしてるつもりはないんだけど昔から獣人や魔獣とは仲が良いんだよね」


「そっか!ウィルってビースト・マスター?」


「登録上はそうなってるね」


「そっか、やっぱり!聞いたことがあるの。すごいビーストマスターはどんな魔獣とでも仲良くできちゃうって」


「そうなのか」


「うん。でもそれは魔獣であってその能力が獣人までに及ぶとは聞いたことはないからやっぱり説明はつかないや」


「そうなのか。ならよかった」


「ん?どうしてよかったなの?」


「だって、こうしてンズリと仲良くなれたのがなんかの能力のおかげだったら嫌だよ。俺は能力などではなく普通にンズリと仲良くなりたいし、なにかの能力で仲良くなりましたとかだったら悲しい」


「あっ、うん。ごめん」


「うん…」


悲しそうな顔しているウィリアムにどうすればいいのかわからない獅子ギャル。


「の、能力なんて関係ないし。そんなのあるかもわかんねぇし、あってもうちにきかねぇし。うちらが仲良くなったのはマジだって。な?だ、だからもう悲しい顔すんなよ。そんなんじゃ、も、もてねぇぞ」


「はははは、なんだそれ。ウケる」


「ウィル笑った。うちの勝ち〜」


「え?そういう勝負だったのずるくねぇ?ルール教えないのずるくねぇ?」


「ずるくないです〜」


俺はいつからラブコメストーリーの脇役になったんだ?

つかオマエらさっきの試合が初会話だよな?

人ってこんなに早く誰かと仲良くなれるもんなの?

人ってわからんな〜。

なおさら赤髪少年がかわいそうに思えてくるよ。


でもまぁ、言ってる事はわかるよ獅子ギャル。

あきらかにおかしいんだもんウィルアム。

そのため、俺はさっきから何度も魔術感知をかけてるし、さっきわざとぶつかってマジックキャンセルもかけた。

でも結果は白。

それでもおかしい。

だって、俺がこんなに人に興味をもつはずがないのだから。


俺は基本的に興味があるものと興味がないものをはっきりとわけている。

そして俺は自分が興味のないものには本当に無関心である。

もちろん興味などなくとも必要な知識などは取り入れるし、興味はなくとも平凡な生活を保つためにやらなければならないことはやる。

でも興味はない。

その最も典型的な例は人だ。

例え強い人がいたとする。

俺はその強さには興味を持つはその人がどういう人かについては全く興味を持たない。

周りにいる人だって興味がわかない人の方が多い。

興味を持ったとしてもそれは長い年月一緒に過ごして、いつのまにか俺の観察対象になった人達くらいである。

すぐに誰かに興味を持ったり、こいつは良いやつだなと思ったことなんて生まれて初めて1度もない。

それが今日起きた。

最初は気がつかなかったが、途中ではっきりと違和感が出た。

自分で、自分に質問した。

なんで俺はさっきから初対面のこいつを気になってるんだと?

最初はサン姉が使うような魅了魔術だと思ったが違った。

念の為に調べもした。だが、原因はわからずしまい。

ずっと観察してたけどウィリアム自体に何かへんなところはなかった。

聞いてた会話からしても、もし彼がそういう能力をもっているのならそれは彼の意思とは関係なく発生されているようだ。

そしてその力は極端である。

俺、獅子ギャル、ザラサに対してそれは好意的に働いているが。

他のメンツには逆効果でさっきからウィルアムのことを悪く言ってるやつらがいる。

おそらく何もされてないのに既に嫌われてる感じだ。

俺に効かないなら獣人や魔獣に特化した能力という考え方もあったけど、俺に効いているからそれは成立しない。

後、オラベラも珍しくテッド兄さん以外の男性に興味を持ってたな。

どういうくくりだ?

まぁ、おそらくこれはゆっくりと解き明かしていくしかない。

でも、むかつくな。

なにがむかつくって?

俺は本来ならウィルアムに興味を持たない。

だからその能力に気ついても”興味ないな”で終わらせることができる。

だけど今の俺にはそれができない。

それがむかつくわけじゃない。

それがなぜか嫌じゃないことがむかつくのだ。


「ねね、その子がウィルの相棒?めっちゃ可愛いね」


「うん、そうだよ。ボールウィッグっていうんだ」


「ボールウィッグ!ねね、触っていい?触っいい?」


獅子ギャルはウィリアムの返事を待たずに手を伸ばす。


「がるるる!」


「痛い!」


ウィリアムの魔獣から電撃が飛んだ。


「ああ、ごめんよ。俺以外に触られるの極端に嫌がるんだ」


「ううん。こっちも勝手に触ろうとしてごめん。というかさっきから不機嫌よねこの子」


「うん…」


「なぜ?」


「女の子と話してると怒るんだ」


「え?なにそれ?嫉妬?」


「どうだろう」


「なにそれめっちゃウケるんですけど。でもなんて魔獣なの?めっちゃかわいいけどこんな魔獣見たことないよ」


「ははは、そうだね。なんて言うんだろうね?俺もこの子以外同じような魔獣は見た事ないからさ」


「マジか!?」


「うん」


「それってめっちゃレアじゃねぇ?」


「うん、一般的にレアかどうかはわかんないけど俺にとっての大事な存在だから俺にとってはウルトラレアだな」


ウィリアムはボールウィッグを持ち上げ、少しじゃれた。

それを羨ましそうに見る獅子ギャル。


「あ、うん、確かに少し妬けるわこれ」


「なに?」


「ううん、なんでもない。それよりもちょっといい?」


「うん、いいよ」


そして獅子ギャルは俺に向かって大きな声を出した。


「おい!そこのてめぇ!さっきからうちらの会話聞いてんだろう!言いたいことがあんなら堂々と言えや!気持ちわりぃんだよ」


「あ、ははは。いやいや、何か悪気があった訳じゃないんだ。俺もなんでかわかんねぇんだけど2人の話に興味が出ちゃって」


「人の話を盗み聞きして、それに興味が出て聞き続けるとかマジきしょいなオマエ」


「だからごめんって。俺はもう行くから」


背を向けて彼らと距離をとろうとしたとき俺は呼び止められた。


「待ってよ。興味あんなら一緒に話そうぜ」


「いや、俺は結構だから」


「遠慮すんなって!これから仲間になんだろう?仲良くしようや」


今までこういうシチュエーションがなかったわけじゃない。

仲良くしよう、お友達になろう、仲間になろうぜ。

俺は今までずっとそれを断ってきた。

興味がなかったからな。

でも今は


「うん、よろしく」


そして俺は獅子ギャルに睨まれながらも2人の輪に混ざり、ひさびさにエリザ、オラベラ、アラベラではない自分の同年代の人達と楽しく話した。

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― 新着の感想 ―
ストーリーの全体が面白かった!でも今1番気になるのがウィリアムの能力!何が起こってるんだ??
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