7 魔王討伐の旅に向けて
10時投稿になってしまい申し訳ございません。9時までに書ききれませんでした。
最近睡眠時間が足りずぼーっとしているので、誤字とかあったら報告お願いします。
「のーぼーせーたぁー」
浴衣に着替え、部屋に戻ってきた俺たちは、用意されていたお茶菓子と共にお茶を嗜んでいた。
お茶の匂いと温かさは、心の底を満たしてくれる。日本人だからか、お茶って落ち着くんだよね。
和洋折衷な部屋で、広めな和室と洋室が一部屋にあった。内装は異世界でも大差ないんだな。
ぐでーっと膝丈の机に突っ伏した。
「確かに、なんやかんやでリリーずっと温泉に浸ってたよね」
「誰の所為だ、策士めぇ」
顔のみを上げ、じとぉーっと、とてつもない蔑視を送る。肩こりだの何だのに効くと言われたから入ったのに、副作用で筋肉痛がくるなど、大変だった。
イレイヴがぴんとしている理由は唯一つ。温泉に浸かっていないからだ。
浴衣の褄下を気にしながらも、座布団から足を投げ出す。
「変な温泉ばっかりで大変だったんだよ!」
「うん、楽しかった」
「外道g...って、いたた...筋肉痛が残ってる」
「マッサージしてあげよっか?」
「お願いー」
イレイヴにも人の心はあったらしい。獲物を見る目で俺を見ているが。
畳にうつ伏せになると、イレイヴは早速マッサージに取り掛かってくれる。
い草の匂いと手から伝わる体温で、とてもリラックスした状態になる。
「んぐぅ、あ、そこそこ。僧帽筋あたりが固まってて...」
「いや、僧帽筋って何処?」
「首筋から背中の中央にかけて伸びてる筋肉」
「そうなんだー」
イレイヴ、マッサージ上手いなぁ。いい感じに筋肉もほぐれてきて、眠気が...
「すぴー」
「あ、寝た」
寝てはいない、頭は起きているのだ。だが、身体が制御できなくなってしまった。身体だけ眠ってしまったのだろうか。
「これは、チャンス...」
ちょっと待った、チャンスってなんだチャンスって。
「失礼しまーす」
――むにっ
あーこいつ、俺の胸を揉みやがった!感覚はないけど、多分そう。
「や、柔らかい...私のなんて、全身どこでも変わらないのに」
...自滅してる。何やってんだか。
というか、そろそろ起きてもらわないと困る。俺の身体ー、起きろー!
「んぁ、あ、イレイヴ!私の胸揉んだでしょ!」
「き、気の所為じゃない?」
「気の所為じゃないよっ!」
とぼけるな。まあ俺も男だし、そんなにケチじゃないぞ。
俺は、ばっと両手を広げると、胸を曝け出した。
「?」
「...さ、さわるくらいなら良いよ」
「きゃー!ありがとー」
こら、抱きつくな。これは唯の情だからな!
「胸のない私も、成長しますように...」
「イレイヴさん?何処触ってるんですか?」
イレイヴの上に乗るように座らされた俺は、お腹辺りを探るように押されていた。抱きつかれるような形になっていて、恋人みたいだ。あと、なんか手付きがえっちだ。
「開発しようかなと」
「今 す ぐ 止 め な さ い 」
「ちぇっ」
とんでもない娘だ。何処で覚えたんだよそんなこと。
もしかして、そっち系の人...?
今夜、食べられる!?
「イレイヴ、言っておくけど、夜這いはなしだよ?」
「し、しないから!」
本当かよ。タンスから布団を取り出すと、シーツを取り付けて床に敷く。
「私はもう寝るから。おやすみぃー」
「うん、おやすみ」
こっちに来てから、まともに寝れるのは初めてかも知れないな。
瞼を閉じると、自然に意識が遠のいて...
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気がつくと、朝になっていた。
「おはよー」
「おはよ」
平和な夜だった。開けた浴衣を直し、前髪を払う。
「...寝癖、大丈夫?」
「っくふ...リリー、結構立ってるよ」
「ええ、本当!?」
パタパタと洗面室の鏡へ駆け寄り、覗き込むと。
「バケモノだ」
髪がすごいことになっていて、ぱっと見はもじゃもじゃしたバケモノだ。
あまり髪が長くなかったことが吉と出て、櫛で何とか元通りまで梳かすことができた。
...ちゃんと髪の手入れしなきゃな。
「準備できたら出発するよ。魔王を倒さなきゃ」
「えー、めんどくさい。もうちょっと観光していこうよ」
「ダメ。被害者だってだんだん増えてきていて...」
「大丈夫だって、裏側にいかなきゃ魔物もいないし、街は防御壁で囲われてるし」
「もう...」
否定以外は肯定とみなします。荷物は殆ど無いので、何処か面白いところへレッツゴー。
階段を駆け下りると、カウンターへ飛びついた。
受付のお姉さんを呼ぶと、
「この街の観光スポットを教えてください」
「そうね、拮抗遺跡なんてどうかしら。数千年前、勇者と魔王が戦った地とされていて、魔王の攻撃によって朽ち果てたそうよ」
「そうなんですか。面白そうですね」
もしかしたら、退治しろと言われている魔王の情報が得られる知れないし、単純に神殿とか、戦地とかは厨二心がくすぐられるんだよな。
よし、今日は其処に行こう!
荷造りが終わったのか、イレイヴが息せき切って走ってくると、とても肯定的な意見を述べた。
「はぁ、はぁ、良いんじゃない、其処。行って、みよう、か」
「やったー、決定!それじゃ早速行こう。場所は何処ですか?」
「少々お待ちください」
受付のお姉さんは一度カウンターの奥の方へ消えると、一枚の地図を持って戻ってきた。
その地図は20インチ程の面積を有していて、地形情報が細かく書き込まれていた。縮尺は5万分の1程度だろうか。道筋が的確に記されたその地図は、年季が入っているのだろうか、薄く黄ばんでいる。
「その地図を伝えば着きます。そして、こちらも持っていってください」
そう言って手渡されたのは、水晶版のようなものだった。清い水のように碧く透き通っていて、濁りの一つすらもない。
「それは、表示石と言って、地図などのGISデータの表示や、魔物の換金履歴の管理、売値や買値の情報など、様々な用途で使用することができます」
「便利ですね」
現代でいうところの、タブレット端末だろうか。唯一の違いは、重いこと。推定は1キロ程度だ。
「勇者様、魔王討伐の旅にお役立て下さい。私たちの命運は、貴女にかかっています」
バレてたのか。マズイ、魔王そっちのけで観光しまくろうと思ってた。
こうなったら、さっさと魔王倒しちゃって、のんびりとスローライフを送ろう...!
「お気遣いありがとうございます。機会があったら、また来ますね。あと...」
「どうしましたか?」
「お願いなんですけど、もうちょいまともな効能の温泉も用意していただけませんか」
「...善処します。ちぇっ、面白かったのに...」
あんたもかい。この世界には変人しかいないのか。
地図と端末を受け取ると、ショルダーバッグを肩にかけ、歩みを始めた。
「お世話になりました」
「ご利用ありがとうございました。またのご利用をお待ちしています」
ドアに手を掛け、来客を知らせる鐘の音と共に、俺たちは旅に出る。
この世界に混沌をもたらした(らしい)魔王を討伐する為に。
tx!:)
ありがとうございます(╹◡╹)