英雄の始まり
初作品です!あらすじに書いてあった通りなので、何卒よろしくお願いします!
その世界は何処までも『絶望』一色であった。
人類は日々、街の外を闊歩する魔獣を恐れ、そのせいで広げることのできない安全地帯も少しずつ極限化していき、無法地帯へと変化した地域も少なくなく、むしろ少しずつ増えていた。
暴力、殺人、奴隷化、道端に転がる死体の数々等々。犯罪は常に起こる。
力を持つ地域はそれらを振り翳し、略奪、脅迫、戦争を行い、それに対抗するために力を持たない国は禁忌に手を染めた。それがさらに争いを加速させ、血を血で洗う負の連鎖が生まれた。
人々は次第に弱り、いつしか絶滅寸前とまで言われる様になった。
そんな中、ある1人の人間が神の如き力を用いて、魔獣を殲滅し、人々をまとめ、国を起こし、歯向かう国を滅ぼし、人々を救済した。
その者は、敬意をもってこう呼ばれた。
『救世の英雄』と。
以降、人々はその者を称え、現人神だと称し、宗教として、また世の創世神話の一つとして語り伝えられていった。
「おーい、ライトー。そろそろ起きなさいよー?」
その声を聞き僕、ウェインライト・オルケストラは本を読むのをやめた。
いけない、また夜通しで本を読んでしまった様だ。
机の上に読んでいた本を置く。そして、その本の表紙にあるタイトルを一瞥する。
『ラグナロク』。その第1巻である。
それは本編350冊、外伝50冊からなる、『世界創世』からここまでの偉業を成し遂げてきた『救世の英雄』から始まる英雄たちの物語を記したシリーズ本である。
今まで読んでいたのはその写しで、『原本』は『本の都』と呼ばれる都市、『シクシロン』にある。
原本はら世界の何処かで、偉業を成し遂げる存在が現れたときに、『英雄』として、正体不明の力によって勝手に文字が記されるという。いつしかそれが、世の人々の憧れであり、信仰する理由にもなった。
やはり、人々にとって記されている内容が自分たちの生活の、いや、人生の危機から救っていることだからだろう。
「そろそろ起きなさいってば!」
どうやら考え事をし過ぎたみたいだ。
「今起きた!」
実際は寝ていないけれど、それをいうとまた怒られるだろう。
そうして僕は、自分の部屋から離れていく。
リビングに行くと、姉であるエレクトラ・オルケストラが朝食の準備をしていた。
「エレク姉さん、今日のメニューは?」
「黒パンにベーコンエッグ、シーザーサラダ、あとはコーンスープね」
どうやら今日は大丈夫の様だ。
酷い日には朝からステーキとか言いかねない。なら、自分で作れよ、となるだろうけれど、残念ながら朝食は交代制なのである。そして、今日はエレク姉さんの日であり、姉さんは断固として当番を譲ることはない。現実は非情だ。
「どうせ昨日も夜遅くまで読んでたんでしょ?」
「うん。」
早速食べながらも会話が再開される。
「今日からライトも『栄光への道標』の一員になるんだから、もっとしっかりしてもらわなくちゃ。わかってるよね?」
「勿論だよ。そのために読んでたんだから。」
「それで寝坊しかけてたら意味がないの。」
「それはそうだけどさ…。」
そうした会話が続いて、朝食を食べ終わったら2人して出かけるのだった。