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ほのぼの異世界旅  作者: ねむねむしぐれ
一章 魔王討伐の旅
7/15

6 わーい、温泉だぁ!

宣伝)「未来の視える少女は、幼馴染の命運を知っている。」の短編版が2024/3/11の日間ランキングに載りました。感謝。

完結したので見ていってもらえると嬉しいです。


なんか、ギリギリセーフなラインって書いていて楽しいんですよね。R-15のラインがいまいち分かっていないのですが、今回の内容くらいなら、全年齢でもおーけー?

「ふぅー。まんぷく...」


 旅館の料理はとても美味しかった。香りも然ること乍ら、采配が美しく、工芸品を見ているかのようだった。食べる時には崩さないといけないので、心を痛めたが。それにしても、日本の侘び寂びを感じさせる良い食事だった。この時だけは、元の世界へ帰れた気がした。

 同じく食事を終えたイレイヴは、興味を抑えられないといった目でこちらを見るや否や、当然とも言えよう言葉を発した。


「リリー、温泉行こう!」


 知ってましたよ、こうなることは。なんとなく黙っていた所為で勘違いされているが、俺は男なんだよなー。女湯に入るのは犯罪なわけで。


「えーと、ほ、ほら、食後すぐにお風呂に入るのは良くないって言うじゃん?だから、私は後で良いかなー」

「なら私も」


 ですよね~。そりゃそう返すわな。数秒前の俺はなんでこの言い訳選んだんだよ。

 仕方ない。観念するか。


「じゃあ、15分後くらいかな。温泉って何階だっけ?」

「X⁰階だよ」

「1階じゃん、ややこしい」


 そんな言い方する人、初めて見たわ。

 それまでに、着替えやバスタオルを用意しなくちゃいけないな。

 タオルは部屋に用意されてたし、着替えは浴衣みたいなやつがあったな。それでいいか。



********************



「此処が大浴場...」


 「大浴場」と呼ばれる以上は、それなりの大きさはあるだろうと認識していた。だが、訪れてみると()()()()どころでは無かったのだ。


――辺り一面、浴場なんだが?


 温水(あたたかい)プールかな?

 推定だが、40平米はあるだろう。その広大なスペースには、煌びやかな湯水が流れ込む浴槽が点在していた。湯気や熱気でバスタオル1枚で突っ立っていても肌寒さは感じない。


「ひろ〜い...」

「25メートルプールが2つくらい入りそうね...」


 呆気にとられて立ち止まること十数秒。イレイヴがついに切り出した。


「入ろう」

「うん」


 シャワーブースは数多にあるが現在、他に入浴している客はいないようで、人恋しくなる。

 そして、最大の壁が立ちはだかった。


――どうやって身体洗えば良いん?


 バスタオル巻いたまんま身体洗えるわけなくない?どうするの。

 助けを求めるように視線をイレイヴに移す。

 イレイヴは、既にタオルを解いていた。

 咄嗟に両手で顔を覆うと、指の隙間から彼女を覗く。やましい気持ちがあったわけではない。断じて。


「うわぁ、破廉恥ぃ」

「失礼ね。リリーも、そのままじゃ洗えないでしょうが。ほーら、お姉さんが脱がせてあげよう」


 お巡りさんこの人です。お姉さんじゃなくておじさんの間違いだろ。

 仕方がないので割り切り、巻いていたタオルを解く。

 初めてこの姿になった自分の裸体を見た。

 意外と胸はあり、身体の大きさと比べるとアンバランスだ。体型も恵まれていて、ウエストは細く締まっている。一言で言えば、華奢だ。

 イレイヴの視線がこちらに釘付けなのに気づくと、胸を隠してジト目を向ける。


「えっち」

「だってぇ、私より年下みたいなのに、私より胸大きいんだもんっ!」


 イレイヴは涙目になる。ちょっと可哀想だな、それの所為で男扱いされたのかも知れないし。

 取り敢えずは無視しておくことにした。


「...」


 シャンプーを白緑の髪に浸すと、柔らかい髪の感触が指先から伝わってくる。シャンプーの香りは今まで嗅いだことのない花の匂いがして、なんだか癒やされた。


「私ばっかり見てないで、イレイヴも早く洗ったら?置いてっちゃうよ」

「ま、待って!」


 慌ててシャンプーを手に取ると、髪に浸した。桃色の頬とオリーブアッシュの髪、そこにふわっとしたシャンプーの泡が絡まる様は、まるで姫君のような、美しい少女を思わせる。

 顔は良いんだよなぁ。なんで男に見えるんだろ(特大ブーメラン)。

 シャワーで泡を洗い流すと、髪が頭部に張り付くが為に、骨格や顔立ちがよく見えるようになった。

 そう言えば、鏡も見たこと無かったな。どんな顔してるんだろ...


「...」


 待って、俺美少女過ぎん?

 もちもちとした頬にすっとした鼻立ち。大きく潤んだ瞳に幼気な眉毛。瞳はアースアイだった。

 珍しいな、瞳の地の色は瑠璃色で、瞳孔に近づくに連れて淡い金色へと移り変わる。こんな瞳を実際に見たのは初めてだ。


「リリーその胸、ちょっとだけ触らせてくれない?」

「へ?」

「だから、その胸を触らせてほしいの!」


 へぇ、ってなんでだよ!あんたにもあるじゃないか。


「あやかりたいの。私も胸が大きくなりたいー!」

「動機が不純。お巡りさん呼ばなきゃ...」

「一緒に寝た仲じゃんっ!」

「それは語弊が」


 同性でもダメなものはダメ。

 後、何か恥ずかしいから。


「置いてくよー」

「あー、ひどい!待ってよー」


 一通り身体を洗い終わったので、湯船に浸かろうと思う。

 桶や椅子を定位置に戻し、シャワーブースから立ち去ると、1つ目の温泉の前で歩みを止めた。

 一番気になっていた、琥珀色の湯が湛えられた温泉。波々と揺らぐ水面は生きた宝石のようで、ため息が出るほど美しい。 

 お湯の温度を確かめるために、表面に軽く触れてみる。


「あっつぅ」


 体感は50度だ。これには「お風呂は41度」と心に決めた俺には熱すぎる。

 仕方がない、此処は諦めようか。


「リリー、どうしたの?」


 湯浴みを終えたイレイヴが追いついたようだ。


「お湯が熱すぎて...」

「ああ、入ってみたら案外大丈夫だよ。魔法の温泉だし」

「えぇ」


 適当言うな。だが、その通りかも知れない。何せ此処は異世界。魔法があるくらいだし、何が起こっても不思議ではない。

 それなら、試す価値はあるだろう。


「じゃあ、入ってみる」


 慎重につま先から入水する。水面の波紋は静かに広がり、浴槽の縁に当たると穏やかな波となって姿を消した。その様は、どうにも神秘的で未知の力を感じた。


「あつ...くない」


 先程触れた時に感じた熱は何処へ行ったのやら、元の世界で良く慣れた「41度の湯船」へと様変わりしていた。この温泉は、入る人が心地よいと感じる温度に自動調整されるのか。便利な世界だ。


「イレイヴ、丁度いい温度になった」

「でしょう?その温泉には確か...子宝に恵まれる的な効能があった気が」


――バシャーン

 いけない、慌てて立ち上がったが、良く考えなくてもマナー違反だ。


「それってどういう...」

「原理は良くわからないけど、受け入れ準備が整うらしいよ」

「もっと早く、できれば入る前に言ってぇ!」

「まあ、いいじゃん。子供が急に欲しくなるかもよ?」

「絶 対 な い !」

「そっかぁー」


 なんて温泉だ。逆に男湯を見てみたくなったんだが。


「イレイヴ、()()()温泉はないの?」

「うーん、あれとかはまともかな。あの緑っぽいやつ」


 指さされた先には、少し小さめの浴槽に張られた緑色の湯だった。


「効能は、魔力の回復とかだった気がする」

「へぇー」


――ちゃぷん

 これも41度だ。分かっていらっしゃる。やっぱり、お風呂は熱めに限る。

 因みに42度以上は血圧の上昇や血栓ができる虞があるため、推奨はされていないらしい。


 あったか~い。心も体も癒やされるぅ〜。

 身体的、精神的疲労の他に、胸の奥にある別のものまで回復する感覚がある。これが魔力か?

 スキルを使うにも魔力が必要なのだろうか?スキルを使う際に何かが減る感覚はなかったが。


「リリーのスキルは魔力効率がすごく良いんだと思う。気づかない程僅少な魔力でも、大きな力を生み出せる」

「心を読まないで?」


 回答してもらえるのはありがたいのだが、突然答えが返ってくるもんだから、心の準備が間に合わないんだよ。


「あ、あとその温泉のもう一つの効能が...」

「もう一つ?」


 嫌な予感しかしない。

 イレイヴの手が肩へ迫り、ついにその指先が触れた時、


「ひゃあっ!?」


――ザバーン。

 今までに体験したことのない感覚が、体中を駆け巡った。

 どうなったんだよ、俺の身体は!


「...感覚が鋭くなる」


 だーかーらー、そういうのは先に言ってくれぇっ!



********************



「つかれた...」

「温泉って疲れを癒やすためのものなのに?」

「誰の所為だっ!」


 あの後、俺はイレイヴに弄ばれ、部屋に返ってくる頃にはくたくたに消耗しきってしまった。

 しかも、いろんなバフ(デバフ?)盛り盛りで大変なことになっている。

 これじゃあ、身体が持たないよっ!

tx!:)

ありがとうございます(╹◡╹)

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