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第8話 自己紹介


 「今日はねー,検査はないよ。そのかわり,簡単な知識をつけてもらった後で,魔法を使えるようになってもらうよ!」


 チハル先生の側でくるくると回転しながら説明をするカイ。


 「は?魔法?」


 桐人が「何言ってるんだこのガキ」と続けて言う。

 声にも顔にも出さないが夜白も同意する。


 「そう!ザッツライト!魔法!」


 「…遂に頭イカれたか…。」


 「違うもーん,違いますー。」


 頭がおかしい人を見る目でカイのことを見る桐人。そのことにカイは頬を膨らませながら言う。

 そして,ニヤッと笑ついながら


 「気にならない?なんで突然姿が変わったのか?」



 「!!」



 この場にいるカイとチハル以外の全員が息を飲む。

 それは夜白も桐人も例外ではない。


 ずっと気になっていた。ずっと不思議だった。


 どうしてこうなってしまったのか,と。


 考えてみれば根本的な原因は,突然姿が変わってしまったことだった。


 姿が変わっていなければ,突然棘が家の壁を壊して侵入することもなかったし,俺を庇って家族が傷つけられることもなかった。

 姿が変わらなければ,この場所に連れて来られることもなかったし,あの地獄のような検査もなかった。



 姿さえ変わってなければ,今のようにはならなかったのだ。



 姿が変わった理由。

 気にならないと言えば,嘘になる。


 カイはそんな夜白たちの心情を見据えながら言っているのだ。


 「だからね,それらのことをチハル先生に話すように頼んだいたんだー。」


 (頼みって…。)


 絶対命令だろと,言いたい気持ちを抑える。


 「じゃあ,頼んだよ!僕はどっか別のところから見学しとくからー。」


 「じゃあねー」と,言葉を残し姿が消えるカイ。

 一瞬でどこかへ行ってしまったのだろう。

 視力が格段に良くなった夜白でも見失うほどの速さでカイはその場からいなくなった。


 しばらくの静寂。


 「え,えっと…。と,とりあえず話してもいい…ですか…?」


 チハルがおどおどしながら声を出す。


 「えぇ。お願いします。…その前に緊張を解くために軽く自己紹介でもしますか。その方が全員のためにもいいでしょう。」


 チハルに最初に答えたのは夜白と同い年くらいのつり目の少女だった。

 腰までくる長い黒髪に緑色の瞳の変化の少ない見た目だったが,彼女の耳は鋭く三角形に尖っていた。


 「はぁ?こんな時に何言ってるんだ?自己紹介ぃ?そんなことして何になる。それよりも説明だ,説明!早く知ってること話せ!!」


 少女に噛み付くように男の人が乱暴な口調で言う。

 棘に近い雰囲気や喋り方を持つことから夜白はからのことが苦手に感じた。


 「こんな状況だからこそです。」


 ピシャリと少女が言う。


 「こんな状況だからこそ,いったん落ち着くべきです。誰がどんな人間かわからない中,あなたは話を聞けますか?」


 「俺はしたくない。」


 「ではご自由に。もしかしたら何か思わぬ情報を持っている人がいるかもしれませんが。」


 ハァッと乱暴なため息をついた後,少女はチハルの方を向き,「それで構いませんか?」と,たずねる。


 「え,えぇ。それでお願いします…。」


 こくっとゆっくり頷くチハルを確認した後,少女は周りを見渡しながら大きな声で言う。


 「では,言い始めた私から。私は北斎院ほくせいいん陽姫ようひと申します。元々は高校に通う普通の高校生でした。変化したところは痛みの色,耳の長さ,形です。恐らくは皆さんと同じように拉致されてこの施設に来ました。知ってることはありません。どうぞよろしくお願いします。」


 そして上品なお辞儀をする陽姫。


 (北斎院って…,どこかで聞いたことがあるような…。確か大企業の社長の名前じゃあ…。)


 整った容姿といい,話し方といい,仕草といい…。


 気のせいであると思いたい。


 「それでは次は貴方にしてもらいましょうか。」


 陽姫がさっきの男の人に言う。


 「西沢にしざわだ。知ってることはない。これでいいんだろ,お嬢様!?」


 「はい。」


 にっこりと笑い西沢の言葉をかわす陽姫。

 そのことに苛立ち舌打ちをする西沢だが,気にせずに「次はそちらからお願いします。」と言って別の人に話しかける陽姫。



 しばらくは自己紹介が続いた。




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