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紫ノ宮愛華と黄原恋シリーズ

私と親友の弟くん

作者: 冒人間

「ごきげんよう、知性、品性、その他ご自身のありとあらゆる欠点を帳消しにすることが出来る魔法の言葉、『ユウくんの姉』という奇跡の称号を授かったこの世界で最も幸運な星のもとにお生まれになられたわたくしの親友、黄原(きはら)(レン)さん」

「早速だけどもう親友やめてもいいか?」


 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆


《ー1年前ー》


「全く…この人間国宝、終身名誉世界遺産、リアルチートスキル『才色兼備』持ちのわたくし、紫ノ宮(しのみや)愛華(あいか)が何故このような平凡極まりないしみったれた高校などに入学しなければならないというのでしょうか……

本来入学するはずだったエリート校の面接試験で

『あのチンパンジーでも解ける程度の筆記試験でこのわたくしと学び舎を共にするに相応しい知性を持った生物が選定されるとは到底思えないのでわたくしの考えた最低限知的生命体と呼ばれるのに必要な知能指数に合わせた内容に変えての再試験をお願いいたしますわ。

 それと、この学校の全講師にはこんな事にわたくしの手を煩わせたという事実に対する謝罪文を最低100ページの原稿用紙にまとめてご提出の通達を今すぐお願いいたしますわ』

と、至極当然の要求をしただけですのに……

お父様も焼き土下座を披露しての謝罪など我が親ながら全く情けない……」


「それじゃ、アタシは入学式行ってくるからな!ユウ!あんたももう中学生なんだからいい加減甘え癖直しなよ!」


「むっ?下品(げひん)下賤(げせん)下劣(げれつ)みんなで歌おう下下下(ゲゲゲ)()としか言いようのない品性の欠片もない声が……

嗚呼……これから3年間あのような有害隔離指定生物たちと共に過ごさなければならないとは―――」




「う、うん……じゃあ……また後でね……お姉ちゃん……」




「――――――――ッッッッッ!?!?!?!?!?!?」




――その時稲妻が、いえ、コロニーレーザーが落ちたといっても過言ではない衝撃が私の脳内を貫きました。




――ク………クッソ可愛えェェェェ――――!!!!!!!




 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆



「そう……あの頃のわたくしは自分以外の人間など親兄弟ですら虫と呼ぶことすら烏滸がましい細菌かプランクトンくらいにしか認識していないかった傲岸不遜な女でした………

ユウくんという天使(エンジェル)に出会ったことで、わたくしは初めて他人を尊ぶという感情を学ぶことが出来たのです……」

「クソ女がクソいかれ女に進化しただけじゃねぇか」


「そして恋さん、貴女という共に(ユウくんのことについて)語らい、共に(ユウくんのことについて)悩み、共に(ユウくんのことについて)励ましあう唯一無二の親友を得て今のわたくしがあるのですわ」

「アタシはもう何度てめぇと出会ったことを後悔したか知らねぇぞ」


「さて、今日貴方をお呼びしたのは他でもありません、わたくしとユウくんのことについてです」

「それ以外のこと話したことねぇだろ」


「この1年間わたくしはユウくんとさりげなく交流を深めてまいりました。

時にユウくんの学校へのご登校の間をご一緒したり、

時にユウくんの学校からのご帰宅の間をご一緒したり、

時にユウくんの学校でのお昼休みの間をご一緒したり…」

「待て」


「お休みの日にはご自宅でTVゲーム、お外でスポーツ、結婚式場の下見などをユウくんとご一緒させて頂いたり…」

「さりげなく自分の欲望を組み込んでんじゃねえ」


「貴女のご両親にはユウくんをこの世に産んでくださった感謝の気持ちを原稿用紙500ページ分にしたためて朗読しようとしたり…」

「必死に止めたアタシにマジ感謝しろよてめぇ」


「お正月には初詣にご一緒させていただき、ユウくんに出会えた感謝、そしてユウくんの健やかなるご成長とご健康を願い、お賽銭箱にドラム缶いっぱいの5円玉を流し込み、ヘドバンのごとく鈴を鳴らしてあらん限りの祈願をいたしました」

「神様を怖がらせるな」


「それでも彼にはまだわたくしのこの好意を伝えてはおりません…

ユウくんはまだまだ心身共に幼く多感なお年頃…

時には暴走しそうになるこの衝動を抑え込み、ゆっくり、じっくりと2人の時間を育んでいかなければなりません」

「抑え込めてたかなぁ?なあオイ抑え込めてたかなぁ?」


「しかし、彼と出会ってもう1年…ユウくんとの心の距離も着実に縮まってきているはずです…

わたくしはここで新たに一歩を踏み出し、彼との関係をまたほんの少しだけ深めていきたいと考えている所存でございますの」

「色々と言いたいことはあるが……まあいいや、具体的には?」


「SEX」

「お前の一歩はワープ航法かなにかか?」


「実はこの前、ユウくんの誕生日が近いという事もあり、何か欲しい物はないか、ついでに恋人は欲しくないか、といったことを訪ねてみたのですけど……」


『別に欲しいものはないんですけど…………最近はお姉ちゃんとあんまり遊ばなくなっちゃったし……お父さんやお母さんもお仕事で忙しいし……なんていうか……家族で一緒に過ごしたいな……』


「これはつまり『愛華お姉ちゃんと家族になりたい』『いやもういっそ子供を作りたい』『SEXしたい』ということになりますわよね?」

「今からでもこの短編のタイトル【変態女と狙われた少年】にしねぇか?」


「そこで恋さん、貴女は明らかにそういった遊びに慣れていそうですよね?

もう見るからに【ファザー・アクティブ】やってます、という感じですよね?

平たく言えばビッチですよね?

ユウくんとの【ファースト・エクスペリエンス】を極上のものにする為にも性交渉における注意点をご教授いただければと」

「一応聞くけどアタシ達親友なんだよな?それ親友に向けてる言葉なんだよな?」


「それと……まさかよもやとは思いますが……

貴方のビッチ(りょく)がわたくしの想定をはるかに超えていたとしたら……

精々ヤムチャ程度かと思っていたらブロリーだったという程のビッチ(りょく)のインフレが起きていたのならば……!

実の弟に対してのインモラル……!

そのような最悪の事態も十分ありうる……!

もし、万が一にもそのような過ちが犯されていた(ダブルミーニング)場合……

わたくしは貴女に完璧・弐式奥義(アロガントスパーク)をお見舞いしてしまうやもしれません……!」

「そろそろブチギレてもいいよなァ!?つーかアタシはお前の弟のアキくんとしか付き合ったことねぇよ!初めてを捧げたのだってつい最近――――」







「……………………………………………………ん?」

「あっ」








「おっ、お前ェェェェーーーーー!!

今までどの面下げてツッコミ続けて来やがったァァーー!!

っていうか喰ったんか!?おいしくいただきやがりましたのかァァーーー!?」

「うるせェェーーーー!!アタシがなんでテメェと親友なんて苦行をし続けてると思ってやがった!!せめてもの罪滅ぼしだったんだよ!!クソが!!」

「じゃあかぁしゃあアァァーーー!!喰わせろ!!

今すぐユウくんの貞操喰わせェアアァァァァーーーーーー!!!」


 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆


「なーユウ」

「なにー?アキくん」

「ウチのねーちゃんのことどう思ってる?」

「楽しい人だなーって思ってるよ」

「どの辺が?」

「うーんと、例えばいつも会うたびに

『どうもごきげんようユウくん、今日も愛らしいお姿でほんとマジ可愛いくてもうヤベェよコレいやほんとコレどうしよメッチャ天使いやむしろ(ゴッド)つまりわたくしは神を喰らいし者(ゴッドイーター)―――』

 って白目向いて痙攣しながら早口で呟いたりするところとか」

「お前が一番大概だよ」


 完

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