10 これから、「私」たちは...
高校生になった!
あと3話で一章が終わります。予約投稿済みです。
2章は本当にただのわちゃわちゃした旅にする予定で、超不定期更新になる予定です。
「お酒はやっぱりビールに限る」
生ビールを大ジョッキで頼んだ俺は、枝豆を肴に酔いが回るのを待っていた。
「それにしても驚いたな。嬢ちゃんも酒を嗜める年齢だったとは」
この世界では、16歳未満の飲酒は禁じられているらしい。日本よりも緩いじゃんか。
というか、ギルドの登録が16歳以上なんだから当たり前だろ!俺20歳だし?
引き篭もり時代は酒よりコーラみたいなジュースを飲んでたけど、久々の酒は効くなぁ。
「リリー、泡が付いてる」
「これは失敬」
口元を拭うと、髪を掻き分けた。
短い髪だが、さらさらしていて艶がある。その髪は色気というか、何とも言えない魅力を感じさせる。
...みたいだ。
「リリーちゃん、今度俺たちと出掛けない?」
「すみません、私たち魔王討伐の旅で忙しいんですよぉ」
「ま、魔王討伐…?」
男は想定していなかった返答だったのか、それ以上踏み込むことを躊躇った。
そこにイレイヴが助け舟を出した。
「リリーは選ばれし勇者なの。その背負っている剣は聖剣よ」
「…俺たちはとんでもない娘を口説こうとしていたみたいだ」
男たちの一人、赤髪の青年は態度を改めると、
「勇者様、俺たちは貴女の魔王討伐の旅に協力を惜しみません。今後必要とされる場合にはお申し付けください。俺はジャレアム、こいつはラスティン」
ジャレアムは右隣にいた金髪の男を指すと、紹介を始めた。
「ラスティンは遠距離魔法を得意とするから、俺とそっちの緑髪のグレイジルが距離を詰めて敵陣を崩しにいく。貴女たちだけでは数で押し負けることがあるでしょう。そんな時には頼ってください。この世界を救いたいという思いは同じなはずです」
(そんな思いは持ち合わせていないのですが?)
おっと、危うく本音が溢れるところだった。俺は世界を救いたいんじゃなくて、堕落した日々を送りたいのっ!
倒せるんだったら他の人に任せたいくらいなんだから!
「聖剣あげるので代わりに倒してきていただけると…いてっ」
「ありがとうございます。必要な時にはお声掛けしますね」
イレイヴにぶたれた。親父にもぶたれたことないのに…
ジョッキをぐいっと持ち上げると、ごくごくと黄金色の液体を流し込む。
「ぷはぁ。イレイヴ、妹さんの救出で明日は早いよ!」
男たちはどうやらナンパを諦めたようなので、この後は睡眠時間に充てよう。
イレイヴの袖口を掴むと、カウンターまで引っ張っていく。
「宿舎、まだ空いてますか?」
「はい。こちらがお部屋の鍵です」
おやすみなさーい。
「——にしてもよ、二人とも可愛かったな」
「まだお近づきになれるチャンスはあるんじゃね?」
男たちはまだ諦めていなかったようだ。
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「ねむい」
「同感よ」
朝の五時半。俺たちは泣く泣くベッドから這い出ると、薄暗く足元の見えない部屋を照らすべくまん丸いライトの紐を引く。
「むにゃ、顔洗ってくるぅ...」
「その次、私ね」
「他に誰がいるの?」
「お化け」
「こわぁ...」
そんなこんなで身支度を整え、六時を回る頃に鍵を返却しギルドを出発した。
迷路を伝っていくのはめんどくさいので、梯子を出し壁の上を歩いた。
「スリルあるね」
「落ちたらタダじゃ済まなそう」
十数メートルから落下しても大丈夫なもんかね?否、無理。
黎明から少しすぎた空には、まだ多少に星が輝いていており、夜の面影を見せている。
...よく考えてみれば、前世は星を眺めることもなかったな。幼少期から両親の言いつけで、門限は17時だったし、外出もあまり好まれなかった。外に出る機会といえば、小・中学校へ通う時くらいだったか。いくら遊びに誘われても応えられない俺は、高校生になった頃、ついに友人たちにも愛想を尽かされた。孤立するようになったため校内でも居心地が悪く、そのうち登校すらしなくなった。
実は、逃げていただけなのかもしれない。どうせ、今更頑張ったところでどうなるんだ。そんな気持ちに押し任された俺の気持ちがはっきり浮かび上がってきた。
憧れだったんだ。自由に外に出れて、遊びに行けて、拘束されない日々が。
それは、今なら手に入るのだ。
——俺は、この世界の全てを旅したい。いろんな景色を見てみたい。
蟠りが解けると、次第に歩みが止まってゆく。
そのうち、陽が昇り星は影に隠れる。
「?どうしたのリリー」
遂には完全に静止してしまう。それを見て、イレイヴは声を掛けてくれた。
「...イレイヴ、もし私が魔王を倒したとして、その後も一緒に居てくれる?」
「えっ、告h...」
「夢ができたの。私は、この世界を旅して回りたい。全ての街を訪れたい...」
間髪入れずに続ける。
「いいよ。私も、もっとリリーのことを知りたいから」
「それってどういう...」
「だって気になるじゃん?森の中ですやすや寝てた女の子のこと」
朝焼けで淡くオレンジがかったオリーブアッシュの前髪を払うと、顔を赤らめたイレイヴは小声で何かを付け足した。
「...それに、ちょっといいなって思ってるし」
「え、なんて?」
「なんでもないっ!行くよ!!」
「はーい」
俺は、背を向け歩み出す...走り出す?イレイヴを追いかけるのであった。
神様、この機会をくれてありがとう。
tx!:)
ありがとうございます(╹◡╹)




