表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
幼なじみの都落ち  作者: なつまつり
第三章
30/53

第二十九話

☆キャラクター紹介☆(各章の第一話冒頭に掲示します)



〇堀川悠……本作の主人公で、音海円花とは幼なじみ。夢が丘高校アイドル研究部(ドル研)所属。

〇音海円花……悠の幼なじみ。【シークレットシーク】というアイドルユニットに属している。

〇四条こころ……男性アイドルオタク。佐賀弁が板についている。ドル研所属。

〇日暮京太郎……二次元アイドルオタク。見た目は爽やか系。ドル研所属。

〇天川詩音……ドル研の創始者。かつてトップアイドルとして一世を風靡した。

〇早坂ひなた……下級生(一年生)。【シークレットシーク】の大ファン。


〇???


〇???

 まどろみの世界で、わたし――早坂ひなたは、リリースされたばかりの新曲『ゆめうつつのキス』のサビを聴き、その瞬間、まるで神経反射みたいに布団から飛び起きた。


「……おはよ……」


 ふあぁぁ、と長いあくびをこぼす。

 これが、ひなたの一日の始まり。


 暗闇の世界に目覚めしひなたを優しく照らしてくれるのは、ありとあらゆるアイドルのグッズたち。ポスターにタペストリー、写真集にタオル、ラバーバンド、ブックレット、ライブBDとか……その他もろもろ。譲り受けたものも、バイトをして買い集めたのも。どれもこれも、とっても大切な宝物たちだ。


 ブランケットからするすると抜け出して、ひなたはボサボサの髪をくしけずる。後ろ髪の爆発がある程度収まったら、ひなたはひょいと立ち上がる。すぐに、顔がニヤニヤしてしまう。


 そのポスターの前に立った。【シークレットシーク】ファーストシングル発売時の宣材ポスター。ひなたが心から想ってやまない三人のアイドル。なかでも……。


「……円花さんっ……♪」


 ポスターに頬ずりして、こてんと額を押し付ける。


「……だいすきです……ずっとずっと……」


 こんなところ、誰にも見せられないけど……やめられない。

 暗闇の世界に生きる、ひなたなりの愛情表現だから。


 本人に届かなくてもいい。ひなたの心が、円花さんに繋がっていればいい。

 それだけで、ひなたはこの世界を生きていくことができるから。


「……にへへぇ……かわいいです……ほんとのほんとに……っ♪」


 くすみひとつ見当たらない真っ白な肌。きれいな輪郭。さらさらの黒髪。

 柔らかに笑いかけてくれる円花さんの姿を、ひなたの指でなぞっていく。


 そのとき。ポロン、と軽やかな通知音が鳴った。

 ひなたは布団の横に転がっていた、重厚カバー仕様のスマホを拾い上げる。


 通知のバナーをタップして、匿名SNS「オープンスペース」のアプリを開く。完全承認制のグループ『アイドル好き集まれ!』を選択すると、今日もひなた宛てに応援のメッセージが届いてる。



 えむくん @ひなひな 〉今日も頑張って

 ミートスパ @ひなひな 〉楽しみ(*^-^*)

 千紗 @ひなひな 〉おすそわけ! おすそわけ!


 思わず笑っちゃう。みんな、ひなたからの【おすそわけ】を待ってる。



 ひなひな @全員 〉今日も頑張ります! おすそわけ、楽しみにしててください♪



 メッセージを入力して、ひなたは口元がニマニマしていることに気づく。

 嬉しい。とっても嬉しい。みんなから期待されるって、こんなに楽しいことなんだ。


「ふふ~ん……♪」


 気持ちが舞い上がっちゃって、ひなたはご機嫌の鼻歌を奏でる。

 ひなたにできることはこれくらい。でも、それでひなたもみんなも幸せになれる。


 きっとこの、高校一年生の夏休みは――ひなたにとって、生涯でいちばん幸せな夏だ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ