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ほのぼの異世界旅  作者: ねむねむしぐれ
一章 魔王討伐の旅
4/15

3 イレイヴちゃんは女の子

ブクマと評価ありがとうございます。

ちなみに戦闘要素に関しては、今後殆どないと思います。異世界をわちゃわちゃ旅してるTSっ娘と女の子が書きたいので。

 おはよう、目覚めのいい朝だ。天井から、朝の光が漏れ出ていて、顔に陽光が射している。

 目を開くと、天井は布のような素材でできていた。あれぇ、家はコンクリ製だった気がするんだがなぁ。

 周囲を見渡してみると、此処は家ではなく、テントだということに気がついた。寝ぼけてるのか?

 というかなんでテントで寝てんだろ、俺。

 よっこいせと身体を起こし、腕を支点として立ち上がる。


――ジィィ


 疑問を抱えながらも、チャックを下ろし、外へ出る。

 ああ、晴れやかな空だ。空を見るのは久しぶりだな。

 こんなに日差しの強い朝には、引き籠もってゲームでもしよう。買い溜めておいたギャルゲがあったしな。

 でも偶には、日向ぼっこもいいかな。

 ゴロッと草むらに寝転ぶ。...既視感が。

 でも、いい気分だ。青々と茂る草に囲まれながら風に吹かれるのは。

 日光が射しているお陰でぽかぽかと暖かいし。


「...?」


 突如、日光を遮る影ができた。それも人型の。

 朝日を遮るように立つその影は、俺の顔の横に手をつく。


「リリー、起きた?」


 その影の正体である、俺の顔を覗きこんできた少女は声をかけてきた。誰?


「準備できたら、すぐ出よう。見晴らしもいいから、魔物も集まってきやすいし」


 は、魔物?

 それに、オリーブアッシュのショート、深緑の瞳の少女に見覚えはない。

 というか、知り合いに女の子がいた経験もないんだが...リリーって誰?


「ん...」


 あれ、声が高い。風邪か...あっ思い出したわ。

 女の子に転生したんだった俺。


「それで、貴女は誰?」

「ひどい、一緒に寝た仲じゃんっ!」


 おい、語弊があるぞ。

 疑いと蔑みを視線に込める。

 さらさらとした前髪をまとめ上げるようにヘアピンをつけている彼女は、その瞳を潤ませている。

 少女はパーカーのフードを脱ぐと、名乗り出す。


「イレイヴ・アマルベルガ・シェーリズ!冒険者でランクは55、レベルは130、スキルは炎系統」


 いや、知らんわ、ランクとか。喉元...唇の手前まで出かかったが、なんとか飲み込んだ。


「はい?」


 俺の知っているイレイヴは男勝りで、どちらかと言えばイケメンだぞ?――胸も無かったし。

 しかし、目の前に居る少女の瞳は可愛らしく瞬き、頬はもちっとしてそうである。そして胸はそれなりにある。印象が違いすぎるのだ。


「...イレイヴって、本当に女の子だったんだ」

「ひーどーいーよっ!ほら、リリーほどじゃなくても、胸あるじゃん!」


 イレイヴだと名乗る少女は、自身の胸部にぽよっとくっついている膨らみを寄せて、強調する。 

 へぇー。今までなんで気づかなかったんだろう?


「昨日まで胸、無かったよね?」

「あったよっ!晒で押さえつけてただけで」


 反応に困り、固まっていると。

 イレイヴは、いよいよ膨れてしまった。コンプレックスだとか言ってたしな。

 そして彼女は、草原の草花を踏みつける。


「信じてもらえないならっ...!」


 着ていた短パンのウエスト部分に手をかけると脱ぎ始める。

 いやいや、マズイだろそれは。


「私の全てを見せるから!ねぇ、女の子だよね!?」


 涙目で言われても。まだ見えてないし、もう脱ぐな!


「待って待って、信じるから!これ以上はR-15で投稿できなくなるから!」

「...何の話?」


 こっちの話。それにしても狂気だろ。この娘、そんなに虐げられてきたのか?

 俺は必死にイレイヴの腕を取り、行動を制する。


「だってぇ...ぐす、冒険者をやっていたり、運動神経が良すぎたり、ボーイッシュだからって、昔からいじめられてきて...大きくなっても、軽蔑されて...」

「...」


 イレイヴは、ぺたんと座り込んでしまう。

 流石に可哀想になってきた。


「イレイヴは女の子だよ。それに、今日驚いたのは昨日までと印象が違いすぎたからだし、見た目も心も女の子だってこと、良く分かったよ」

「...リリー、ありがとう!」


 先程とは違い、ぱぁっと顔を輝かせたイレイヴは俺に飛びついてきた。

 うぎゅう、苦しい...

 触れてみると分かるけど、柔らかいんだよ。顔も可愛いから、どうして男に見えるのか不思議だ。(ぐさっ)

 それに。男だったらもっとゴツゴツしてるし。

 髪型とかを女の子らしくすれば、モテモテになるんじゃなかろうか。

 頭をぽんっと撫でる。


「イレイヴ。櫛ってある?あと、鏡」

「あるよ、はい」


 手渡されたのは少女趣味な手櫛と手鏡。

 手鏡に関しては、全くの濁りがないところからして、マジックアイテムかも知れない。


「そこに座って、後ろを向いて」

「?」


 ?を浮かべたイレイヴの、短めの髪を梳かし始める。

 髪質は柔らかいし、絡まっていない。優しく櫛を入れる。


「髪短いのに、梳かすの?」

「そう、髪は日頃のケアが大切。長さ的に結んだりはできないから、ちょっとゆるふわにしてみたり...」


 ふわっとパーマを巻く。リボンを結んでユメカワ風。


「じゃーん。可愛いよ!」


 手鏡で髪型を見せる。俺的には満足な出来だ。昔、妹にやってたからなぁ。

 イレイヴは感極まったように、瞳を潤ませる。


「ぐす、ありがとう、リリー。でも、恥ずかしい...」

「頑張れ。可愛いは度胸だよ」

「うぅ」


 ふふふ、恥ずかしがりながらも嬉しそうなイレイヴを見ていると、笑みが溢れてきた。

 髪が伸びてきたらヘアアレンジしちゃおっと。


「そういえば、出発しなくていいの?」

「あ...忘れてた」


 魔物に遭遇したくはないっ!ヘタレチキンだなんて言葉は届きませんよーだ。

 俺はイレイヴの手を取ると立ち上がる。


「それじゃあ、出発〜!」

「ちょっと、テントっ!」


 この後俺たちは、わきゃわきゃしながら、旅支度を整えた。



********************



「ねぇ、本当にこのまま行くの?」

「勿論」


 現在、ブティックで服選び中。

 草原を抜けると、星の丸みで見えていなかったのか、都市が築かれていた。

 ギルドでキュバラムを換金してお金が手に入ったため、いい機会だとばかりに、俺たちはブティックに駆け込んだのだ。

 服選びと言っても、俺がイレイヴに、一方的に可愛い服を着せ替えて遊んでいるだけだ。

 現在は空色のミニスカにオーバーサイズのピンクのパーカー。白基調に薄いピンクを散りばめたルーズソックスを履いて、ハンチング帽を被っている。

 年齢は知らないけど、もとより数歳若返って見える。


「似合ってるよ」

「にこにこされても、恥ずかしいものは恥ずかしいの!」


 わぁ、女の子同士の買い物ってこんな感じなんだ。

 気に食わないけど、なんやかんやいってコミュ障が回復してる気がするんだよなぁ。


「よーし、それ買ってこ!」

「だーかーらー話聞いてよっ!」


 速やかにお会計を済ませると、扉を開き店を出る。

 キュバラムのお陰で1000レグルス(この世界の通貨)が手に入った。

 この世には100レグルス金貨、10レグルス銀貨、1レグルス銅貨が存在しているらしい。また、1万レグルス金貨や100万レグルス金貨もあるそうだ。

 物価から計るに、100レグルスは前世の10万円くらいだろう。儲かるな、冒険者。


「それにしても、きれいな街並みだねー」


 立ち並ぶ建物を見上げながら、イレイヴに話しかける。

 街に建つ家屋は、決まって傾斜の屋根、白い壁、そして窓は小さい。

 材質は良く分からないが、少なくとも木製ではないと断言できる。

 道はレンガ調に舗装されていて、歩みを進める度にカツカツと軽快な音を奏でている。


「そうね。確か此処は、ルトナークって街だったかな。水辺に栄えているから、潮風や直射日光の関係で、白く特殊な材質の壁が用いられた住宅が多い」

「そうなんだ。確かに、日差しが強い気がする」


 カラッとした気候で、今もチリチリと陽光が照りつけてくる。

 ここの人たちが頭巾を被っているのも、そういう理由かな。

 街を往く人々は、頭を覆うものを被っていて、顔がよく見えないから少し不気味だ。

 なんというか、ホラー映画に出てきそうである。


「可愛いお嬢ちゃんたち、釣りでもやっていかないか?」


 不意に声をかけられた。

 振り向くとダンディーなおじちゃんが、簡素な釣り竿を持って立っていた。

 釣りかぁ、中学生ぶりだな。昔、漁業権を取って、海釣りとかしてたんだよ。


「何が釣れるんですか?」

「サドロクとシェニカらへんが釣れる。どっちも重量級だぜ」

「わぁ、やってみたいです!」


 燃えるじゃないか、未知の魚、しかも重量級だなんて。

 東京湾でアジとかはよく釣ったんだが、大物はかかったことないんだよな。


「こいつを使いな。餌は堀の各地点にある」

「ありがとうございます。イレイヴ、やってみよっ!」


 釣り竿を受け取ると、少し距離を置いてこちらを見ていたイレイヴに声をかける。

 明らかに嫌そうな目をしているが、スルーすることにした。


「うぐ、そんなキラキラした目で私を見ないで。断れなくなるから!」

「じぃ〜。もしかして、魚苦手?」

「そうじゃなくて...」


 イレイヴの目線はあちらこちらに泳いでいる。

 その時、彼女の肩に一匹の虫(だと思う)ものがとまった。


「ぴゃーっ!虫が...!」


 虫に怯えたイレイヴは悲鳴を上げたのち、そこらじゅうを駆け回って、健気に虫を振り払おうとした。

 ああ、理解理解。虫が無理と。


「それくらい、私が代わりにやってあげるから。イレイヴは竿を握ってるだけでいいよ」

「それなら、何とか。...その前にこの虫をどうにかしてぇっ!」


 うふふ、面白い人だなー。

 パタパタと走り続けるイレイヴを両手でガッチリと固定し、静止させると、虫を追い払ってあげる。

 ...ほぼ初対面の時、頼りになりそうで格好いいと思ったけど、実際は微妙に抜けているというか、何故か心配になるような人だよなぁ。

 無駄に母性(元男だけど)を掻き立てるのは止めてほしい。

tx!:)

ありがとうございます(╹◡╹)

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