英雄への一歩
エレク姉さんと僕が行き着いた先は、ギルド『栄光への道標』。現存するギルドの中で最高峰の一角と名高いギルドだ。
その理由の一つとして、ギルドマスターが『現役の英雄』であることが挙げられる。
他のギルドでは基本的に元Sランクの『英雄候補』、または引退した英雄が務めている。現役の英雄は、ギルドマスターができるほど暇ではないからだ。
そんな中で現役の英雄がギルドマスターを務めているのが7つあり、それらを総称して『セブンス・ホープ』と呼ばれている。
『英雄候補』というのは、各ギルドに所属している文字通り、英雄の候補者のことを指す。また、『Sランク』というのは、候補者内の階級のことであり、ランクが高ければ高いほど『英雄に近い存在』と言われる様になる。ランクの順番はE→D→C→B→A順で上がっていき、その上にSが来る。しかし、基本的にSにはなれない。なる前に死ぬか、諦めるかがほとんどである。ちなみにエレク姉さんはSランクである。なんでも、稀代の天才、だとか。
そんなことはともかく、だから『英雄』というのは特別な存在だとも言える。
英雄は基本Sランクから成り上がるというのが常識であるのだが、それら階級の一切を無視して功績を出した時にも英雄になることができる。
正確にいえば、『ラグナロクの原本』にその名が刻まれれば、である。
『ラグナロクの原本』はいまだによくわかっていない、謎の力によってこの世界で起きた『救世の戦い』を、何の誇張もなく、正確に記していく。また、それらはリアルタイムで記される。
少し脱線したが、今のギルドマスターはその例外の最たる例の人物であり、『セブンス・ホープ』の1人でもある。
「さて、ライト。とりあえず私は『クエスト』に行ってくるから、試験頑張るんだよ?」
そう言ってエレク姉さんは掲示板の方まで歩いていく。
掲示板とは、クエストが紙に内容、報酬等を書いて無数に張り出されている場所だ。
英雄候補は『クエスト』と呼ばれる世界規模から個人単位までのあらゆる危機を解決していくことでランクを上げていく。ギルドの探知システムのおかげで、それぞれの危機が事前にほぼわかり、それらを村単位までなら知らせて、クエストとして依頼するかを聞くのだ。個人単位では、基本的に察知できない様になっている、というよりはその様なシステムを組み込むことが難しいのが現状だ。
「わかったよ。それじゃあ、頑張ってくる。」
こうして、僕の英雄候補認定試験が始まろうとしていた。