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第9話 意外なこと


 陽姫が進行役をしてくれるおかげで話はさくさく進む。

 流石にこの場所にいるすべての人の名前は覚えることはできないが,特徴的な変化がある人は夜白でも覚えることはできた。


 そして,夜白が話す番になる。


 「織部夜白です。元は普通の高校生でした。変化したところは動物の耳と尻尾が生えたこと。あとは…,身体能力とか五感が良くなったことです。多分,これといって気づいたことはありません。」


 夜白が知ってることは他の人も知ってそうだし,この施設がどこかも分からないし,行けた範囲は広くないから他の人と対して情報量は変わらない。

 夜白はそう判断した。


 「あなたは…,さっきあの子供に絡まれていましたね。知り合いですか?」


 「えっ…。」


 陽姫が夜白にたずねる。

 さっきまで他の人の話は黙って聞いていたため夜白だけ質問されるとは思わず戸惑う。


 「それは俺が答える。」


 ずいっと夜白の隣に桐人が並び立つ。


 「あなたは……。」


 「俺は伊上桐人。こいつと同じ部屋にいる。」


 「え?」


 陽姫が驚いた表情をしたことに夜白は驚く。

 今の話で何か驚くことはあったのか?

 周りを見れば他の人も驚いた顔をして夜白や桐人のことを見ていた


 「同じ…部屋に…?」


 「あぁ。」


 「えっと……,桐人さん…?」


 話が見えず桐人に視線を送る夜白。

 その視線に気づき,桐人は説明をする。


 「夜白,多分だが…。部屋を共有しているのは俺たちだけだ。」


 「…え?」


 「他の人は一人で部屋を使ってるんだろ。」


 桐人の言葉を確かめたくて夜白は陽姫の方へ顔を向ける。


 「えぇ。少なくとも私はそうです。皆さんも…そうみたいですね…。」


 周りを見渡し確認する陽姫に多くの人が頷いて肯定する。


 まさかそんな違いがあるとは思わず夜白は言葉を失った。


 「で,さっきの質問に戻るが,あのガキとこいつは特にこれといった関係はない。あいつが夜白に勝手に絡んできてるだけだ。」


 「はぁ?それだけか?」


 西沢の噛み付くような言葉に怯むことなく桐人は「あぁ。」と答える。


 「なぜ,あなた方は同じ部屋に…?」


 「それは知らん。だが,部屋を一緒にした方がいい理由でも何かあるんだろ。」


 「そうですか…。」


 口元に指を添えて考え込む陽姫。数秒して夜白たちの方を見て口を開く。


 「すみません。なんでもいいので何か話してくれませんか?」


 「え?」


 「あなたたちと,私たちの違いがある以上,知りたいのです。ずっと一人で部屋にいた私たちでは気づかないようなことにもあなた方は気づいているかもしれませんし。先ほどのように,私たちが知らないことだとあなた方が気づいてないかもしれない情報もあるので。」


 「そういうことから…。」


 陽姫の説明に納得する夜白。とは言っても何から話せばいいのか迷う。


 「なら,この首輪のルールは知ってるか?」


 夜白の頭にポンっと頭を乗せて桐人が話し出す。


 「首輪のルールだぁ?」


 西沢が桐人の言葉を訝しむ。


 「よろしければ話していただけませんか?」


 「あぁ。この首輪は………。」


 夜白の代わりに説明をする桐人。

 元軍人とだけあって,夜白より経験豊富であり,夜白が慣れてないこともできるのだ。


 そのことに感心すると共に感謝する夜白。

 夜白一人だけだと上手く話すことはできなかっただろう。


 「この首輪にそのような機能が…。」


 首輪を触りながら呟く陽姫。他の人も首輪のルールは知らなかったようだ。


 「よく気づきましたね。」


 「最初に気づいたのは夜白だ。俺はそれを話しただけ。」


 「でもこんな首輪にそんな痛みを与えれる機能ほんとについてるのか?」


 疑う西沢に

 

 「あぁ。ついてる。俺はまだ経験してないが,夜白がそれを経験してる。」


 「そのガキだけじゃん。経験したのは。そいつが嘘をついてる可能性だってあるだろ?」


 「嘘だと思いたければ嘘だと思えばいい。それで痛い目見るのはお前だ。」


 「けっ。」


 険悪な二人の言葉に戸惑う夜白。

 そんな夜白に陽姫が突然声をかけた。


 「命令を拒むと痛みが走ると言いましたが,それを耐えることはできないのですか?」


 「えっ…んー…多分,無理だと思う…。立っていられないくらい激しい痛みだったから…。」


 戸惑いながらも答える夜白。

 その夜白の言葉に嘘偽りはないことに陽姫は理解する。


 陽姫はその立場上多くの人と関わってきた。

 中には陽姫を利用しようと嘘を述べる人も数多くいたため,陽姫はそれらの言葉に敏感になったのだ。


 上手くそれを表情で隠す人が多い社交界に幼い頃からいた陽姫からしてみれば,そんな手段を持たない夜白が嘘をついてないことなどすぐに分かるのだ。


 「そうですか,分かりました。ありがとうございます。」


 にっこりと微笑んで礼を述べる陽姫。


 「あ,いえ。参考になればよかったです。」


 陽姫の笑顔に見惚れる人がいる中,夜白はそれよりきちんと答えれたことへの安心感でほぅ…っと一息ついた。


 (珍しいですね…。私の笑顔に顔を赤らめないなんて…。)


 陽姫はそのことに少し驚くが,夜白の心情が手に取るようにわかるため納得はした。


 でもどこか悔しく感じ,そのことも疑問に思いながらもまだ何か知ってる方があるかもしれないと,夜白たちに質問をいくつかして行くのだった。


 

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