4 巨大魚、かかりましたぁ!
釣りやったことない人が必死に書いたので、経験者の方は暖かく見守って下さい...
「可愛い〜っ!」
「ねぇ、私で遊んでない!?」
「遊んでないよぉ」
釣りは雰囲気!
白に水色のラッシュガードの上からライフジャケット、ピンク地の短パンを着て、腕はアームカバー、手袋、足はレギンスで保護している。寒さや落下時の対策もバッチリ。
「たかが釣り堀でしょう!?重装備すぎだし、色合いとか、私に似合ってないよ!」
「のんのん。釣りを侮ってはいけません。私は昔釣り堀で、足を滑らせて落下したんだよ!」
水が冷たくて、死ぬかと思った。しかも魚につつかれたし。
水底まで沈んだけど、上の方には釣り針に刺さった虫、下には魚で行く場所に何かしら避けるべき対象が居るのは辛かった。
その後は無事に40度の熱出したんだからな!
「むぅぅ、それじゃ、重装備は許そう。でも、他に色とデザインは無かったの!?」
「ない。あったとしても、認めないから!」
「こらぁっ!」
だって、可愛くしたいじゃん?人間本能には逆らえないのだよ。
「だいじょぶ、オールコレクト!よし、釣りへレッツゴーっ!」
「ちょっと!」
俺は嫌がるイレイヴの背中を押し、更衣室を後にした。
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「...良く見たら、ペアルックなのね」
「そうそう。丁度いいでしょ?」
自慢気に、ニコッと微笑む。
イレイヴは俺の頬に手を当てるとむぎゅうっと押さえつける。
そして、無尽にいじられつくされた。
「ぴえぇ」
「もう、可愛いの、反則。色仕掛け禁止。」
恐怖で強張ってんだよ。仮にも筋力はあんたの方が強いんだからな!
てか、色仕掛けしてないし。
気を取り直して、釣りを楽しもう。
虫が苦手(というか天敵?)なイレイヴに、先に虫を付けてから、釣り竿を手渡す。
「はい、もう餌はつけてるから、放ってみて」
「ひえぇ、虫が、動いてるっ...!」
「...それでもダメなの?」
飛び上がる勢いで怯えるイレイヴ。段々と、周囲の視線が集まってきた。
水や堀の冷たい色合いと相まって、集まる視線は鋭く見える。
ごめんなさいー!
「ほ、ほら、やってみよ。先の方は見ないでさ」
「が、頑張る」
ぎこちなく震える手で竿を後方へ振りかぶると、大きくしならせて投じた。
――ぴちゃん
心地の良い水の音と共に、水面へと浮きは浮かび、ゆらゆらと漂う。
木製の、釣り堀の足場の縁にしゃがみ込み、水中の様子を窺う。
「いい感じ。そのままじーっと待ってて。浮きが沈んで、糸が張ったら引き上げるんだよ」
「分かった」
今は恐れるべき対象の虫が水中に沈んだためか、少々ご機嫌がよろしい。
それじゃ、俺も。
「それっ」
――ぴちゃん
水面が再び音色を奏でる。この音を聞くと、心が安らぐんだよなぁ。
音を聞くために釣りをしているまである。
浮きが一定の位置に留まったのを見ると、一旦肩の力を抜く。
後は魚との根比べだな。
...待ち時間暇だ、どうしよ。
取り敢えず、イレイヴに話しかけてみる。
「イレイヴ、バニーガールやってみない?」
「ん、いい...ってなんで!?っごほ、ごほ」
突拍子もなさすぎて、咽るほど驚かれてしまった、反省。
だがこれも作戦の内。
「じゃあ、ロリータファッション、やってみない?」
「んんぅ、バニーをやるくらいなら...」
ドア・イン・ザ・フェイス成功!後でまたブティックだな。
なんか、飾り付けるの楽しくなっちゃったんだよな。
「その代わり、一緒にやろーねぇ?」
「ひぇぇ」
背筋に何か冷たいものが走る。
巻き込まれたぁ!
...良く考えなくても自業自得なのだが。
――ぐいっ
そんな話をしているうちに、浮きが沈み、糸が張る。
「あ、かかった」
「リリー、早すぎない?」
たしかに早いな。まだに2分と待っていないのに。
「釣り方見せるから、目を離さないでね」
「うん」
竿を立ててしならせる。結構な大物だ。魚は水飛沫を撒き散らしながら、水中へと泳ぎだす。
いきなり引き上げようとしても、針が外れたら元も子もないので、少しずつ距離が開くくらいの力で引き続ける。...と言っても、9割位の力で引いているのだが。
「大丈夫、逃げられない?」
イレイヴは、俺が引き寄せないことに危機感を覚えたのか、心配そうに声をかけてきた。
「大丈夫!魚をっ、疲れさせてるっ、だけっ!」
もう、こっちも疲れてきたよ。筋力がないって不便なんだな...
「ほら、向こうはスタミナ切れ」
先程までの勢いは失せ、段々と飛沫も収まってくる。
網を片手で持つと、そこに魚を入れ、引き上げる。
「うわぁ、大きい」
「だね」
かかったのは、思わずため息が漏れるほど大きい魚だった。
体表は鱗で覆われているその魚は、まるで鎧を纏っているかのように見える。
体長は1メートルほどで、ずっしりと重い。
「これは...シェニカだね」
イレイヴがパンフレットに描かれたイラストと見比べ、そう結論付けた。
「目元の黒い線とか、そっくりじゃない?」
「ほんとだ。ところで、シェニカって美味しいの?」
「美味しいよ。生でも焼いても煮ても。癖がなくて肉厚で、今の時期だと丁度脂がのってる」
いいじゃん。食べたい。
「後で料理して食べよっか」
「いいわね」
楽しみだなぁ。
気づけば周りに人だかりができていた。
「嬢ちゃん、随分とデカいやつ釣ったなぁ」
「魚拓にしないのか?」
魚拓か。確かに、やってみても良いかも知れない。
誰か紙と墨を...って俺のスキルを使えばいいじゃん。
「紙と墨、出てこーい」
すると、瞬きをする間に手の中に出現。便利だな。
「今の、見たか!?」
「ああ、あの嬢ちゃん、特殊能力持ちだ」
あれ、騒ぎが大きくなっているぞ?何故だ。
「あ、あの、俺にサインくれませんかっ!」
「抜け駆けはずりぃぞ!俺にも!」
「へ?」
やばい、なんか大事になった!
押しくら饅頭押されて泣くなとは言うが、流石にこの状況はきつい。
助けてーっ!
「ばたんきゅー」
「行くわよ、リリー」
騒動の中から引き摺り出された俺は、そのまま引っ張られて、釣り堀を去った。
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ひぇ、ひどい目に遭った。命辛々釣り堀を逃げ出した俺たちは、レンガ造りの街を散策していた。
「もう、人目につくのは懲り懲り。それにしても、特殊能力って、そんなに凄いものなの?」
がっくりと肩を落とす。精神的にも肉体的にも消耗しきってしまった。
イレイヴは、俺の疑問に答えてくれる。
「まあ、希少ね。その希少性は、確実なデータではないけど、1000万人から1億人に1人と言われている」
「そんなに少ないんだ...」
地球の人口だと、80〜800人しかいないのか。そりゃサインでももらいたくなるわ。
俺だってほしいもん。
「今後は、隠していったほうが良いかも知れないわね。また襲われたりしても大変だし」
言い方に語弊がありますよ、イレイヴさん。
歩いていく度に疲労が重なっていく...なんでだろ。
案外、原因は直ぐ側にあった。
――肩にかけているクーラーボックスだ。
...あ、そうだ、料理!
「イレイヴ、調理器具ってない?」
「あるよ、携帯用のやつなら」
「じゃあ、これ食べよ」
クーラーボックスの蓋を開けて見せる。
「そうね、丁度お腹も空いてきたし」
「調理なら任せて!」
昔を思い出すな。昔、俺の両親は海外赴任で滅多に帰ってこなかった。そのため、幼い妹のために料理を練習した。
まあ、その時に気を張りすぎたから、ニートになったのかも知れないが。
まず、包丁の背で鱗を落とす。デカいから結構大変だ。
次に三枚おろしにして、切り身を作る。十人分くらいは作れそうだな。
薄力粉や塩コショウ(だと思うもの)をまぶして下ごしらえをしたら、バターらしきものをフライパンで溶かし、そこに切り身を入れて加熱する。焼き目が付いたら、醤油みたいなものを加えて、溶けたバターと共にかけ焼きする。
レモンを添えて出来上がり。
「はい、どうぞ。シンプルな味付けで素材の味がわかるかも?」
「すごい。初めて見る料理だ」
そっか、この世界にはないんだな、ムニエル。
「これ、配ってくるから先食べてて!」
「え、うん。じゃあ、いただくよ」
俺は、お皿を持って、道の端のほうにいたおじさんたちのところへ行く。
「これ、どうぞ。お腹、空いていそうでしたし」
持っていった先は、多分ホームレスの人達。
さっき、お腹をおえているのが目に入ったんだ。
「それではこれで」
「...女神様だ」
その人達は、涙を流しながら、料理を食べてくれた。
いやぁ、人に食べてもらうのって、嬉しいんだよな。
じゃあ、俺も。
「いただきます」
んぐ。あ、美味しい。
きれいな白身には全く癖がなかった。しかし、淡白過ぎず、適度に脂がのっている。そこに、バターの風味や、レモンの酸味が加わって、絶妙な食べ応えを生み出している。
ああ、満足だ。
今度は煮物にしてみようかな。
tx!:)
ありがとうございます(╹◡╹)




