1 ダメニートな俺、女の子に転生する
TSっ娘にしかない可愛いさってものがあるじゃないですか。堕ちていく感じが好きです。
下手なので、挿絵は読み飛ばして下さい。
「ふあぁ...そろそろ寝るか」
時計の針が丁度「2」を指したところで、俺、月代 藍はネトゲのグループから抜ける。
俺は、二十歳を過ぎてもロクに外出せず、自室に引き籠もっている。その所為か、昼夜感覚は完全にバグり、いつしか一日が40時間程度のサイクルになってしまった。
ふらふらと立ち上がると、足が痺れていたのか、思いっきりタンスの角に小指をぶつける。
「痛ってぇ!」
制御の利かなくなった俺の体は、膝丈の机の縁に吸い込まれるように倒れる。そのまま、頭蓋を強打した。
段々と視界が暗転し、最終的には何も見えなくなった。
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「此処は、何処だ?」
俺が次に目を開けたのは、晴天が広がる、雲の上だった。
よっこいせと腰を上げると、
「おお、目覚めたか」
後ろからしゃがれた老人の声がした。何故こんなところに老人が居るんだ。と言ってしまえばブーメランが円軌道を描いて戻ってくるので、飲み込んでおく。
「あんた誰だよ、爺さん」
「お主もよく知る存在じゃ。神様といえば伝わるかの」
いや、信じるわけないじゃないか。そもそも、何故俺がこんなところに居るんだ?
「お主は、頭蓋の強打によって死んだ」
「え、俺死んだん?」
「そう、お前、死んだ」
は?え、マジで?
下を見ると、足元が透けていた。てことは今の俺は幽霊...
「はぁ!?じゃあ俺、これからどうなるんだよ!買い溜めておいたギャルゲは!?」
「はじめに気にするのはそこか。まあ少年、よく聞け」
先程まで優しそうだった老人(神様)は瞳をかっぴらくとものすごい形相で説教を始めた。例えるなら鬼だ、この顔面は。
「お前が前の人生でどれだけ人様に迷惑かけたのか分かってんのか?親の脛かじって元友人には返す気もないのに金を借りるわ、挙句の果てには酒に溺れて暴力を振るうわ。本当に人間の屑じゃねえか」
「...はい、ご尤もです」
「そんなお前に一度だけチャンスをやろう。異世界転生だ」
異世界転生...絶対めんどくさいことに巻き込まれるじゃんヤダ。どうせ残酷な死に方でもするんだろ、そしてやり直すんだろ。そんなんアニメで何回も見てきたわ。
「そこで一つ、お主の願いを一つだけ聞き入れてやろう。なんでも言うが良い」
「この身体のまま、元世界とほぼほぼ同じ世界で養ってもらえるようにしてください」
何か変なモンスターとかにされると嫌だし、働きたくもない!
「わし、お前のこときらいだから全部真逆の条件で送り届けてやろう」
「サイテーだこの爺」
「最高に優しいじゃろ」
「お前友達いないな?」
華麗にスルーされたうえ、雲の上から突き落とされた。
アニメとかでよく見る落ちてくるOP、実はめっちゃ風圧が強い。風で頭が吹き飛ぶかと思うほどには。
しかも地面が近づいてくる恐怖。あの爺覚えていやがれ。
極度の恐怖で、俺の意識は遠のいていった。
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フカフカのベッドの上で目を覚ました。俺を看病(?)しているのは会ったこともないイケメンだ。
病院のようには見えないし、このイケメンの私室なのだろう。
外はまだ明るいはずだが、俺が心地よく眠れるようにカーテンを閉め、ランプの僅かな灯りだけを灯していた。
こんなの、見知らぬ男にする待遇じゃないだろ。もしや、こいつそっち系の...なわけ無いか。
「んん...」
あれ、声がおかしい。元から低いわけではなかったが、今は高すぎる。
「お嬢さん、お目覚めかな?」
イケメンはふんわりと優しい笑みを浮かべると、お茶を渡してくれる。
「...え、お嬢さん?」
一体、誰のことを言っているんだ?
改めて自分の身体を確認する。布越しではわかりにくいが、触ってみると...ある。
信じられないので、今度は股に触れる。こっちはない!俺の相棒がない!?
これじゃあただの女の子じゃん!
「ふふ、面白い子ね」
「え?」
表情がコロコロ変わる俺を見ていて楽しいのか、ニコッと笑顔をみせている。
いやいやそれよりも、女口調?
「...君、もしかして、女の子?」
「そうだけど、逆に何に見えたわけ?」
イケメン女子はツンとした表情で訪ね返す。
「イケメンだなぁと」
「それ、コンプレックスなんだけど!」
あちゃあ、地雷踏んだかも。言われてみれば、可愛いかも...
なんてことを考えていると、その少女は俺の鼻先にぴしっと指を突きつける。
「それより、貴女は誰なの?森の中ですやすや眠っているから小屋まで連れてきたけど」
おお、気絶してたんだろうけど、眠っていたと思われている...
そう言えばあの爺(神様)、俺の望みと真逆の条件で転生させるって言ってたな。
「この身体のまま」は女の子になったわけだし、「元世界とほぼほぼ同じ世界で養ってもらえるように」の部分は明らかに違う世界で働けってことだな。最悪だ。
「因みにこの世界、怪物とか出る?」
「?出るよ、たくさん」
終わったー!死ぬじゃんこれ。
「もしかして異世界人?」
「ナンノコトカナ」
情緒不安定すぎてもはや心配されてるよ。
「まあいいわ。ちょっと討伐依頼があってね。さっと行ってくるから待ってて」
あら、頼もしい。イケメンにも見えるから惚れそうだ。
ま、あの爺が元の世界に戻してくれるとは思わないから...
「いってらっしゃいませ」
年齢も15,6まで若返っているので、年相応の笑顔で送り出す。
どうせならこの世界、楽しんでやろうじゃないか!
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「きゃ!」
突然悲鳴が聞こえた。この声はあの少女のものだろう。
「大丈夫!?」
閉まっていた扉を勢いよく開放する。
微風がふわりと吹き付け、髪を靡かせる。
その髪を、爽やかな日光が照らし、その白緑は美しく輝く。
あれ、俺結構美少女?なんて言っている場合ではなく。
俺の目には、刃物を持った見知らぬ男が、それを突きつけて彼女を脅している光景が映った。
「止めて下さい。私は貴方と金輪際関わる気がありませんので」
「そう言わずにさ、一度でいいから」
いや、ナンパならちゃんと口解け?いい年して何やってんだよ。社会のお荷物の俺だってそんなことしなかったぞ(勇気がないだけ)。
「すみません、お取り込み中でしょうか?」
「ん?何だ小娘...おお、これは上玉だな」
はい?なんだか獲物を見るような目で見られているような。って俺は同性愛者じゃねえんだよ!
少しずつ近づいてくる男に怯え、
「お、俺、いや私!そういうのは、えっちなのはダメなので!」
身を引き、胸の前でバツを作る。ひぇ、ナンパされる女の子って内心めっちゃ怖いんだろうな。
「優しくしてやるから...」
「無理ですお断りです結構です」
絶対嫌だかんな!
「そう言わずに...」
「貴方、いい加減にしてもらえない?私たちは、貴方に興味すらないの!それが分かったらさっさと帰って」
女の子なのにかっこいい。アリだな、この属性。
ナンパ野郎はなかなかやばい目をしている。
「ふ、お前はもうどうでもいい」
そう言って、あの少女に斬りかかる。
まずい!
異世界だろ、此処!何か使えないのか、俺?ああもう、どうにでもなれ!
願ってみると、身体は自然と動く。
周りの動きがコマ送りのように見える。そんな中で手を胸の前で組むと...
――ぴちゅーん
な ん か で た 。
レーザーみたいなのが出たのだ。SFチックな技だけど、世界観大丈夫か?
「うがっ」
倒しちゃった。
服の焦げる匂いが漂う。効果音の割に強いらしい。これって無双系の小説だっけ?
これが「正反対」って、元の俺がどんなふうに見えていたのか問いただしたいところだな。格ゲーは世界レベルだったぞ俺。
「貴女、強いのね」
「わかんない」
でも、この娘冒険者でしょ?俺より弱いわけなくね。
「――ギルドに行こう。稼げるわよ」
「うわぁお」
あの爺のせいで本当に働くことになりそうなんだが。
最悪だ...
拙い絵ですが、一応イメージとして描いてみたので
主人公:月代藍
もう絵は載せません。描きません。
tx!:)
ありがとうございます(╹◡╹)