表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
僕はいつかの箱庭で  作者: 和石(カズイシ)
1/1

1話

初投稿作品です。拙い文ですが、最後まで見て頂けると有り難いです。

辺り一面の花畑。青い空。

可憐に舞う蝶。澄んだ風。


誰もが例外なく美しいと思うであろう景色。


気付けば、目の前にはこの世界があった。


どこまでも続く青い空からはこの世界の果てを想像することは出来なかった。


下を向けば空と同様に延々と続く花畑。


現実味を感じることのできない世界であった。


気を抜けば思わず呑まれるかのような錯覚に陥る。


それほどまでに壮大で幻想的な世界であった。



そしてこの世界の中心に自分という存在があった。


なぜそこが中心だと分かるのか。

それはこの世界が自分を中心として広がってる気がしたからといったなんとも曖昧な考えからであった。


なぜ自分がそう感じているのかは分からないが。


自分以外誰1人として存在しない世界。

不自然なまでの静けさが漂う世界。


そしておおよそ、自身の記憶にないこの場所に疑問は尽きなかった。


しかし、同時になんとも言えない居心地の良さが自分の中には存在していた。





「こんにちは。」





背後で声がした。


振り返ると、そこには1人の少女がいた。


おおよそ自分と同年代であろうか。


透き通るかのような白銀の頭髪に大きな真紅の眼。


衣服こそ、自分にも馴染み深い学生服であったが、その風貌は明らかに現実離れしていた。


その少女からは人には知覚することのできない何かを感じられた気がした。



「ここは何処なのですか。」



1番の疑問を問う。



「何処だと思う?」



疑問を疑問で返され、戸惑ってしまう。



「僕には理解できないような…何か別の次元の世界…でしょうか…?」



「ふふふ。そんなに堅苦しい所じゃないわ。ここは。」



「それでは一体ここはなんなのです。僕は何故ここにいるんです。」



「それは貴方の心が1番よく分かってる筈よ?」



予想外の返答に言葉が出ない。



「…僕が…?」



「ええ。そうよ。ここは貴方が望み、貴方が作り出した世界。いわば、貴方にとっての理想郷。」



少女から発せられる言葉はどれも自身の理解を超えていた。



「僕が…望んだ世界…?」



「もしや、この世界は僕の夢…なのですか?」



混乱する頭を落ち着かせ、どうにか自分にも理解できるような事象に繋げる。



「夢、と思えば夢とも言えるわ。だけど、そうでないとも言える。」



「では、ここは一体?」



「ここは、貴方が作り出した、貴方の知覚する限り何処までも広がる貴方の為の世界。」



「貴方が望むままに作られ、広がり、貴方の心を満たす。だから貴方にとっての理想郷となる場所。」



「それがこの世界よ。」



やはりどれも理解できることではなかった。



「それでは貴女はなんなのです。」



新たに生まれた疑問をぶつける。



「私は貴方の作り出したこの世界を管理し、貴方を貴方自身の恐怖から守護する存在。」



「と言っても…難しいわよね。私については深いことは考えなくてはいいわ。」



「それよりも、今は貴方がどうしたいか。それが大切なの。」



「僕がどうしたいか…?」



「ええ。さっきも言ったけどこの世界は貴方の望んだままに作られる。だから貴方の意思がこの世界に反映させられるの。」



「さぁ教えて。貴方は一体何を望むの?」



「僕は…」



自身の望むもの。願望。それがこの場所では全て叶うというのだ。普通の人間ならば、溢れ出る欲求を全て満たしていくのであろう。


しかし、自分にはこれといって望むことがイメージできなかった。あらかた、考えてみてもそれで自分が満たされるかと言えばそうではなかった。



「僕が…僕が望むものは…

何もありません。…」



「何もない?この世界に何も望まないということ?」



「はい…。僕には僕が望むものがなんなのか分かりません…。」



真剣に悩んだ答えがこれだった。



「それは嘘ね。」



突然の否定。



「え…?」



「この世界があり、貴方がここにいる。その時点でそれは貴方の望みが反映させられている何よりの証拠よ。」



「今まさにこの世界は貴方の望みを叶えているの。」



「そして貴方が本当に望むものが何なのかを、私は知っている。」



「意味が…分かりません。」



「そう感じるのも貴方の望んだこと。この世界は全て貴方の望みで出来ている。」



「でも、本当に分からないんです。僕がここにいる理由も、僕自身のことも。」



「…いいわ。なら、貴方がそれを自覚するまで、この世界を巡りましょう。貴方の望みとそれに関する記憶で出来たこの世界を。」



「僕の記憶…」



「さぁ、ついてきて。貴方は貴方自身を知る必要があるわ。」



瞬間、世界は白い光に包まれる。


その眩しさに思わず目を瞑ってしまうと同時に、意識は闇へと沈んでいった。




お読みいただきありがとうございました。

感想、意見などあれば遠慮なくお願い致します。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ