14話 魔王、重い腰を上げる
そろそろ、勇者との剣技を教えてもらい、3ヶ月が経過しようとしていた。
この3ヶ月、剣技については申し分なく成長できたと思っている。
詠唱しながら剣で攻撃、
剣で相手の魔法を防ぎながら詠唱、
魔法で魔法を防ぎながら剣で攻撃、
相手の剣を防ぎながら相手の魔法を魔法で防ぐ、
いろんなパターンを覚えたが主にこの4つになることが多くなった。
ただ、どんだけ魔法を使っても、あの勇者には敵わなかった。
剣なんてもってのほかだ、全部防がれる。
あの勇者とんでもないマゾか、雷耐性が凄いのかもしれない。
しっぽの魔力半分、自分の魔力を半分で使った。
「ライトエレクリック」を耐えていたのだ。
魔力を多めに消費して、普通の雷より強いぐらいあるはずの魔法だ。
清ました顔で仁王で立たずんでいた。
今知っている、魔法の中で1番火力が高いはず、なのに。
もうこの怪物には勝てないと心が折れそうだった。
ダメ元で剣で殴りつけにいったら。
勇者の「ウインド」と翼の構えをし、野球のボールをバットで飛ばす勢いで、ふっとばされた。
「今日も勝てないにゃ」
ニアは毎日楽しそうにしていた。
日々、族秘技をからめ手に使っていたからか、
最初に会った時よりも速く、鋭くなっていた。
この前なんかあの勇者に、爪で傷をつけれていた。
ニアはそのことに、喜んでいたせいで「ウインド」と剣で飛ばされていたが。
今戦って、ニアに勝てるのだろうか。
こんな感じで今、悪戦苦闘を強いられている。
「勇者、なんで私は傷も一つ、あなたにつけれないの」
「そんなことはない、リリスのライトエレクトリックは精度も攻撃も申し分ない」
「魔獣との戦闘、ダンジョン攻略でも前線にたてるぐらい強くなっている」
この程度で前線にたてるのか、人族は案外弱いのかもしれない。いや勇者は例外だが、
「ただ、僕を倒そうと思うからいけないんだと思うよ。後、僕の族秘技のせいだね、本当は魔法の使用を控えてしまうかもと思い隠していたのだけど」
やっぱり、族秘技を持っていたのか。
神のことを知っているような感じだったからな、
初めから疑っておくべきだった、
「人族の族秘技はね、あらゆる耐性を高める族秘技なんだ。常時発動する1種呪いみたいな族秘技なんだけどね」
だからあんな余裕そうに、耐えていたのか。
それに、常時発動型の族秘技もあるのか。
もしかして、俺も今発動しているのか。
感覚は分からないのだが、
このしっぽが族秘技なのだろうか。
今度母様に聞いてみよう。
「勇者は、この人族の長でもあったわけですね」
「いや、僕は選ばれなかった方だよ。一人、僕には兄がいてね。兄が族長になったんだ」
そうか、長男が長として選ばれたのか。
ただ俺からしたら感謝したいぐらいだけど、
勇者が、族長になっていたらこうして剣も磨けなかったかもしれないからな。
「勇者は、族長になりたかったのですか」
「いや違うよ、僕は御父上に陛下に、よくやったなと褒められたかっただけなんだ」
「一度だけ褒められたことがあった。それっきりもう、言われたことはないけどね。初めて魔法がうてたときだっけか」
あの時ことを今でも覚えている。
忘れることはないだろう。
「私も同じ、母様に褒められたいから今頑張れてる」
凄く気持ちが分かる気がする。
ただ1人に褒められたい。
それだけで救われた気がするのだ。
誰か1人がそれを応援してくれる。
それだけで、俺はあっちの世界でも頑張れたかもしれない。
もう遅いが、
今は違う母様と父様が応援してくれてる。
俺はそれに応えないといけない、
頑張らないといけないのだ。
「そうだね、頑張ろう、よく頑張ったと褒められるように」
「分かりました、頑張りましょう」
「主人に褒められたいにゃ、気持ちわかる」
「そうだね、たくさん褒めてあげよう」
「やったにゃ」
そして今日は終わった。
明日は久々の休日なにをしようか。
「ニア、起きて」
このやり取りを何回したのか。
「にゃ、今日は、休み寝るにゃ」
分かるが、走るぞ。
1人で走るのは華に欠けるのだ。
尻尾をみながら、ニアの匂いを感じながら走れるから良いのだ。
ただ俺も疲れているのか。
ベッドで、ニアの耳を堪能していた。
「すぅ〜、はぁ、いい匂いですね」
「吸うのをやめるのにゃ」
「いつも辞めないにゃ、どんなときでもするにゃ」
「はぁ。触るだけにしときますよ」
この触り心地が最高にいいのだ。
寝てる時たまに触らせてもらうが、最高だ。
後このふわふわの尻尾、止まらない。
「リリス久しぶり」
ドアが開いた。
「父様、」
「おっと、すまない」
ドアが閉じた。
俺は絶句した。
ニアの体にまたぎのり、耳と尻尾を堪能していた。
ニアの服は少し、はだけていたので、勘違いしたのかもれない。
急ぎ着替えた。
弁明のために。
前に、勇者が買ってくれた服を着て、行く。
リリスが大人の階段を登っているのを見てしまった。
性欲だけゼヌニムに凄く似てしまったのだろう。
魔王の血恐ろしい。
種族的にしかたがないのか。
それでも速くないか。
相手は女の子だろ。
いや、魔法を使い、生やすことはゼヌニムのお家芸だが。
流石にまだ教えてないだろ。
教えてなくても本能でできるのか。
どうする。
ゼヌニムに聞くか。
いやもしかしたら勘違いかもしれない、そうだ。そうに決まっている。
後でちゃんと聞いてみよう。
「父様違います」
俺はなにを言っているんだ。
これだと認めているようなものじゃないか。
クソ、なんで今日が、休みだったのか聞けばよかった。
「リリス、」
「母さんもよく戯れていたから大丈夫だ」
えっ、母様もモフモフしていたのか
「母様も獣族の耳や尻尾を撫でるのがすきだったのですか」
あっ、そっちか俺も心が汚くなったな。
「そうだな、嫌いではなかったと思うよ」
嘘ではない
「それと勇者を一瞬本気にさせれたらしいじゃないか。凄いぞこれからも頑張るように」
「はい」
どこで本気にさせたんだ。教えてよ。勇者さんよ、
父様と、母様のところに行ったら。
「久しぶりです。リリスちゃん」
「はい、お姉さん久しぶりです」
「お姉ちゃんね」
「はい、お姉ちゃん」
なんか、前にもこんなやりとりをしたような気がする。
というか。なんなんだこの空間は、
勇者と魔王の決戦みたいな空気を漂わせて。
「表ならアレをする」
「裏ならば、しないぞ我はな」
コインを投げた、くるくると周り机の上で裏をむく。
「クソぉ、僕ら二人だけか」
「勝手にやっとれ、馬鹿二人」
「そうかゼヌニムはしないのか」
「相変わらず、勇者君は運がないですね」
みんな笑顔で喋っていた
一瞬であの空気が変わる。
「なんですかそれ」
「あっ、リリス久しぶりだな、」
「久しぶりです。母様、」
母様は、元気そうだった。
「強くなったらしいじゃないか」
「まだまだです」
本当にまだまだだ、
どうしたら勇者の口から負けの一言を出せれるのか。
「このコイントスはね、2対2に分かれたらすることだよ」
「今回は我らの勝ち星だがな」
「負けたか勇者よ」
「すまない僕の運が悪くて」
「相手が悪かった、相手は魔族の長、魔王だ」
なんだこの茶番は
「では二人しかやらないが」
「久々の集まりを祝して」
勇者は言った
「我々はどこにいても何者であろうと仲間であると」
父様は言った
「我々は四人で一人である欠けるのは許されない」
二人は言った
「すべての種族の弱きもののため立ち上がる
我らは仲間を信じる
我らは敵を赦さぬ
この行いこそが神の代わりである
我々が勇者である」