9 聖剣と依頼と宴の誘い
月曜に投稿しようと思っていたのに、気づいたら平日が終わりそうですね。ごめんなさい。
余談ですが、中学卒業してITパスポート受かりました。小説を書く時間が取れなかったのです…
俺こと月代 藍は引き抜いた聖剣を玩んでいた。金属製で重そうな聖剣だが、重量はそこまでなく、力のない今世の俺でも振り回せそうだ。
この剣の切れ味を試すべく、ふと目についた大木の幹に刃を左斜め30度に切り込む。
——さくっ
『…切れた』
抵抗ゼロで大木の幹は両断され、青く茂る葉を揺らして地面へと倒れ込んだ。
断面は、切断後に鉋でもかけたのかという程、滑らかで手触りが良かった。この剣怖い。
「よかったね、いい剣が手に入って」
イレイヴが苦笑を浮かべて、聖剣感得を肯定する。
「よくない!だって…」
だって、こんなものが手に入ったら...
「働かなくちゃいけなくなるじゃんっ!!」
「まだそれ言ってるの…?」
疑わしそうな視線をこちらに向けるイレイヴを見つめ返すと、明後日の方角へ聖剣を放り投げた。
その剣は放物線を描き、遥か彼方へと消えて...いかなかった。
——ざくっ
空を飛んでいたプテラノドンみたいな魔物を切り裂いて、ブーメランの如く弧を描いて戻ってきた。
ギョエっと奇声が聞こえたが、自身の行いを正当化するため、聞こえなかったことにした。
「災害...」
「人を災害呼ばわりしないでいただきたい」
失礼なやつだ。魔物を退治した勇敢な冒険者ととることもできるだろう。
...今回も換金して、宿代や食事代にしよう。
「イレイヴ、例の瓶を」
「はい」
例の瓶とは、龍型の魔物を縮めて幽閉...ごほんごほん、捕獲したマジックアイテムのことである。
今回も大型なため、その瓶を用いてギルドに引き渡そうというわけだ。
「瓶よ、魔物を包みたまえ」
すると、みるみるうちに魔物は縮み、片手に乗るサイズになった。その魔物を瓶は掃除機のように吸い込んだ。
瓶に入った魔物は、当にボトルモンスターだ。
「忘れてたけど、ランクってどうやったら上がるの?」
この世界にはランクというものがある(らしい)。それは、ギルドで定められた規格で、給料にもつながる大事な要素だ。
初めは1だったのだが、上がったのだろうか?
「ギルドカードを見てみて。随時更新されているはずよ」
イレイヴの言う通り、スカートのポケットから水晶版を取り出すと、ランクと書かれている項目に目を通した。
「...上がってる」
カードを受け取った時には確かに1と刻まれていたはずなのに、いつの間にやらその文字は、15へと姿を変えていた。
「こんなにポンポン上がるものなの...?」
「倒してる魔物が中ボスクラスだからね。普通の人なら10人がかりでも討伐は難しいんだよ」
へぇ、俺、そんなすごいことしてるんだ。
興味本位で落石を出現させてみたり、聖剣をぶん投げただけなのだが。
まあ、人の役に立っているというなら良しとしよう。
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俺は聖剣を担いでイレイヴと次の街までやって来た。遺跡から最短のルートで来たのだが、日は暮れてしまった。辺りは既に暗く、街灯の灯りが薄らと灯っている。
今度の街はアルトワというそうで、家がひとつひとつ個性的だ。…キノコが生えてる家もある。
しとしとと雨が降り続く気候によって蒸し暑く、体感温度は気温よりも数度高く感じる。
「あつぅ〜い…溶けるぅ」
「リリー、スライムみたいになってるよ」
どろどろと体が溶けてしまいそうだ。
俺とイレイヴは高さが十メートルはある巨壁を伝ってこの街のギルドへと向かっていた。
此処のギルドはどうも慎重派なようで、迷宮のように張り巡らされた道を通らなくては、立ち入ることも許されないのである。此処の冒険者たちは、道を暗記しているらしい。一度でもギルドに辿り着ければ立ち入りの許可証と地図がもらえるそうなので、次回以降、迷うことはなさそうだ。もっとも、次回があるかは不明だが。
それよりも厄介なのが、
「わー、ヘビだぁー」
「今度のはまた随分とでかいわね」
迷路には巨獣たちが解き放たれているのである。
そこまでしてギルドを守る必要ないだろ。ギルドにあるものなんて、大量のギルドカードと掲示板と酒、肴等々、大したものじゃないし。
なんなら、冒険者たちが集っているのだから強盗なんて返り討ちに遭いかねない。
——すぱっ
めんどくさそうに片手を振るうと、聖剣が蛇を切り裂く。これが摩擦レスか(ちがう)。
「もう驚き疲れてため息しか出ないや」
「そうね、もうそろそろ着いてもいい頃じゃない?」
「あ、ん。あれかな」
その時は不意にやってきた。付近の壁より一際高く、色も暗い壁に突き当たったかと思ったが、窓と扉があったためギルドだと認識することにした。
「御免ください。冒険者のリリー・イルミナとイレイヴ・アマルベルガ・シェーリズですー...あれ?」
扉に手をかけ、押す。が扉は開かない。もしかして、引くタイプ?
「んぐぐぅ」
全力で、全体重をかけて引っ張るが、びくともしない。なんて重い扉なんだ。
冒険者って、そんなに力持ちなのか?だとしたらこれも防犯の一種...
「何やってるの?」
「...開かない」
困ったな。ギルドに入れなければ換金もできないし、食事も情報交換もできないじゃんかぁ。
「...大変申し上げ難いのだけれど、それ、引き戸よ」
「あっ」
なんて初歩的なミス。やってしまったぜ。
「扉がかるーい」
横に引くだけで、簡単に扉は開いたのであった。
********************
「イペロルを討伐していただきありがとうございます。ここら一帯で被害が多発していたので、高ランク冒険者様に依頼を願おうとしていたところだったのです。こちらが謝礼となります」
偽プテラノドンを引き渡すと、謝礼として2000レグルスが支払われた。
楽だなぁ、冒険者って。
そんなことを考えていると、受付のお姉さんが急に笑顔を引っ込め、真剣な面持ちで話題を変えた。
彼女は声色を少し暗くすると、
「…勇者様に折り入って頼みがあるのですが、引き受けていただけますか?」
「私に出来ることであれば」
討伐の依頼かな。
「妹を救って欲しいのです」
「…」
今なんと?
迷子の捜索?
「魔物に連れ去られた妹を取り戻して欲しいのです。先日、ゴブリンの群れに襲われた時、ゴブリンは私には目もくれず、齢13の妹を連れ去ってしまいました」
「それ、妹さんは大丈夫なんですか…?」
たまに同人誌で見るシチュになっていたり…
「生きてはいます、子守用の信号がまだ途絶えていないので。場所も分かるので、ゴブリンの討伐と妹の救出をお願いしたいわけです」
「任せてください。ですが、明日でもよろしいでしょうか…?」
セキュリティ?のせいで歩き疲れて、今すぐにでもベッドにダイブしたい気分なのだ。
「はい。できるだけ早くお願いしたいのですが、勇者様に何かあってはいけないので…」
許可が下りたので、今夜は早く就寝しよう。
…と思った矢先。
「——そこの嬢ちゃん、酒でも奢ってやるから話しよや」
「いえ、えぇと…」
イレイヴが情報交換の強要されてしまった。
やっぱり美人なのよ。少々男勝りなところがあるだけで。ちなみに可愛く飾り付けたのは私です。野菜コーナーの「私が作りました」って人でもできるかな?
まぁ、きっぱりと断ってあげよう。
「私たち、今は疲れていますからまたの機会に…」
「おお、君も可愛いね!なんでも奢るよー」
「是非お願いします」
「ちょっと、リリーっ!」
不服そうなイレイヴが視界に映ったが、気には留めない。
貰えるものは貰っておくスタイルなのだ!
「今夜は宴だぁ!」
「私、もう寝たいんだけど〜!」
長ーい夜は今から始まる。
明日くらいに番外編として宴の様子を書きたい…
約束はしかねる。
tx!:)
ありがとうございます(╹◡╹)




