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Next stage  作者: schwarz
4/7

期待はずれ、絶望

「暇潰し、って…。」

 つい、口から乾いた声で出てしまう。

 自分でも自分の声だと信じることができないレベルの声だった。

 だが、それもそうだろう。ギルドの試験とは『英雄』になるための一歩、夢への道、ひいては人1人の人生のスタートライン。それを、こともあろうに暇潰し兼ストレス発散、ときた。

 僕の中で、何かが沸々と湧いてくるのを感じた。

「さて、試験の方法はすごく単純。今から私と戦って、私が結果を決める。ね?単純でしょ?」

 そう言って英雄『迅雷』の名を冠するシルベールさんは腰に下げた剣を抜く。

 その剣は遥か東、海を超えた先にある倭国というところで製造、標準装備となっている『刀』と言う剣らしい。そして、その剣こそ『迅雷』のためだけに、普段国交等を開くことのない倭国が、わざわざ貿易を持ちかけ、献上した剣。銘を『雷切』という。

 シルベールさんが『ラグナロク』に名を載せた際にも使用していて、その剣で雷龍と呼ばれるドラゴンを倒したものだったはず。ちなみにこれは、ラグナロクの第350話。つまり、『現英雄』中で最も若い英雄だということ。

「じゃ、行くよ。準備はいいかな?」

 その言葉で我に帰る。そして、僕も腰にある短剣に手を添える。

「試験、スタートだよ!」


 シルベールさんの開始宣言とともに試験が始まる。

 先に動き始めたのは、シルベールさん。

 『雷切』を抜いて突進の姿勢を見せる。それは、『ラグナロク』の中でも記載される『迅雷』特有の初撃。ご自慢の『ギフト』を最大限活かして放たれるこの世で最速の一撃。

「だったら…。」

 それに合わせてカウンターの姿勢をとる。

 過去にあった攻略方法の一つ、『現英雄』の1人、『光盾』と戦うシーンで初撃を受けるかと思いきや避けられ、一撃を入れられるシーン。

 これならきっと…。

 その瞬間、目の前が真っ白になった。一瞬後に全身を潰されたかの様な体全体への激痛がはしってきた。口からは少量の血反吐を吐き出し、うまく呼吸を吸えない。そして気づく。今自分が訓練場の壁に叩きつけられたことに。

「な、なに、が…。」

 うまく言葉を紡げない。本当に何が起こったのかがわからなかった。シルベールさんの位置はさっきと変わらない。

「これが『光盾』に負けてから新しく身につけた最速の一撃。強いて言うのであれば『瞬撃』、とでも名付けましょうか。」

 『瞬撃』。その名の通り、一瞬の攻撃なのだろうが、どのタイミングで攻撃してきたかもわからなかった。

「ほら、どんどん行くよ?」

「くっ。」

 再びカウンターの構えをとる。まず必要なのは、どのタイミングで攻撃してくるのか。それがわからなければ、カウンターの構えも意味がなくなる。

「私が君に求めるのはこの『瞬撃』を防ぐこと。エレクトラの弟ならこれくらいできてもらわないとすごく困る。ね、できるでしょ?」

 なんとハードルの高いことか。防ぐことはおろか、見極めることもできていないのに。

 だがしかし、僕にはYES以外の回答などない。

 そこから僕は訓練用の木偶の坊の如く攻撃され続けた。


 そして現在。

 この様な経緯から、僕はシルベールさんの期待を裏切ってしまった様だ。

「これだと本当にエレクトラの弟なのか怪しくなってくるね。実は血の繋がっていない姉弟?エレクトラは結構できてたんだけどなー。」

 その目を向けられるのが怖い。エレク姉と比べられるのが怖い。エレク姉を傷つけてしまうのが怖い。勝手に期待されるのが怖い。何もできないのが怖い。怖い。怖い、怖い、怖い、怖い、怖い、こわい、こわい、こわい、こわい、こわい!こわい!こわい!

「エレクトラは『主役』なのに、君は何もできない。まさしく、『主役』のために生まれてきた『端役』みたいだね。」

 その言葉で、僕の中の何かが壊れる音がした。

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