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ほのぼの異世界旅  作者: ねむねむしぐれ
一章 魔王討伐の旅
2/15

2 だから、そんな大層な人じゃないですって

ちゃんと一作品を書ききった方がいいですよね...

「――ギルドに行こう。稼げるわよ」


 あらすじ。陰キャ引き籠もりのダメニートの俺は、異世界転生したら強い女の子になっていた。

 だが、俺は働きたくない!


「いえ、けっこ...」

「着いてきて」


 話聞け。俺に拒否権はないのか!?

 逃さまいと掴まれた手首にはかなりの力が込められており、本気さが伝わる。痛い。

 そしてそのまま、ズルズルと引きずられていく。


「嫌だぁ!」


 抵抗も虚しく。俺は冒険者の女の子に引っ張られ、街へと向かうのであった。



********************



「此処がギルド...」


 少女の言っていた「ギルド」とやらは想像以上に巨大な組織で、何ならこの国の王宮よりデカい。

 そびえ立つ建物からは高貴な雰囲気を感じ、建物の中央に刻まれた剱の紋章が勇ましい。


「入るわよ」


――キィィ


 少女はその華奢な手で、重厚な木製の扉を開く。そこから姿を見せたのは堅苦しい集会場...ではなく。


「イレイヴ、久しぶりだな」

「そうね、エルヴァ―」


 チャラそうな男が現れた。扉の向こう側では、討伐後の宴だろうか。飲めや歌えやの大騒ぎとなっている。

 ――居酒屋かよ。

 ランプのみが灯すその集会場は、薄暗く、木製の壁の暖かさと相まって、落ち着きがある。

 まあ、堅苦しい場所じゃなくてよかった。数年人と関わらなかった弊害を発揮するだろうし。


「――因みに、連れの美少女は冒険者志望か?」

「そうよ。こう見えて強いんだから」


 「志望」はしていない。逆らえないだけだ。それに別に強くない(筋力とかは激減している)し、買いかぶり過ぎだ。


「...」


 ジトーっと抗議の視線を向けるものの、スルーされる。

 エルヴァ―と呼ばれた男に別れを告げると、建物の奥にあるカウンターへと連れて行かれた。


「『ギルドカード』を発行するわよ。手数料は私が持つから」

「ギルドカード?」


 そんなのも分からないのかと言いたげに、深緑の瞳を向けられる。だって聞いたこともないし、見たこともないし。


「貴女、本当に異世界人なんじゃ...」

「チガウヨ」


 ひぇ、疑いの目が!


「まあいいわ。受付人」


 そう言って、呼び出しベルを鳴らす。


――チーン


 十を数える間もなく、暗がりとなっている奥の方から人がやってきた。

 受付人は若い女性で、にこやかな笑顔が可愛らしい。

 そして、胸の主張がめちゃくちゃ強い。存在感が有り余って溢れている。


「はい、新規受付でしょうか?」

「ええ、この娘のカードを発行しに」

「では、お名前を」


 ――な ま え 。

 日本名だと不自然だよなぁ!見た目にしても世界観にしても。


「...」


 子供もいないから、勿論命名経験もない。やばい、また疑いの視線が刺してくる。


「...リリー・イルミナ(仮)です」


 リリーはたまたま白百合が生けてあるのが目に入ったから。イルミナは俺の曾祖母の洗礼名だ。ちなみに曾祖母はキリスト教徒で、フランス人だ。


「リリー、ね。可愛い名前じゃない」

「あ、ありがとうございます...」


 受付人は、「ギルドカード」とやらに記名する、というか刻む。

 ギルドカードは厚さ十分の数ミリ程度の透き通った板で、とても高価そうだ。多分、薄い宝石か何かでできている。

 壊したらどうしよう...と恐れながら受け取るも思っていた数倍頑丈だった。落としたくらいなら、というか銃で撃たれても無事そうだ。マジックアイテムかな。


「わ...」


 俺が触れた途端に、今まで空白となっていた部分に文字が浮かび上がる。


  リリー・イルミナ〈冒険者〉


  ランク:1

  レベル:測定不能

  スキル:退魔,具現化


「レベルが測定不能...?」

「退魔スキルってもしかして...」


 少女たちは小声で会話をする。

 何やらヒソヒソと話し込まれてしまっているので、俺は蚊帳の外だ。

 もしかして、何かマズイことでもしたか...?


「リリー、貴女は異世界からの()()()よ。この世界に突如現れた『魔』を払う」

「え、話についていけないんだけど...」


 少女イレイヴは真剣な眼差しで俺を見据える。


「まず、貴女は異世界人ってこと。そして、勇者だってこと」

「よく分からない」


 むりむり。世界を救うなんてそんな大層なこと...あの爺、俺をどうしたいんだよ!


「とりあえず、魔を払ってくれればいいから。よし、冒険に行こう」

「ちょっと、まずはギルドカードについて教えてくれるとかでいいじゃんっ!」


 謎多いんだよこのカード。ランクとかレベルとかスキルとか。


「...ランクはギルドの階級。成果を挙げると上がっていくもので、最高は100。だけど、ランク100の人は存在しなくて、今いる中で一番高いのはさっき会ったエルヴァ―で70。ランクとともに給料は上がるよ」


 あのチャラ男、すごい人だったんだな。失礼をはたらいた気がする。


「レベルはその人の能力。この値に上限はなくて、レベルが高ければ高いだけ上げるのに必要な経験値量は増える。測定された最高値は300だったから、リリーはそれ以上である可能性が高い」

「ええ...」


 なんで上限突破してんだよ俺。実はあの爺俺のこと好きだろ。


「スキルは、その人の個性。基本的には炎、水、雷、草、風になるけど、稀に特殊なものが出る」

「退魔や具現化ってこと?」

「そう。それに特殊能力は、他のスキルよりも強い傾向があって、普通スキルの人が束になっても敵わない。『退魔』に関しては伝説があって、『この世界に不幸が来た時に現れ、救世主となる』と伝えられている」


 やーばーいー。働かないといけなくなるじゃん。危なそうだし嫌だなぁ...


「と言うわけで、旅に出るわよ」

「むり、いや、ことわります」


 ああ、イレイヴのこめかみに青筋がっ!


「たーすーけーてー!」


 涙目でギルドの人達に抗議をするも、生暖かい目で見られてしまう。

 俺はまたまた引き摺られて、ギルドを後にするのだった...



********************



 街はなかなか発展しているように見えたが、街を一歩出ると、一帯に草原が広がっていた。草丈の低い、青々とした草原の果てには、不気味に曲がりくねった大木で構成された森林、その隣には広い湖。ネッシーでも湧きそうな、神秘的な雰囲気を感じる。

 土地は有り余っているため、人が集まっている辺り以外は開拓していないのだろう。

 その土地を地球の日本に分けてくれ。


「風、強いね」

「ええ」


 一番の難点は、風が強すぎることだった。ウインドブレーカーの裾を持って広げたら飛んでいくんじゃないかと思うほどには。

 それにしても、俺は何処に向かっているのだろう?引き摺られるうちに、ふとそんな疑問が浮かんだ。

 あからさまに魔城でも立っていたのなら分かるが、そんなものは何処にもないのである。

 答えを求め、イレイヴに視線を送る。


「今、星の反対にある巨大な穴に向かってるんだ。突然現れた穴でね、そこから魔物が飛び出してくるんだ。並の冒険者じゃ歯が立たないから、今はもう誰も近づかなくなったよ」


 なるほど、この世界も球形なんだな。そこは地球と同じだ。


――数時間後


「つ、つかれた...」


 引き籠もりに歩かせていい距離じゃないだろ。すでに体感10キロは歩いている。


「まだまだよ。目的地までまだ数万倍は歩かないと」

「ひぇ、死んじゃうよ、それ」


 せめて休憩をくれ。

 本当に死にそうな俺を見て、イレイヴは歩みを止める。


「少し休憩しよっか」

「神様!」


 ゴロッと草原に寝転ぶ。風が気持いい〜...

 草の香りに囲まれながら、暖かな日差しと爽やかな風。段々と眠くなってきた、のだが。


「起きて、魔物」

「ひゃいっ!」


 ほっぺたをぷにぷにされたので飛び起きた。

 なんか嫌じゃん。よく知らない女の子にほっぺたをぷにぷにされるの。


「あれがキュバラムっていう龍型の魔物。遠距離での戦闘が得意で、距離を置かれると厳しい」

「撃ち落としちゃダメなの?」


 イレイヴは、なんでそんなことを聞くのかという顔でこっちを見てくる。


「良いんじゃない?できるなら」

「じゃあ...」


 じいっと、祈るような視線をキュバラムに向ける。

 俺のスキルは「具現化」だったはず。考えたものを現す能力だと思うんだが。


「おちてこーい」


 ガラガラと岩が落ちてくる。そして、ガツンと魔物の頭部へクリーンヒット。

 うわぁ、痛そ。

 キュバラムは重量に耐えられず落下し、どーんと爆音が響いた。

 確認に行くと、完全に伸びてしまっていた。

 コツンと頭らしき部分を叩くも、反応はない。


「伸びちゃった...」

「貴女...これじゃあ災害ね」


 俺を歩く災害と言うな。見た目だけなら唯の女の子だろ。


「こいつをこの瓶に入れるの。そしてギルドに持っていくと換金できる」


 そう言って、片手に収まる程度の大きさの小瓶を取り出す。


「入らなくない?」


 入れようとしているのは、羽を含めて全長十数メートルはある巨大な魔物だ。全体は疎か、頭部にちょこんと映えている角すら入らないのではないだろうか。


「大丈夫。縮むから」


 不思議なことに、イレイヴが瓶の栓を抜くと、キュバラムは吸い込まれていく。

 某狸のポケットかと突っ込みたくなったが、喉元で飲み込む。

 いやー、便利だなぁこの世界は。


「生きたまま持っていっても大丈夫なの、これ?」

「大丈夫。向こうで処分してくれるし、必要なら生かすから。それにしても、初討伐が中ボスクラスって、流石救世主といったところね」


 敬愛の眼差しを向けられる。俺はほとんど何もしていないんだが...

tx!:)

ありがとうございます(╹◡╹)

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