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第4章:破壊活動(という名の塗装作業)②

 朝日奈ひかりは、呼吸を忘れていた。


 彼女が目撃したのは、これまでの常識を覆す光景だった。怪獣による破壊活動ではなく、怪獣による謎のメンテナンス作業。しかも、その作業は明らかに「塗装」だった。


「何…今の…」


 ひかりの脳内では、あらゆる論理的思考が停止していた。サイレンの音を聞いて、市民の避難誘導を手伝おうと駆けつけた彼女が見たものは、想像を絶する非常識な光景だったのだ。


 ガーディアン・フェザーが公園に着陸する。白いマントが夜風になびき、その整った顔立ちには困惑の色が浮かんでいた。


「市民の方、大丈夫ですか?」


 和泉慈は、まず少女の安全を確認した。ヒーローとしての訓練により、市民の保護が最優先だと体に染みついている。


「あ、はい…大丈夫です」


 ひかりは慌てて答えた。目の前に立つのは、彼女が心から憧れるヒーローだ。しかし、いつもなら舞い上がってしまうはずの状況なのに、先ほど見た光景が頭から離れない。


 慈は公園を見回した。ブランコ、滑り台、砂場の柵…全てが奇妙な黄土色に染まっている。しかし、それは破壊というより、むしろ塗装に近い。


「これは…腐食攻撃でしょうか?」


 慈は首を傾げた。怪獣による破壊は数多く見てきたが、これほど丁寧で規則正しい「被害」は初めてだった。まるで誰かが意図的に塗装したかのような仕上がりだ。


「あの…」


 ひかりが口を開いた。彼女の中では、真実を伝えるべきか迷いが生じていた。しかし、憧れのヒーローを前にして、嘘をつくことはできない。


「怪獣は…破壊してませんでした」


「え?」


 慈の目が見開かれた。


「塗装してたんです。ブランコも滑り台も、丁寧に色を塗ってて…まるでお仕事みたいに」


 ひかりの言葉に、慈は困惑を深めた。怪獣が塗装?そんな報告書を本部に提出しても、信じてもらえるとは思えない。


「それは…確かですか?」


「はい。最初から最後まで見てました。怪獣は何も壊してません。ただ、黄色い液体で遊具を塗ってただけです」


 慈は周囲を改めて観察した。確かに、破壊の痕跡は一切ない。全ての遊具は原形を留めており、表面に黄土色の物質が付着しているだけだ。


 しかし、それは怪獣の行動として、あまりにも異常だった。


「なぜ怪獣が塗装を…?」


 慈は呟いた。これまでの経験では、怪獣は破壊衝動に突き動かされて行動する存在だった。建物を壊し、街を恐怖に陥れ、ヒーローとの戦闘を挑んでくる。それが怪獣というものだと理解していた。


 しかし、今夜の怪獣は違っていた。戦闘を避けるように姿を消し、残されたのは破壊ではなく、謎の塗装作業の痕跡だけ。


「もしかして…」


 ひかりが小さな声で呟いた。


「怪獣も、本当は戦いたくないのかもしれません」


 その言葉に、慈は胸の奥に奇妙な感情を覚えた。怪獣を敵として戦ってきた彼にとって、それは考えたこともない可能性だった。


 遠くから、報道ヘリの音が聞こえてくる。間もなくメディアが到着し、この「事件」も報道されることになるだろう。しかし、慈にはどう説明すればいいのか分からなかった。


「怪獣による公園の塗装作業」など、どう考えても報告書に書ける内容ではない。


 ひかりは空を見上げた。怪獣が消えた方向を見つめながら、彼女の心の中には新たな疑問が生まれていた。


 怪獣とは、本当に悪い存在なのだろうか?もしそうでないなら、ヒーローが戦う意味とは何なのだろうか?


 慈もまた、同じような疑問を抱きながら、黄土色に染まった公園を見つめていた。彼の正義感の根幹が、小さく揺らぎ始めていることに、まだ気づいてはいなかった。


 そして二人とも知らなかった。この夜の出来事が、やがて三人の運命を大きく変えることになるとは。


この作品は一部にAIによる文章生成を含みます

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