3話 娘の名は。
2歳になり、アトルとの教育が、はじまった。
教育と言ってもそんなたいしたことではない。
本を読み聞かせてくれたり、その本のキャラ、食べ物、道具の説明をしてくれるのだ。
あと母様が書類仕事をしているときに
遊び相手にもなってくれる。
そのおかげもあって質疑応答、文字を読むぐらいは、できるようになっていた。
「これ、なに?」
「これはですねぇ、妖精族ですね。」
「妖精?」
この世界妖精までいるのか、
「妖精族と言うのはちまっこく、すばしっこさしか取り柄がない、弱い種族ですね。」
アトル…たまに口悪いんだよなぁ。
「ちまっこく?」
「あぁ、すみません!方言がでてしまいました。小さき者という意味です。」
この世界方言まであるのか。
「それで、ですね。」
「弱いからと言って慢心してはいけません。その速さを活かし、奴ら、小さいナイフで体に傷をつけてきますから。毒を塗ってる個体もいましたね。」
全然フェアリーじゃねぇ…
「なんだ羽虫の話でもしてるのか?」
羽虫…この世界では自分より下の種族は虫と同レベルとして見られるのだろうか…
「ゼヌニム様、そうですね。他種族の話をしていました。」
否定しないのか…
「それでは、仕事も終えたことだ。
我も混ざろうではないか。」
なぜここまで仲良くなったのか。
あの事故の後からである。
父様から手紙が届いた。
中略すると父様が人族との会合に出向いており、さらに半年ほど帰れないという文章であった。
母様は色事にとても情熱的で、父様がいる日の夜は、いつもお盛んであった。そんな母様は、半年も我慢できるわけもなく。
いや、三日ほどでだ。
母様は、アトルに手を出し始めた。
アトルは、元々母様の物みたいな人だったので、むしろ喜んでやっていた。
聞かれるのが恥ずかしかったのか気を使い、父様の時は魔法を使って、防音していたのだろう。
毎日毎日夜の運動会が、部屋中に鳴り響いている。最初は、アトルの初々しい鳥のさえずりみたいな可愛い声が、心地よく鳴っていたのだが、最近は、聞き飽きてしまった。毎日毎日スライムの音みたいな、ぱちゅぱちゅという音を鳴り響かせている。
新感覚なASMRだと思ったら、眠れないこともなかった。
でもそろそろ父様が、帰ってくるらしいのでこれもお別れだろう。
春の風物詩として心に残そう…
「羽虫の説明はどこまでしたんだ?」
「妖精族は小さい、早い、うざい、というところまでですね。」
ゴキブリかよ…
そんなことをふと思った。
「では少しだけ話そうと思う。」
「1番弱く、賢くないのが、妖精族だ。
だが、悪知恵は、なかなか働く」
「次に同順、どれも同じくらいの知識、強さを持つ、獣族、魔族、人族、長耳族だ。じゃっかん人族、長耳族の方が賢く、獣族、魔族の方が強い。」
「天翼族、1番賢い、強さは我らとそこまで、変わらん。山脈の上にすんでいる。」
「龍族、1番強い。賢さは、我らと同等だが圧倒的に強い。」
いろんな奴らがでてきた。
「我とアトルは魔族だが、夫は長耳族だ。」
「まぁ、また大きくなったときにでも、説明しよう。」
「は~い」
「よい子だ」
「でも魔王様は、どの種族よりも強いお方なんですよ。」
「そんなことはない、龍族相手に負けてしまったからな。」
「あれは、ずるですよ。あと一歩のところ、人型から急に龍になって暴れたんですから。」
「思い出したら、むしゃくしゃしてきたな。」
「行くぞ、アトル」
「もう、お盛んな人なんですから」
今日は父様が出かけているので、アトルが相手になるのだ…
俺も将来、男女関係なく見境なしに食い荒らすことになるのだろうか、
今日は久々に父様とあった。
「リリス、相変わらず可愛いなぁ。」
「父様おかえりなさい」
抱っこされながら言った。
「あ~ただいま。」
ん?リリス?俺のことか?
そういえばアトルは俺のことを御息女様としか言わないし母様は、俺のことをあんまり名前で呼ばないから知らなかった。
可愛いがなまえみたいな、感じになってた。
やぁ、リリスだ。
父様に初めて言われて気づいた。
やぁ、リリスだ。
やぁ、リリスだ。
父様が人族との話をしてくれた。
「人族の話を少ししてやろう。」
「あい、」
「はいと言いなさい」
「はい、」
ふざけていったら怒られた。
母様とちがい少し厳しい…
「偉いぞ、さすが俺の娘」
人族は礼儀とかにうるさい。
ここの文化と違う、ここは、強ければ正義だが人族は、強さだけではない。
求められているのが、違うのだ。
伝わるといいな。
父様はそんな甘い男だったのだ。
「人族は礼儀とかに厳しい、今みたいに変な返事をしたら、仲が悪くなるかもしれない。ただ、そんなやつばかりでもないがな。まぁ、後はご飯が美味しかったり、酒が美味かったり、する。」
まぁ、だからゼヌニムの代わりに、人族との会合に行ってきたのだけど。
礼儀とか知らない戦闘狂だからな。
あいつが行ったら虐殺になりかねない、
なんだ我にむかってその態度はとか言って会合の人族をぶつ切りするかもしれない。
「今度アトルに教えてもらいな」
「暇ができたら俺も教えてやろう」
「ありがとうございます」
「えっ?あ~気にするな」
嫌がると思ったし、凄い丁寧に答えれてる。ゼヌニムみたいに、我は不要とか言うのかと思ったが。
2歳ってこんな賢いのか。
アトルの教育の成果か?
それか俺に似てるのか?
まぁ、後者だろう流石俺の娘だ。
今度人族の知り合いに会わせてみるか。
「なぁ、今度3人で勇者のところに行くか?」
「あいつだったら人族として、差し支えないだろう?知識も豊富だし、人族とは何か分かるんじゃないか?」
「我はあいつが嫌いなのを知ってて言ってるのか。」
「まぁ、我も良き経験に繋がると思うが流石に今は…」
「今じゃなくても、5歳ぐらいにでもどうかな。」
「分かった。それなら許そう。」
とんとん拍子で話が進んで行く。
何が起きているのだろうか。
父様が頭を撫で微笑んできた。
母様は少し不機嫌な顔をしていた。