15話 必殺技を伝授
なんだよ今のは、何かの魔法の、詠唱なのだろうか。
母様もお姉ちゃんも少し恥ずかしそうにしていた。
俺はなにを言うべきなのだろうか。
内輪ノリについていけない、地元の学生みたいだ。
俺がそんなことを考えていたら、ニアが来た。
ニア頼んだ。
ちらっと見ると目を輝かしていた。
「それ、凄くかっこいいにゃ」
えっ、いやうん
そうだニアのセンスだ。
これは凄くダサい部類に入るのかもしれない。
俺はニアのセンスを信じる、これはダサいのだ。
「そうだろ」
勇者は得意気に言った。
「そうだろ」
父様も得意気に言った。
ほぼ同時だった。
母様とお姉ちゃんは呆れた顔を、していたが、どこか懐かしそうな目でそれを見ていた。
「あの、今のは何でしょうか」
説明を求む、なんなんだそれは本当に、
「これは僕とメグレズが二人で冒険していたころに使っていたルールみたいなものだよ」
初めから4人で旅を、していたわけではないのか。
その冒険譚聞いてみたい。
「二人の冒険の話聞いてみたいです」
「にゃ」
ニアも便乗した。
「それは今晩に聞かせてあげよう」
「思い出話に、華を咲かす夜もいいだろう」
久々に4人集まったんだ。お酒でも飲みながら笑いあおう。
「3人とも付き合ってはくれないかい」
「「「もちろん」」」
「僕はニアとコルネと街に買い出しにでも向かうよ」
「3人は積もる話もあるだろ」
本当に気が利く、俺も母様にちょうど聞きたいことがあったのだ。
「いや俺もついていこう」
なんで父様まで、
「ゼヌニムが二人で話たいと言っていたからな」
「そういうことね。じゃあ4人で行こうか」
母様が、二人で話たがっている。
思い当たる節は一つしかない。
族秘技のことについてだ。
やっと打倒勇者が可能になるかもしれない、
「感謝するよ4人共ありがとう」
「ごゆっくりどうぞ」
4人は、買い出しに出て行った。
「まず久しぶりだな」
「少し大きくなったな」
あ、確かに前は太ももまでしか目線がなかったが今は腰ぐらいまであるような。
「はい、母様これからもっと大きくなります」
もっと大きくなって打倒勇者だ。
「流石、私の娘だ。もっと大きくなるなこれは」
そういえば母様は父様と俺の前では、一人称が私で他の人がいると我になる。なんか意味はあるのか、せっかくの場だし聞いてみるか。
「あの、母様はなんで私や父様の前だと、私なのですか」
聞くのはまずかっただろうか。人には聞いてはいけない線がある、そこを踏み外したら終わりだ。
まだ5歳だから、最悪怒られるぐらいか、はぐらかされるかもしれない。
「気づいていたか、賢いな」
「ありがとうございます」
そりゃもう母様の子ですから、俺。
「前までは私を一人称に使っていたのだが、勇者パーティーを抜けて魔王になってから、我にした。ただそれだけだ」
「仲間の前でもですか」
これ聞くの不味かったか。感情に任せて言ってしまった。
「そうだな、素の私を見られるのが少し怖いのかもしれんな」
「怖いのですか」
「あぁ、ないとは思うが、否定されたらと思うと」
「母様は私でも我でも大事な母様です。」
無理に変える必要はないのだ。
人には裏があり、常にそれを繕うために表を作る。なにも変ではない。
「ありがとう。そう言ってくれると嬉しい」
「まぁ、私の身の上話はこのくらいにして今日は大事な話がある」
「はい」
「族秘技を教えにきた」
きた、族秘技なにをするのだろうか。
あの長い詠唱を覚えられる気がしないが。
「まぁ、簡単に説明しよう」
普通魔法は、その使用する名を発しないと使えない。
いや使えないことはない、魔法の名を言わずに使うと弱くなったり、魔法が失敗するのだ。
ただ魔剣を、除いて。
魔剣のみ名を言うことなく魔法を使える。
だから剣技を磨かされてたのか。
「魔秘技 魔の全権は魔法の付与と剥奪ができる。この世界にある魔剣の一部は魔族の長によって作られている」
じゃあ、あの鎌は魔王によって作れた物かもってこと。
「この付与は何にでもできる。剥奪は付与したものから魔法を抜き取ることができる」
例えば相手から魔剣を、奪われたとしても剥奪したらいいというわけか魔法だけを。
どこまで付与の対象なのだろう。
ホラー映画のフレ◯ィーみたいに指に剣みたいなのをつけて魔法を付与したら名前を言わずに10種も使えるのか強すぎる。魔法も言えたら11種だ。
夢が広がる。
「では今から教える」
「目をつぶれ」
ギュっと目を閉じた。
唇に感触が、
キスをされた。
された瞬間、本能的に分かった。
魔秘技の詠唱を、
「分かったか」
「はい、分かりましたが、ファーストキスです」
「すまない。私もファーストキスは母だった」
母様もこんな感じで教わったのか
「アスタルト家の秘技だ」
秘技は家に伝わるもの、族秘技は族長の血筋にしか使えないもの。
「この秘技はもともと、見た目の模倣とをするための秘技だったのだが、魔王になってしっぽの能力が開花し、進化したその模倣元の魔法のみ劣化して使えるようになった。ただその分魔力消費は少なくなるがな」
「それとこの秘技、1日分だけだがキスやら生殖活動をすることによって相手の記憶も覗ける。アスタルト家どうしがすると記憶を覗けない変わりに記憶の一部を送ることができる」
「深く関わる程、記憶を覗ける量、送れる量が変わる」
だから毎日のようにアトルとやっていたのか。
でも毎日やる必要はあったのか。
父様がいない時はずっとアトルが相手になっていたな。
はやくアトルにも会いたい。
「毎日キスやら生殖活動をするのは面倒だからな」
嘘つき、絶対生殖活動好きだろ。
ただ、どちらも強力だがアスタルト家の能力の発動条件が苦しすぎる。
「族秘技の練習もしとくように」
そこからは他愛もない話をした。
ここにきて、初めての日ニアと喧嘩をしたこと。
勇者とニアと街をみたこと。
日々の修行のこと。
勇者になかなか勝てないこと。
などなど、
もちろん俺のお気に入りの服を喧嘩した日にニアに汚されたことは言っていない。
ニアが殺されるかもしれんからな。
「ただいま」
お昼と夕方の間くらいの時間に4人は帰ってきた。
沢山の食べ物とお酒を持ってきて。
「うむ、ご苦労様」
「ゼヌニム教えられたかい」
「勇者、次に戦う時娘に泣かされないと良いな」
いけるかな、そこまで、あんな強そうな技を教わったのに傷一つもつけれないかもしれない。
料理がどんどん並べられていく。
10人程かこめそうな机いっぱいに料理が並んだ。
「では久々の仲間、新しい出会いに乾杯」
「「「「「乾杯」」」」」
こうして宴会が始まった。
ニアはずっと肉ばかり摘んでいる。
前に食べた串の肉もあった。
肉、魚、サラダ、果物いろんな物がでていた。
そこから2時間程たち
「冒険について教えて欲しいにゃ」
「そうだな初めは僕たち二人だったんだ」
「いや、結構楽しかったな前衛と後衛でわかれてたからな」
良い始まりじゃないか。ポジションがしっかり決まってるのは。
「僕は大変だった、初めての戦闘でメグレズが前に出すぎて怪我した時は冷や汗止まらなかったよ」
「確かにそんなこともあったな、まぁ魔物のひっかき傷ぐらいなすぐ治せる」
初めてはしょうがないよ、うん。
俺も気をつけよう。
前に出すぎないように、
「そこから次にコルネが仲間になったな」
「メグレズが「あいつ、仲間にしよう」って言ってきてびっくりしたね」
どこぞの海賊かよ。
「ちょうど前衛も欲しかったから聞いて見たんだ」
「そしたらいいよって軽すぎて怖かったね」
流石お姉さん、色々凄い。
「だって私ね。身長大きいでしょ。だから、浮いちゃってて、あんまり、いやこのパーティー以外に誘われなかったんだ」
「メグレズの無鉄砲が初めて役にたったよ」
「無鉄砲言うな」
もしかしたら父様会合もそんな感じで成功させたのか。
「最後にゼヌニムだ」
「あれはどこだっけか」
「人族の土地だ」
最後に、母様が仲間になるのか
「ギルドの仲間募集の紙にいたんだよね」
「なんだっけ、魔術のみって書かれてて異質だったね」
「これも2人が気になり出して会いに行ったんだったな。普通得意な魔術、苦手分野とかいろいろ書くのだけれど、名前と魔術のみって書かれててびっくりだったよ」
ギルドか何をする場所なのだろう。
というか母様、コミュニケーション苦手だったのか。
「あれは知らなかったんだ。それに我は苦手なことなんてないからな。」
こうして4人が集まることになったらしい。
勇者パーティーの誕生というわけだ。
そこからいろいろと話が続き、
みな、酔がまわってきたころ。
「ガハハハハ」
父様は勇者とわらい
「アハハハ」
母様はお酒を味わいながら飲み。
お姉さんはダル絡みをしてくる。
「なんでリリスちゃんもニアちゃんもそんな可愛いの食べちゃいたい」
「あ、二人ともしっぽかわいいねぇ」
「ニアちゃんお耳もかわいいねぇ」
本能的にだろうかニアは大人しかった。
「にゃ」
「リリスちゃんも大きくなってきて、かわいいねぇ」
「修行も頑張ってえらい」
「すごいぞおおおおおお」
「かわいいなあああ」
スリスリと触ってきたり、抱きしめてきたり、
撫でてきたり。
そろそろうざくなってきた。