5 言質は取らせていただいてますので。
今日は予定があるので、明日分の投稿はなしです。多分
『「じゃあ、ロリータファッション、やってみない?」
「んんぅ、バニーをやるくらいなら...」』
「ということなので、観念して?」
「リリー、それは卑怯じゃん!?」
ギルドで発行した、半透明のカード。あれにはなんと、「録音機能」が付いていた。
ついでにナビや検索機能もあった。地球のスマホ的な感覚で使えるのは嬉しい。
「よーし、飾り付けちゃお!」
「だーかーらー!」
嫌がり、抵抗するイレイヴを引き摺りながら、良さそうな洋服店を探す。
十数分の探索の末、候補は一つのブティックに絞られた。
ぷんすか怒っているイレイヴは、何処か幼く、可愛い少女にしか見えない。
そう言えば、何歳なんだろ?
「イレイヴって、何歳?」
「えーと、確か...17だったかな?途中から数えるのがめんどくさくなって」
おお、御座なりな一面も。まあ、俺も今は年齢不詳だし?
それにしても、17かぁ。まだ高校生じゃん。JKってやつ?
モダンな街並みにロリータファッションとか、絵になりそうだな。
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「飾り付けタイム!」
小洒落た店に入った俺たちは、試着室を陣取ると、気になった洋服を両手いっぱいに収集してきた。勿論、相手に着せるためのものを、だ。
白いレンガに黒樫の木材?で建てられた店内の様子は、高級感こそあるが、堅苦しさを感じさせない。
照明は淡いオレンジ色で、この場の雰囲気を引き立てている。前世は、女の子と、こんな場所で洋服に囲まれるとは思いもしなかったな。
「まずはこれ。パールホワイトのワンピースにニーソックス。帽子はこのハンチング」
「...はじめの2つはまだ分かるよ?でも、このハンチングはちょっと...」
「可愛いは度胸!それ」
ガバっと、帽子をイレイヴの頭に被せる。
その帽子は白基調の布地に黒いレースがアクセントになっている。そして、頭頂部にぴょこんと2つの突起物があった。
「にゃ~んって言ってみてっ!」
そう、それは猫耳帽子なのだ。
両手を頬に近づけ、手首をくいっと曲げる。上目遣いをして、試すような視線を送る。
「絶っっっ体に嫌!!」
「えー」
全力で断られてしまった。
見たかったなー、白猫ちゃん。
「まあ、取り敢えず着てみて」
「うう、仕方ないわね...」
弁明しておきます。何か、罰ゲームみたいだけど、同意に基づいて行われている行為ですからね!
何せ、周りから少し疑いの視線が射すようになってきたので、肩身が狭い想いをしているのだ。
止めてくれ、コミュ障の俺にはその視線が効く。
――ザー
試着室のカーテンが開かれた。
そこから、花の少女に恥じないファッションのイレイヴが姿を現...さなかった。
カーテンの影に身を潜めてしまったのだ。
「イレイヴ、出ておいでぇー」
「嫌。恥ずかしいから」
とは言っても、しっかり着てるじゃないっすか。背後の鏡で全部見てまっせ。
「鏡」
「...きゃあ!」
「かわい~よぉ」
「もう止めてよっ!」
ふふふ、俺の推測どおりだ。白い肌と、パールホワイトのワンピースは相性バッチリだ。
オリーブアッシュの髪も、帽子のアクセントと調和して、全体的な印象から外れない、完璧な塩梅。
やはり、俺には才能があるみたいだ。
「にゃ~ん?」
再び猫のポーズで挑発してみる。
「うう、もう!やれば良いんでしょ、やればっ!」
顔を真っ赤にしたイレイヴは、お決まりの、猫のポーズをする。
「...にゃあ」
「カ ワ イ イ !」
パシャパシャとシャッターを切る。
実はギルドカード、カメラ機能も付いてるんだよな。
「やめて~!黒歴史になる!」
「ダイジョブ、オールライト!一生大切にするし、誰にも譲らないから!」
「ダイジョバないやつじゃんそれ!」
俺、こう見えて口は堅いぞー。
安心しなされ。からかうかも知れないけど、広まることはないから。
「ふふー、次は...」
「ちょっと待った!次はリリーの番だからね」
「ふぇ?」
忘れてた、俺も着るのか。
「私もとっておきのやつ選んだからね」
「タノシミダナー」
コスプレ系かえっちなやつが来る予感。
イレイヴは、ハンガーにかけられた衣服を手渡す。
「じゃーん。どう?」
絶句した。
「...これ、着るの?」
「も ち ろ ん !」
「うぅ...」
皆様、お察しの通りのものが来ましたよ。
「リリー、出てきてよ」
「む、無理。人目に付いた時点で人生終了するから...」
俺は先程のイレイヴのように、カーテンにくるまっている。勿論、鏡に映らないように、文字通り、くるまっている。見かけは当にイモムシだ。立場が逆転してしまった。
対して、イレイヴは満面の笑みだ。やり返すなんて、卑怯だぞ!日本は仕返しを禁止する法律があるんだぞー!あ、此処日本じゃないわ。
「大丈夫だって!」
「やめてぇっ!」
何重にも巻いて、ひょっこりと顔だけ出していたのだが、くるくる回されて、段々と防御壁が薄くなる。嫌だぁ!
ついに、この姿を世に曝け出してしまったのだ。
...少女趣味の水着姿を。
「うぅ、イレイヴのえっち」
「ありがとうございます」
「へ?」
感謝された。やばい、性癖を拗らせてしまったようだ。
「こんなの、唯の布切れじゃん!」
水着は、碧がかった布切れと言っても問題ないほどの面積しか、身体を隠せていない。
構造はツーピースで、どちらも、申し訳程度にしか肌を覆っていない。映画なんかで、モザイクをかけるべき場所以外隠せていないのだ。
トップスの方には、白っぽい薄いレースが付いているが、スケスケで、あってもなくても変わらない気がする。
胸元には赤いリボンが可愛らしく結ばれている。そして、ひらひらしたレースやリボンは、幼さを強調している。
「下着姿と何ら変わりないし、寒いよ!」
室内はクーラーも効いていて、冷風が素肌を撫でる度に凍えさせられる。
お願いですから、もう着替えていいですか?イレイヴ様。
「やっぱり、絵になるなぁ。幼い顔立ちに、ふんわりとした白緑のショートヘア。それを引き立てる赤いリボンや白いレース。碧がかった水着は肌の白さを際立たせる。人間国宝級の美しさだよ!」
「こんな人間国宝はいやっ!それに、撮影禁止!」
パシャパシャとシャッターを切られるのは、心に特大ダメージが...
もう勘弁してぇー。
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「どっと疲れた...」
「奇遇ね。私もよ」
店を出た頃には、既に日は暮れ、満天の星空が広がっていた。
空気がきれいなのか、鮮明に星は輝いている。
睡魔も最高潮を迎えている。
「眠いよぉ」
「ホテルにでも泊まる?そこに良さそうなところが...」
「あれは絶対ダメ!」
イレイヴが指差していたのは、そういうホテルだった。
無知って怖い。
「ほ、ほら、あっちにもホテルはあるから...」
「そう?じゃ、そっちにしよっか」
セーフ。ギリギリ回避!
ってか、異世界のホテルって、どんなんなんだろ。
ホテルの前に着くと、宣伝用の看板を覗き込む。
どうやら、魔法がかけられた温泉が有名で、入る者の疲れをあっという間に癒やすらしい。
凄いな、魔法。それに、美肌効果や血行の促進も見込めるようだ。
温泉旅館だし、卓球はあるかな?
――温泉。
やらかした。俺、女湯に入らねばならんのか。
申し訳ないから避けたいのだけれど、男湯に入るわけにもいかないからな。(そっちのほうが騒ぎになる)
心を無にすることにしよう。
扉を開くと、来客を知らせる鐘が、チリンチリンと音を奏でる。
「いらっしゃいませ。2名様ですか?」
「ええ。空室はあるかしら」
「はい、305号室が空いております。泊まっていかれますか?」
当然のように同室の流れ。他に部屋もなさそうだし、仕方ないんだけど、無理かなぁ。
もういっそ、男友達だと思い込むことにしようか。
お風呂上がりには軽く巻いただけのパーマもとれるだろうし、リボンなんて付けて寝ないよね。
そんなことを考えているうちに、チェックインは終わったようだ。
「こちらがお部屋の鍵になります。夕食は今から1時間後となりますので、時間になったら食堂へお越しください」
「ありがとうございます。行こう、リリー」
「はーい」
俺の理性が持ちますように。
tx!:)
ありがとうございます(╹◡╹)